名誉ある拝命?
統一暦600年 9月
帝国北部シュレースヴィヒ
北方司令部
エルヴィンは北方司令部の一室へと足を運んでいた。
(なぜ私には辞令がなかったのか?)
そう疑問に思うのももっともである。
なぜならプロシア帝国軍では、訓練学校課程卒業とともに、配属の内示が出されてそのまま配属となる。しかし、エルヴィンには明確な辞令がなかった。
(公爵家の人間だからか?いやプロシア軍隊は実力主義だ。ではなぜだ?…)
そう思いながらエルヴィンは扉をノックした。
『招集に預かり参上しました。エルヴィン・フォン・ヴェルナー少尉です。』
『入り給え』
エルヴィンを迎えたのは、立派なカイゼル髭を伸ばした。実に威厳のある将校だった。
『君がヴェルナー少尉か。はじめまして、私はフェリクス・ザルム中将だ。あいつから話はよく聞いている。優秀だとね。』
『…光栄であります。しかし、あいつとは?』
いまいち真意が掴めずにヴェルナーは探りがちになってしまう。しかし、中将はそれを見て失念していたと思い、
『すまんな。説明が足りんかった。
あいつは貴官の出身士官学校の校長だよ。少し縁があってな。…それよりも貴官をここに呼んだのは通常とは違う配属方法となるからだ。貴官には第18連隊の中隊副隊長となってもらう。』
『副隊長ですか。しかし、少尉は通常小隊長以下のはずですがなぜなのでしょうか。』
エルヴィンは困惑気味になってしまう。
軍隊とは縦社会であり、いくらプロシアが実力主義といっても階級と役職が重んじられる。誰だって自らよりも階級と経験が少ない上官を持ちたくはないだろう。
中将は待っていましたとばかりに、
『はて?貴官は自身で提唱したではないか。この[戦時士官編成案]を。』
エルヴィンも思っていなかったのだろう、まさか自分が実験台にされるなんて。




