千枚のメダルも一枚から
困惑した表情のミヤマサが口を開く
「どない?言われても……何の情報交換したらエエかわからんで」
すっかり失念していたアタル
「あっそうか……そうや!マサやん明日時間ある?」
(アカンわマサやんやから知ってるつもりで話してまうな)
「えっ…そら入試も終わったし春休みやから時間はナンボでもあるけどな」
「よっしゃほんなら明日一緒にマサやんが打てそうな店探しに行こや、その時に色々教えるからこんでどない?」
(これやったら大丈夫やろ、丁度明日は休みやし)
不安だった店探しを一緒にやる
そう言われ明るい表情で答えるミヤマサ
「ほ、ホンマか!?それやったらやるわ!」
「よっしゃ交渉成立やな、ほんなら取り敢えず今は設定判別の方法だけ簡単に教えるから
それだけ覚えてや」
「おぅ!せやけどホンマにエエんか?こんなん教えてもうて…」
「勿論その理由も後で説明するって
取り敢えず今は判別覚えてや、な?」
「わかったホナ頼むわ」
「ホナそのシートは財布にしまってや
俺のやり方で説明するから」
(混同したらアカンしな)
手入れ式の判別と言われ露骨に嫌そうな顔をする
「あー…あの手入れ式とか言う奴やろ?
あれ難しいねんよな…」
「何言うてんの 慣れたら大丈夫やから
ニューパルの場合5以上の判別からいくわな
まずクレジットを落として………」
(いや昔アンタから教えてもうたんやから
大丈夫に決まってるやん、年はもっと上やったけど)
暫くして
2分程で簡単に説明を終えたアタル
ミヤマサに確認する
「ちゅう事やねんけど わかった?」
今までやり方が間違っていたらしいミヤマサ
溜息を吐きながら答える
「はぁー…俺めっちゃ勘違いしとったわ…
3枚手持ちて2枚入れ+1ベットと
次ゲームに1枚入れ+2ベットやったんか…」
更に注意点を伝える
「そうそう、ほんで後は9枚手持ちを繰り返したらエエからな…
あっそや…それから普段から左リールはチェリー狙ろて打たなアカンで!
見てたら左にBAR狙ってるやろ?
ハズシは難しいから今はやらんでエエけど
チェリー狙いは絶対やらなアカンで!」
手順は理解したようだが
まだ中身が追い付いていない様子
「あーやっぱりそうなんか……
でもそれもよぉ分からんねんよな…
あれってそんなにちゃうもんなんか?」
それを簡潔に説明する
「全然ちゃうで
それも詳しくは後で説明するけど
そやな……簡単に言うたら
丸1日打ったら千枚ぐらい損するかな?」
効果を聞き目を見開いて驚く
「千枚!?そ、それって1万以上ちゃうやんか!!」
「そやな大体そんぐらいやわ…どや?
マサやんもヤル気なったやろ?」
(俺も初めはビックリしたもんな…)
激しく頷く
「や、やる!絶対やるわ!」
「よっしゃほんなら戻って早速やろか
俺が横から見てアカンかったら言うからな」
(さぁ実践や、頑張ってやマサやん)
「おぅホナ頼むわ」
台に戻り小声で指示を出すアタル
「…よっしゃホナ一枚掛けで中リールに7の下にあるBAR狙ってや…」
いつも狙っていた場所とは違う事を言われ
疑問をぶつけるミヤマサも先程の注意が効いたのか小声で尋ねてきた
「…え?カエル下のBARちゃうんか?…」
「…それも後で説明するから…」
(まぁそっちのが見やすいもんな…
でもコンドルのハズシがムズいって言いながらも出来てたんやったら押せるやろ
目押しの練習にもなるし一石二鳥や)
そんなアタルの思惑など知らず
中リールを見続けるミヤマサ
漸く目標が定まったようで
「…わかったホナ……見にくいな…コレか!?…」
とボタンを押すと中リールには
7・オレンジ・チェリーが停止
不思議そうな顔でアタルに尋ねた
「スベった…けど何やコレ?真ん中にオレンジ止まったで?」
これ幸いと後回しにしていた説明をする事に
次に止める図柄を指示する
「…おっラッキーやん丁度エエわ、右と左にBAR狙ってや…」
言われた通りにリールを止めるミヤマサ
するとジリリリリンと見事オレンジが揃った
しかしそれでもまだミヤマサの表情は変わらない
「…オレンジ揃ったぞ、何やこれ?…」
理由を説明する
「…それがカエル狙わん理由、カエル狙ってたら偶にあるそのオレンジ取られへんねん…」
(まぁ細かいけどこれでも200円やからな)
しかしミヤマサには伝わっていない様で
「…え?そんだけ?…」
それを見てアタルが言う
「…それも後で説明するからもう一回やってや…」
(あー…しゃあないな…後で補足しよか)
「おぅホナもう一回な」
先程とは違い嬉しそうな顔になるミヤマサ
再び中リールを狙うと今度は中段に7が停止
「おっスベって7止まった!これBIGやろ!」
「…よっしゃBIGや左リールちょっと揃い難いから慎重にな…」
それを聞きBIGを消化し始める
しかしこの後に待つ設定判別に緊張しているのかBIGが終わりに近づくにつれ
段々と表情が固くなる
(ハハハそうやな
昔俺もアンタに言われて
初めて判別した時は緊張したわ
機種はちゃうけど)
そしていよいよBIG終了
アタルから指示の確認が飛ぶ
「…ほんならさっき言うた通りな、頭の中で
ゲーム数を数えながら…」
「おぅ」
緊張しながらも慎重に打ち始めるミヤマサ
隣に座るアタルも見守る中
順調に進んでいく判別の準備
そして
「…あっ…次2枚入れて1ベットで30や…これが判別ゲームなんか?…」
ミヤマサの質問に
何も言わず頷くアタル
それを見たミヤマサが緊張した顔で
レバーを叩いた
ガチャッ……
[チェリー出ろ!!]
