人生泣き笑い
5月7日 火曜日 12時51分
「正直に言いなさい!何でそんな事したの!?」
目の前でひたすらに問い詰めて来る女性教師
にどうやって身の潔白を証明するべきか
頭の中はそれで一杯だった
事の始まりは昼休み
GW明けの今日まで
打つのを我慢していたアタルは
久しぶりのS店に向け作戦を練っていた
しかし
昼休みに担任である宮津から
生徒指導室に呼び出され
1年の時の松セン事件を問い詰められていた
「だからさっきから言うてますやん…
あれは松谷先生に殴られて仕方無しに取った
防衛手段なんですって」
(またこの話かい…もうエエって…)
「そんな事せんでも他の先生に言うたらいいでしょう!?何でそれが出来ひんの!」
「話聞いてます?関口先生に相談した後で
そっから更に殴られたんですよ?他にどうせえ言いますの…方法あるんやったら教えて下さいよ」
(何でこの学校の教師は話が通じんのや?)
「それを相談しなさいって言うてるんやないの!大体悪い事したのは神崎君でしょ!」
「はぁ?ちょっと聞き捨てなりませんね
元はと言えば無理矢理バレー部に勧誘して来た松谷先生が悪いって河崎先生も認めてるんですよ?それを疑うんですか?」
「とにかく松谷先生に謝りなさい!」
「とにかく?とにかくってなんですか?
結論も出てないのに謝罪なんか出来ませんよ
何で自分が悪い事してないと思ってるのに
謝る必要があるんですか?ちょっと意味がわからないんで説明してもらっていいですか?」
(何かおかしいな…めっちゃ庇うやんけ…
松センに何か言われたんか?)
「大人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!さっきから屁理屈ばっかり言うて!」
「先生こそ子供を馬鹿にすんのもいい加減にした方がいいですよ
こっちは暴行傷害事件を呑み込んでるんですよ
それをいい加減にしろ?そっくりお返ししますわ」
(誓約書取るまでする奴がそんなもんで引くかいや…このババアはアホか?)
「もう知りませんよ!校長先生に相談しますからね!」
「どうぞご自由に
こっちも徹底的に戦いますわ
ホナ次は校長室で会いましょか
失礼しました」
そう言うと何やら騒いでいたが
無視して指導室を退出した
(ハァ…なんでこんな事なるんや…
多分松センが手回してしょーもない事吹き込んだんやろなぁ
俺は元々評判悪いし悪口言うてコロッと騙されよったんかな
前はそんな悪い先生ちゃうと思てたのに…
あーあ…)
そんな暗い気持ちのまま教室に戻り
授業中に春休みの宿題を終わらせた
放課後
授業の終わったアタルを
懐かしの河崎先生が呼びに来た
「神崎君…ちょっと…」
「あら河崎先生お久しぶりですね
今日は校長室まで連行しますか?」
「いやいや!とんでもない!
ちょっと職員室まで…ハァ…」
「そうですか河崎先生も大変ですねぇ…
また誓約書に1年間縛られますか
でも何もせぇへんて分かってるから安心でしょ?」
「…神崎君…頼むからもうやめよう…」
「それは宮津先生に言うて下さいよ
どうせ松谷先生にしょーもないお涙頂戴物語
でも吹き込まれたんでしょ?
ピュアですねぇ先生って」
「そこまで分かってるんやったら手加減したってくれよ……」
「まぁなるべくコトにはならん様にしますから先生も協力して下さいよ誓約書回避出来る様に」
(何かこの河崎先生が可哀想なって来たわ)
謝罪させる事は出来ない
それを河崎先生から直接聞いて
怒りが収まらない宮津
「どうしてですか河崎先生!
松谷先生は泣いてたんですよ!そこまで追い詰めて謝らないのはおかしいでしょう!」
「いやしかし…
あの時悪いのは確かに松谷先生やったし
それを本人も認めて誓約書書いた訳やから……」
「だからってあんなになるまで追い詰める必要は」
ここで追い詰めた?張本人がぶった斬る
「もういいですか話進まんのでやめて貰っても」
「何を言うてるの!元はと言えば貴方が!」
「ハァ…ホナ聞きますけど
学校は治外法権なんですか?
