第六十三話 ような
(何だろう)
橙トマトと枝豆の味噌味のゼリーを朝食に食べ終えてテントを直し、また縞々や水玉模様の動植物たちの明るい色が発揮する中を、冴野と手を繋いで、歩いて、休んで、水粒を飲んでを繰り返す土羽梨は、違和感を覚えた。
(何だろう。何だろう?)
冴野の様子がおかしい、ような気がするのだ。
どこがおかしいかと問われても、具体的に答えようがないが。
そこはかとなく、軽い、ような。
元々飄々としていて言動は軽いのだが、もっと軽くなったような。
そう。
今は、地に足がついていない、と言うべきだろうか。
(いや、あれ?本当に浮いているような?)
土羽梨が前を歩く冴野の足元を注視すると、わずかだがずっと地面から足が離れていた。ような。
(あれ?そもそも歩いてない?滑ってる?)
足が上下左右前後ではなく、左右前後にしか動いていない、ような。
(幻の姿だから?いやでも、昨日は確かに歩いていたし、『緑の国』でも、地面につけてちゃんと蹴っていた、はず………まあ、別に、浮いていようがどうだろうがどうでもいいけど。うん。具合が悪いわけじゃないなら。それより)
動植物たちの明るい色に未だ慣れない土羽梨だが、このまま歩いて進むのはどうかと思い始めた。
棲み処を転々としている魔女の気配を探って居場所を突き止めようとしていると、 冴野は言った。
ならば広範囲を進んだ方がいい。
つまり徒歩よりも疾走した方が。
(徒歩で進もうとしているのは、木の根の事もあるだろうけど。初めて『焔の国』に私に気遣ってくれたんだよね。でも)
土羽梨は冴野を呼んで言った。
走りましょう、と。
(2023.9.9)




