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綺麗な首飾り|誰かにかけられた呪いに解きかた  作者: 神代紫音
第二章 石切り場|夕方|エルが追い詰められる
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第46話 短剣

ブッケルムが体を起こし、もたれかかっていたエルは目を開けた。

どうやら、いつのまにか寝てしまっていたようだった。


まだ暗いが、頭上では美しい天の川が西に傾いていた。

立ち上がったブッケルムは横穴の外を見て、耳を前に向けている。

その様子に、エルは完全に目が覚めた。


静かに立ち上がり、神経を研ぎ澄ます。

ブッケルムが横穴の前に出ようとしたので、慌てて手綱を掴んだ。

じっと耳を澄ませる。


微かに蹄の音が聞こえる。

馬に乗った誰かが、石切り場を上がってきているのだ。


エルはゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着けようとした。

馬は一頭だけのようだ。

ゆっくりとした足取りで、上に登ってきている。途中の場所には興味がないのか、立ち止まらず、エルのいる最上層まで登ってきた。


なんで?

この場所が分かってんのか?


エルは気持ちを落ち着けようとするが、呼吸はどんどん早くなっていく。


どうする?

このままだと見つかっちまうぞ。


エルはブッケルムを見た。

期待に鼻を膨らませているのか、怯えている様子はなかった。

暴れ出したりはしなさそうだが、隠せる場所もない。

見つかったらどうする?


殺すのか?

いや、駄目だ。俺はブッケルムじゃない。

人を殺したりなんかしない。


蹄の音が止まった。

誰かが馬から降りた音。ブーツの音。

こっちに向かってくる。


胸を締め付ける恐怖で、エルの心臓は破裂しそうだった。


どうするんだ?

見つかれば、大騒ぎになる。

ただ大人しく連中に捕まる気かよ。


いや――、

ひとりぐらいなら、殺れるんじゃないか?

ここに入ってきたところを、一撃で仕留めるんだ。

この俺に出来ないはずがない。


大理石に硬い足音をたてて、ゆっくりと誰かが近づいてきた。


エルは喘ぐように息をする。

ブーツに差し込んだ短剣を掴み、鞘から抜き出す。

太陽の下で見れば、火山の溶岩のような赤銅色の刃なのだが、いまは星明かりに鈍く輝いているだけだ。


この短剣で、相手の喉を掻き切るんだ。

それなら一瞬で終わる。

綺麗な純白のドレスが血で染まるけど、それは仕方がない。


そうだった、自信を持て。

俺が人を殺すのは初めてじゃない。

この短剣で、あの人を殺したんじゃないか。

人殺しも二度目なら、今度こそは上手くやれるはず――。


エルはいつでも相手に飛び掛かれるよう、僅かに膝を曲げた。


横穴の前で足音が止まった。

すると「ふんふん」という鼻息が聞こえた。


犬?

犬がいるのかよ!


じゃあ、吠えないように一気に片をつけなきゃ――そうエルが決意すると、聞き覚えのある小さな声が聞こえた。


「エル、そこにいるんだろう?」


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