ミヤマサの心の叫びが聞こえてくるような気がする
そしてミヤマサが……リールを止めた
「で、出たチェリーや!!こ、これでエエんやな!?こんで1の1やろ!?」
結果は中段チェリー
小声で話すという事も忘れ
興奮しながら尋ねるミヤマサに
親指と人差し指で丸を作るアタル
「…まだわからんけど幸先エエやん、続けて続けて…」
(まぁこれはしゃーないわ嬉しいやろなぁ…)
自分が初めて判別で設定6を掴んだ時の事を思い出すアタル
(あの時の1回目の判別ゲーム……
めっちゃ緊張したもんなぁ…懐かしいわぁ)
その後も順調に判別続けるミヤマサ
10回が終わると再び笑顔で尋ねて来た
「…10の5や、まだやるんか?…」
アタルは答えながら笑いそうになるのを何とか堪えた
「…多分大丈夫やと思うけどコインあるし20まではやってや…」
(ハッハッハめっちゃ笑顔やんかマサやん!
笑いそうなってもうたわ危な)
その指示に笑顔で頷くミヤマサ
小声で返事をして打ち続ける
「…わかった…」
その後
1回のBIGを挟んだが
アタルが黙っていても順調に準備をし
そのまま判別を再開するミヤマサ
(よっしゃもう大丈夫そうやな)
そしてそのまま10分程経った後
盤面に中段チェリーを出しながら
自信を持って尋ねる
「…20の13や、これ完璧やろ!…」
それに太鼓判を押すアタル
「…完璧やでマサやん、後は次当たったら
一応6判別もやったらエエわ…」
(やっぱりそれが6やったか…珍しいパターンやな覚えとこ)
それを聞いたミヤマサは最高に嬉しそうな顔で返事をした
「…おぅ!…」
21時を過ぎ
BIG8回 REG8回を引き、漸くミヤマサも箱を使い始めた
出玉はアタルから見て約1200枚程
安心した様子のミヤマサが
アタルに何気無く呟く
「…そやけどアタルお前ホンマに凄いな…
何でこんなん出来んねん…」
それに前を向き打ちながら答えるアタル
「…そら必死やから…
必死しかないで生活掛かってんねんから…」
生活…アタルの言ったその単語に引っ掛かったミヤマサ
「…生活?……いやエエ…余計な事は聞かんとくわ…」
と途中まで言い掛け引っ込めた
「…ほんなら後は閉店まで回すだけやから
頑張ってや…」
(アンタにやったら言うてもエエけど…
まぁ自然な流れに任せたらエエやろ)
「…おぅ!…」
閉店後
ちょっとバイト先に報告があると伝え
ミヤマサを置いてカズヤの車に向かうアタル
店から離れた何時ものうどん屋前に停まる
ハイエース後部座席のスライドドアを開く
ガーッ……バタン
「お疲れ様でーす」
挨拶をすると丁度札を数えていたカズヤが
返事を返しそのまま収支報告が始まる
「おう お疲れさん
今日は9千円投資の3991枚で43500や
そっちは?」
「えーと4千円投資の6304枚で78900
ですね」
(いやー今日は調子良かったわ5やのによぉ出たで)
素早く電卓を打ち計算するカズヤ
「ホナ435の789やから1224か…
そっから端数切って1220やな
今日は2人で23時間やから……5300で
アタルが丁度10時間やから53000やな」
あれから何度か話し合い
アタルが言った案とカズヤが言った案が
ミックスで採用された組み打ちは
今や端数切り捨ての時給制となっていた
端数切り捨て案がアタル
時給案がカズヤだ
(時給5300円て…よぉ考えたら中2で貰う金ちゃうな…)
そんな事を考えながら電卓を受け取り
差額を渡すアタル
「あっホナ25000渡しますわ…はいコレ」
それを受け取り札を数えながら
今日の報告を始める2人
「おっスマンの……よっしゃ確かに
今日は調子良かったの、6け?」
「いや5でしたわ隣が6でしたね」
