第四十三話 折衷案
「『砂の国』を『緑の国』のように緑豊かな土地にしないでください」
男性とハシビが籠三個分の食べられる実をあっという間に平らげてのち、男性と向かい合って正座になっていた土羽梨は言った。
「『砂の国』はあのままで生活が回っています。手を引いてください」
「自分が変える前に変えられたら困る。という事か?」
何故自分の心の内を知っているのか。
土羽梨はその疑問をけれど男性にぶつけなかった。
必要ないからだ。
「はい」
「あらら。自分の欲の為に、よりよくなる世界を弾くと言うのか?」
「はい」
「執着心は強くなるばかりか。本当は捨てたいのでは?」
「いいえ」
「あらら。本当にやっかいな人だ」
男性はにこにこ笑顔のまま、けれど、と言葉を紡いだ。
「私も私の夢を諦めるつもりはない」
「はい」
「どちらも諦めないので、折衷案をこれから考えましょう。という事か?」
「はい」
「折衷案、ね。難しい話だ」
「はい」
「まあ、しかし。選択肢の一つとして受け入れ、とりあえず、木の根を『砂の国』に行かせるのは一時中断する」
「はい」
それから、と、男性は言葉を紡いだ。
「木の根があなたの中から取り外せない。何が起こるかわからず危険なので、『緑の国』から、いや、私の監視下から離れないようにしてもらう」
「………はい」
やけに素直だな。
訝しみながらも、男性は言葉を紡いだ。
結婚の話をしましょうか、と。
(2023.9.2)




