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虹と戯れる砂の底魚  作者: 藤泉都理
第一章
39/92

第四十四話 ひとあわ




「………」

「………」

「っけっけっけ」

「………」

「………」

「っけっけっけ」

「………」

「………」

「っけっけっけ」

「………」

「………」

「っけっけっけ」

「………」

「あなたは私と無言で見つめ合う事が好きなようだ」


 結婚の話をしましょうか。

 男性がそう言ってから、土羽梨と男性が無言で無味乾燥に見つめ合う中、ハシビの満腹満足の鳴き声だけがこの空間にいついつまでも占めて時間が止まったように思われたが、男性が言葉を発した事でようやく時間が動き出した、ように思えたのであった。


「もう一度言おう。結婚の話をしましょうか」

「………何故ですか?」

「あらら。もう最初の会話を忘れたか?私と新しい縁を結んで、築いて、『砂の国』への執着を断ち切ろうと思ってな。と言ったではないか。結婚をする事で私とあなたの間に新しい縁を結ぼう、と。私の夢を叶える為に」

「覚えています。ああ。そうですね。あなたはあなたの夢を諦めないと言いましたね。その為にできる事はする。はい、理解はできます。けれど、話し合うまでもありません。お断りします。あなたと結婚しません」

「そうか。そう言うと思った。だが、結婚する必要がある、と言ったらどうする?」

「何ですか?結婚しなければ『緑の国』に閉じ込めたままにすると脅しでもしますか?」

「いや。あなたの中に取り残されたままの木の根を取り除く為に結婚する必要がある。そう言おうと思った」

「………同じ事じゃないですか」

「そうだろうか?」

「そうですね」


 今迄冷静沈着でいられた土羽梨は、決して明鏡止水の境地に達したわけではない。

 ただ単純に、感情が動かなかっただけの話であった。

 だが今は。


(………ああ、やっぱり、私は)


 目の前の幻ではなくて、本当のこの人を早く見つけ出したい。

 見つけ出して。


(一泡吹かせる方法を考えないと)


 どんどごどんどご、感情が奥底で荒ぶっていたのであった。











(2023.9.2)




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