「ホナ6は据えで5が上げか……珍しいのカドやし」
「そうですね上げやったら518番かな思てたんですけど…カドは最近珍しいですね」
するとカズヤからドキッとする様な質問が
アタルに飛ぶ
「ホンマやの……あっそや!アタル隣座った奴にヤカラされたんけ?何や言われて外行っとったやろ」
慌てて否定する
「あっ違います違います!知り合いに会ったんで、バイト中やから悪いけど静かにしてやて言うただけです」
(やっぱり見られてたか…当然やわな)
それを聞きホッとした様子のカズヤ
「何や そうか…外行っとったから喧嘩か?思て見に行こ思たらすぐ帰って来たからやめたんやけどの」
「いや今年卒業した先輩やったんですよ
見た目もゴツい人やから普通にちょっと喋るだけやったらエエんですけど…
デカい声で長いこと話したら悪目立ちするでしょ?だから一応言うとかんと……」
「相変わらず若いのに慎重なやっちゃのう…
まぁそれやったらエエわ
せやけど何かあったら言えよ?組みで打っとるんやからの」
「はい遠征の時も山村さんに言われましたし
同業ぽいの来たら知らせますわ」
(知らせた時にその人が逃げへんかが心配やわ)
「よっしゃ…ホナ」
ピリリリリ…ピリリリリ…ピリリリリ
そろそろ解散か
と…その寸前でカズヤのPHSが鳴った
着信画面を見て通話を押しながら
手を合わせ謝る素ぶりをするカズヤ
そのまま電話をし始めた
「スマン優希や……もしもし…おぅ…おぅ」
3分後
電話を切りこれからの予定を確認
「わかったホナ着いたら電話するから……
アタル俺今から女のとこ行くけど…お前どうする?一緒にメシでも食いに行くけ?」
それを聞いて邪魔をしては申し訳無いと断る
「いや、それやったらさっきの先輩と話あるんでそっちでメシ行きますわ
明日の話もあるし」
(いやそんな2人でおるとこ行きづらいやん)
疑問に思ったカズヤが尋ねた
「明日?明日は休みやで?」
今日思い付いた事を詳細を説明
「あっそうや一応カズヤさんにも言うとかんと実は………」
暫くして
説明を聞き終わり感心しながらも
呆れたような声で話す
「ほぉーなるほど…アタル……
お前恐ろしい事考えるのぅ……
洋次の言う通りやサラブレッドやの」
サラブレッド…その呼び名が定着するのは
避けたいアタルは何とか話題を変える事に
「だからそれやめて下さいって……
あっそうや!カズヤさん今から優希さんとこ
行くんですよね?」
(アカン…そんなアダ名は認めません!!
こうなったら思いっきり話変えたる!!)
急に思い出した様に話すアタルに何事かと
聞き返す
「せやで何か用事け?」
「カズヤさん……まだ結婚する気無いんやったらちゃんと避妊はせなあきませんよ!!」
(大事な事やから丁度エエやろ
今は年下やけど人生経験は上やからな)
まさかの単語が飛び出し声が大きくなる
「あ、アホけ!!?わかっとるわ!!」
しかしアタルの追求は終わらない
「ホンマですかぁ?…一回もありませんか?」
(いや…絶対何回かあるやろ…)
そう言われ自白する容疑者
「い、いや……そら…まぁ……なぁ?」
それを聞き疑惑が確信へ
更に徹底的に攻める
「あきません!!責任取る気あるにしても
優希さんのご両親は納得しませんよ!!
揉めます!!間違いなく揉めますよ!!
向こうのお父さんは怒り…お母さんは泣くでしょう…それでもいいんですか!?」
容疑者に罪の意識を植え付ける
「うっ……そら…い、嫌やけど…」
そこで漸く予防を促した
「そうでしょ?5歳も年下の彼女を泣かせた無いでしょ?じゃあちゃんと避妊」
とここで流石にカズヤが限界に
「もうわかったから!!避妊避妊言うな!
