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虹と戯れる砂の底魚  作者: 藤泉都理
第二章
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第六十一話 嫌い+第六十二話 銀色の扇子






 その声は、どれだけ奥底に沈めようとも、いともたやすく軽やかに浮上して。

 その声は、どれだけ粉々に破壊しようとも、いともたやすく軽やかに再生して。

 その声は、どれだけ頑丈に閉じ込めようとも、いともたやすく軽やかに開放して。




 いついつまでも、己を苦しめ続ける。


 いついつまでも、己の容姿を。


 嫌いにさせる。











(土羽梨は、もし本当の私の姿を見たら)











(2023.9.8)






 動植物たちの明るい色が眠ったままだった早暁まで、テントの外で見張りをしていた土羽梨がテントに戻った時だった。

 奇妙な光景を目にして思わず声を上げてしまった。

 冴野がうつ伏せの状態で身体を小さく丸めていたからだ。

 お腹でも痛いのかと冴野の肩にそっと手を添えて、大丈夫ですかと問いかけるも返事はなかった。


 よほど具合が悪いのか、幻の姿でも薬草は効くのか。

 土羽梨はハシビに持って行くようにと渡されて腰に携えていた薬箱を手に取ると、もう一度冴野にどこの具合が悪いのか尋ねるも、また返事はなかった。


 声が出せないほど苦しいのか。

 これは『緑の国』に一度戻った方がいいのではないか。

 即刻判断した土羽梨は冴野に緊急時用にと渡された、掌の乗る大きさで銀色の扇子をマントの裏側のポケットから取り出し広げようとした。ら。

 冴野が淀みなく上半身を起こして、しっかりと目を開けて言ったのだ。

 おはよう、と。


「………寝てたん、ですか?」

「ああ」

「そう、ですか」


 よかった。

 土羽梨が安堵していると、冴野が土羽梨の持つ銀色の扇子を見て、身体の調子が悪いのかと尋ねた。


「いいえ。あなたの寝ている格好が具合が悪そうに見えたのですが、話しかけても返事がなかったので、『緑の国』に戻った方がいいと判断して銀色の扇子を使おうとしたんです」

「あらら。それは心配をかけてしまった。すまない」

「いえ。具合が悪いわけではないんですね?」

「ああ」

「………わかりました」


 土羽梨は銀色の扇子をマントの裏側のポケットに収めると、朝食を食べて進みましょうかと言った。

 冴野はにこにこ笑顔で、ああと返したのであった。











(2023.9.8)




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