ここでは人殴って怪我さしても犯罪にならんのですか?
なんか勘違いしてません?
体罰?指導?躾?何ですかそれ?
ただの暴行でしょ
自分はこんな事したら罪になりますって
注意したんですよ?
ほんで今後こんな事が無いように
河崎先生主導の下で誓約書を貰ったんです
それが追い込み?泣いてた?
犯罪を犯しても泣いたら帳消しですか?
宮津先生…冗談やめて下さいよ」
「き、脅迫やないの!こんな事して!」
「ハッハッハ
今ので脅迫罪は無理ですよ
自分はこんな事したら
罪になりますよって言うただけですから
要は罪の内容を告知しただけですわ
告発を促すような事は言ってませんから
それに誓約書の内容も法律を遵守するしか
書いて無かったでしょ?
法律を遵守するのは公務員として当然でしょ何が脅迫ですか」
(松センの時は思いっきり言うたけど
既に証拠は無いからな)
「…神崎君……頼むから誓約書は…」
「まぁという事なんで帰りますけど…
まだ何かありますか?あるんやったら明日にして下さいね買い物行かなアカンので
ホナまた明日」
そう言うと号泣する宮津先生を置いて職員室を後にした
(アホか…泣いて許されるのは18までじゃ
新卒の女の子でも泣きながら一所懸命頑張って仕事してんのに…
そんなもんで許されるか舐めんなよ)
どこかの女子校で頑張っているであろう
ギャルになった枝野の姿を思い出し
フフッと笑うと少し元気になった
自転車を停め部屋に着くと
部屋の電気は点き
何やら話し声も聞こえてくる
(あら?カズヤさんデートちゃうの?
何でおんのや?………まさか!泥棒!?)
焦ったアタルはバッとドアの前から離れ
注意深く話し声に耳を澄ます
「ハァッハッハ何でやねん
あれはお前が言うたんやんけ」
間違い無くカズヤだ
(あんな楽しそうな泥棒はおらん大丈夫や)
ガチャ
っと迷い無くドアを開けた
すぐに笑い声の主から声が掛かる
どうやら電話中だったようだ
「おっ!おかえり……ちょっと待ってくれ
今アタル帰って来たから」
「あっいいですよ 続けて下さい
先着替えますから」
「いや お前待ってたんや すぐに支度せえ
電気屋行くど」
「電気屋?」
行き先も告げられぬまま
ハイエースが出発して約30分
高速まで使って連れて来られたのは
海の近くにある大きな家電量販店
「カズヤさん…ここら辺てカズヤさんの地元でしょ?何でここまで」
「いやこの辺やったら顔効くからな」
「何か買うんですか?我が家にテレビは要りませんよ」
「ちゃうわ心配すな必需品や」
「必需品?洗濯機はカズヤさんが持って来ましたやん」
「まぁエエから着いてこいや」
そう言われ着いて行くアタル
すると入ってすぐの場所でカズヤが店員に
声を掛ける
「おーい美咲」
その瞬間
アタルに軽い衝撃が走る
呼ばれて振り返った店員は
年の頃なら20代後半〜30代前半
セミロングの薄い茶髪に
太めだか濃過ぎない眉
二重の目と涙袋
プクっと小さく膨らんだ頬
スッと通った鼻筋に
少し下唇が厚めな
身長は160代前半のスリムな女性
そう
正にアタルのどストライクな女性だった
(好き!!良い!!)
慌ててカズヤに尋ねる
「か、カズヤさん誰ですか!?
知り合い!?」
「あれは俺の同級生で優希の姉ちゃんの
美咲や」
(優希さんのお姉さん……)
思わずその女性を見つめるアタル
するとこちらに気がついたのか
笑いながらこちらに手を振る女性
美咲と呼ばれたその女性を見て
久しぶりに顔が熱くなるのがわかった