……お前はホンマに……ビックリするわ…
中坊てそういうの恥ずい年ちゃうんけ?……
ホンマに…お前は近所のオバハンけ…」
しつこいアタル
「そうですか まぁわかってくれたら良いんですけど…ちゃんと同棲して生活リズムが」
遂に退去命令まで飛び出した
「わかったから!!もう早よ行け!メシ行くんやろ?先輩待たせてんねやから行け行け」
「あっそうでしたね…ホナまた明日の夜にでも報告しますわ、お疲れさんでした」
「…おぅお疲れさん」
そんなすっかり参った様子のカズヤを尻目に
アタルはミヤマサの待つN店駐車場前へと戻った
原付のシートに座りタバコを吸うミヤマサ
その前に自転車で行き声を掛ける
「あっマサやんお待たせ、メシでも行こや」
「おぅホナどうするコンビニでも行くか?」
「えー…コンビニ高いやん…」
(この時代のコンビニ弁当不味いねん…
一回食ったけど…)
「いやそやけど…
この時間まで開いてる店なんかこの辺無いぞ
焼肉屋か居酒屋ぐらいしか…そんなとこよりはコンビニの方が安いやんけ」
「大丈夫、俺に付いて来てや案内するわ
焼き飯でエエやろ?」
「おぅエエで!せやけどこの辺でこの時間まで開いてる中華屋なんかあったか?」
その時ふとミヤマサの原付が気になった
前カゴ付きの黒いJOG
どう見ても若者のしかもヤンキーが乗る原付には見えない…しかもミヤマサは15歳
「大丈夫やってホナ行こや
ていうかマサやん何で原付なん…
アンタまだ免許無いやろ…パクったんか?」
(アカンでマサやん…パクったら…)
「ちゃうわ!
パクりモンなんかナンプレ付きで堂々乗れるかい!ちゃんと鍵付いてるやろ!
バァちゃん家の原付借りただけや
最近乗ってへんみたいやし別にエエやろ
免許は……16なったら取るから大丈夫や
今はあれや……仮免や仮免!ハッハッハ」
ミヤマサの強引過ぎる謎理論に圧倒されながらも案内する
「か、仮免て……車ちゃうねんから…
まぁエエわ、えーと…うどん屋の角左曲がって踏み切り渡ってから真っ直ぐ行ったとこにある床屋わかる?」
するとどうやら場所がわかったようだ
「え?…えーと……あー…あのスーパー過ぎ
て右手にある床屋か?青い屋根の」
「そうそう そこで待っといてや後からチャリで行くから」
「よっしゃわかった、チャリ押したろか?」
「いやエエわ、大丈夫すぐ行くから言うとくけど毎日漕いでるから速いで?」
(そんな危ない事オッサンは出来まへん)
「ハッハッハわかった、ホナ待っとくわ」
そう言うとミヤマサの原付は元気に走り去って行く
(い、一応メットは被るんや…よぉわからん
ヤンキーやなマサやん…)
必死でペダルを漕ぎ
何とか12分程で床屋に到着したアタル
「お、お…お待たせ…ハァ…ハァ」
「おっホンマに速いな」
先導して案内を始める
「ホナ…原付押して付いて来てや
こっちやから……あーしんど…」
言われるままに付いて来るミヤマサ
当然疑問が湧く
「どこ行くねん…こっちはアパートやぞ?」
しかしそれを無視して暫く歩くと
すぐ目的地に到着
「はい到着、ドアの横に原付停めてや」
「到着って…ひょっとしてここアタルの家か?」
着いたのはアタルのアパート
ドアの横に自転車を停め
部屋の鍵を開けながら答えた
「んー?家っていうか…部屋やな
ここでさっきのバイト先の人と住んでんねん
あっ今日は帰ってけえへんから大丈夫やで」
バイト先の人と住んでいる
その衝撃的な事実に変な声を出す
「はぁ!?ど、どういうこっちゃ…」
しかしアタルはそれを気にも留めず
不気味に笑った
「まぁエエから入ってや
そんな事より気になる事あるやろ?
色々と…ヘッヘッヘ」
「そらあるけど…な、何やねんその笑い方」
「まぁ楽しみにしといてや…
もう普通にスロット打たれへんかもしれんで?
千里の道も一歩から…
千枚のメダルも一枚からや…ヘッヘッヘ」
本日の収支
総投資4000円
回収82900円プラス78900円
????回転 BIG36回 REG19回 6304枚
判別結果 設定5
組み打ち計算後
トータルプラス53000円
ミヤマサ収支
投資1000円
回収15500円トータルプラス14500円
????回転 BIG11回 REG10回 1179枚
判別結果 設定6
フィクションです
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