学生レポート
統一暦600年
課題 長期戦時の戦時体制について
帝国第一士官学校准尉
エルヴィン・フォン・ヴェルナー
戦術や戦略ではなく、陸軍の運用法についての意見である。
❶戦時の人員補充による問題
❷補給や兵站の効率化
❶統一戦争時に見られた委任戦術は大成功を収めていたが、離脱者が増加すると、練度不足により命令の読み違えによる混乱が予想される。よって、参謀本部の指揮能力を向上し、副官など下部士官の負担を軽減する事で、組織の拡張性をもたせて、士官訓練課程終了後に配属できるようにする必要がある。
❷分進合撃により、補給線の複雑化が補給部隊の負担となっている。よって軍隊は国内でのみ機動することが望ましく、鉄道網では以前限界があり、海上輸送力を強化する必要がある。
『どう思うかな?ザルム』
『なぜわしに?これを画期的だと思うのなら参謀本部に掛け合って抜擢しもらえばいい。それとも生徒を自慢しに来たのか?』
ザルムは疑問を抱いていた。なぜこんなものを持ってきたのかと。
『それに、これは確かに参謀本部でも問題になっている事だが、画期的とは言えないのではないかね?』
『そうなんだ。これは戦時を経験した参謀本部が発見した問題だ。だが、考えてもみろ。参謀本部は想定内であるかのように振る舞って、士官の練度をひたすらあげる事で秘密裏に解決しようとしている。この問題がなぜ未だ経験していない訓練士官がこの問題を発見できる?』
なるほど、確かに自らがそれを経験した軍人であるが故に、当たり前であると考えていたが…
『今の参謀本部に必要なのは、問題を解決する能力ではない。問題を想定して発見できる視野だ。』
熱くなる旧友を横目に、ザルムはふと一つ目の疑問に立ち返る。
『それで?なぜわしに』
旧友は口元をニヤリとして言う。
『怪物参謀を作り出すには、怪物の元に置いておくのが一番だと思ってな。何より貴様は試験部隊を招集するらしいじゃないか。』
そういえば、この旧友はどうも戦争を学問として捉えるきらいがあり、実験感覚で無理をして左遷されていたことを思い出したザルムは大きなため息をつくと、
『わかったわかった。貴様はこう言うのだな。自らが愛する生徒に戦場の洗礼を浴びせてこいと、それも人の命を預かる士官として。』
皮肉を込めて言ったはずなのだが、敬愛すべきわが旧友はこの言葉を聞いて、その憎たらしい笑みを崩すことはなかった。




