第四十五話 焔の国
『緑の国』の地下深くに存在する『焔の国』。
炎と氷が織り成すこの国に、魔女と呼ばれる女性が住んでおり、魔女は様々な問題事を解決できる、と囁かれていた。
「私では木の根を取り除けなかった。魔女なら、恐らくその方法を知っている。が。魔女が住んでいる『焔の国』に行けるのは、私の一族のみ。つまり、あなたが『焔の国』に行くには私と結婚するしかない」
「あなたが一人で『焔の国』に行ってその方法を聞いてくればいいだけの話ではないですか?」
「魔女にしか解決できない場合を考えれば、あなたを直接連れて行った方がいいだろう」
「………私から木の根を取り除ければ、離婚していいのですか?『砂の国』に帰っていいのですか?」
「どうぞ、ご自由に」
魔女の話を信じていいのか。
そもそもこの男性の話を信じていいのか。
木の根の暴走を防げなかったと詫びられたが、本当に暴走なのか。
男性の策略ではないのか。
木の根を吸収させて、自我を奪い、自由自在に操る為に時間が必要だから、『焔の国』に連れて行って、時間稼ぎをしようとしているのではないか。
(考えたら、キリがない。し。根拠なんてないけど。このいつもにこにこ笑顔が胡散臭い人にしか見えさせないけど)
土羽梨は男性に悟られないように、意識的に強く呼吸をして言葉を紡いだ。
「………私は、あなたは嘘はつかないとは、思っています。ただの直感ですけど」
「はい」
「魔女に会うには、あなたと結婚するしか、ないんですね?」
「はい」
「………あなたと結婚する為にすべき事はあるんですか?」
「名前を呼び合うのみです」
「あなたの本当の姿でですか?」
「いいえ。この姿でも可能だが、見たいですか?」
私の本当の姿。
にこにこ笑顔が、にっこにこ笑顔に変化した男性を見て、土羽梨はまた意識的に強く呼吸をして、見たいですと笑顔で言った。
「すまない。見せられない。あなたが見つけてくれたら見せられるのだが」
「そうですか。うふふ。残念」
「あらら。そんなに見たかったのか。すまない。本当に。ああ。あなたが見つけてくれたら、見せられるのに」
「うふふ、おほほ」
「ははは」
「わあ。すっごく仲良くなったね!やった!やった!」
ハシビは微笑み合う土羽梨と男性を囲むように、歓喜の舞いを披露するのであった。
(2023.9.2)




