網を張れ
あれからすぐにアタルはBIGが当たり
その消化を隣で見ていたミヤマサが
ビックリしたような呆れたような声でアタルに言った
「うわっ…お前ホンマに中2か?……
1コマ押しのリプレイハズシしてるやん……それめっちゃムズイのに…ちょっと引くわ」
その言葉を聞き小声で注意するアタル
「…ちょっと!さっきも言いましたけど…
バイト中なんやから…中2とか言うのヤメてやミヤマサさん…バレたら終わりなんやから…」
(やっぱりこの頃はまだ若いなぁマサやんも…)
そう言うとハッとした顔になり
すぐに謝る
「あっスマン…ついな…」
(一応言うといた方がエエか…カズヤさんとマサやんが万が一接触せんとも限らんしな)
そう思ったアタルはミヤマサにカズヤの存在を知らせる事に
「あそこにスーパーモグモグ打ってる人おるでしょ?あのデカい人」
そうアタルが視線を送ると慌てたように
ミヤマサが注意を促した
「…アホか見るな!あの人はたぶんホンマに怖い人や!お前はまだ中2やから」
「あの人が雇い主です」
その言葉に呆然となるミヤマサ
「は?…」
「だからあの人が自分のバイト先です」
(ハハハ…そらそうなるわな)
「…う、嘘やろ!?あの人の……ど、どうやって知り合ってん……怖すぎるやろ……」
「知り合いの知り合いです…本人に許可とって無いから詳しくは言えませんけど…」
するとアタルの言葉を遮るミヤマサ
「要らん要らん!ヤメろ!絶対俺の事チクんなよ!……レスラーやんけ…耳潰れてるし…絶対柔道かレスリングやろ…怖っ…」
「わかりました…まぁそういう事なんで
大人しめでお願いします」
(へぇーやっぱりわかるんや流石マサやん)
「…やめろ…もうわかったから…この店がそんな修羅場とは知らんかったわ……アカン…ごっつ帰りたい…」
しかしその願いは虚しくも崩れ去る
アタルがそれを告げた
「残念でしたねミヤマサさん…リーチ目出てますよ帰れませんわ」
「えっ!?…これが当たりなんか?」
ミヤマサの台に
左リール下段BARからの中段フルーツ目が出ている
「はい 中段一直線でベルとオレンジ並んで
他に何も揃って無いでしょ?当たりです」
(マサやんも昔は知らんかったんやな…)
すると感心したように出目を見るミヤマサ
「へぇー…お前やっぱ詳しいな…俺モーニング以外であんまりスロット打たんからリーチ目殆ど知らんわ」
「まぁ言うても何個かの法則知ってるだけですけどね」
「何やそうなんか、この台1000個ぐらいリーチ目あるんやろ?全部覚えてんのか思たわ
そんなんで大丈夫なんか?」
「…それ前にも誰かに言われた様な……
いやそんなん無理ですから…
それに毎回おんなじとこ狙ってたら大体おんなじリーチ目しか出ませんから大丈夫ですよ」
「そうか…やっぱり本に書いてあったんはホンマなんやな…」
「あっ…ひょっとしてそれ見て打ちに来たんですか?」
するとポツポツと事情を語り始めた
「おぅ…ホンマはクランキーコンドル打ちたかったんやけどな…
この辺の店置いてへんやろ?
せやから昨日は朝から星中の近くのU店行ってんけど……全然アカンわ
台は何とか取れたけど客一杯でな
誰もやめへんし皆上手いしリプレイハズシはムズいしで散々やったわ…結局9千円負けや
ほんで本の後ろに書いてたニューパルサーの記事見てこれやったらいける!思てこの店来てみたんや
S店は右から押したら店員に言われるて聞いてるからな……
ほんならまさか…お前がおるとは…
しかも難しいって書いとったニューパルサーのリプレイハズシまでやってるし…ビビったで」
懐かしいU店の話題にそれとなく触れる
「あーなるほど…U店やったらもうかなり前からあの状態ですよ1月末にはあんな感じやったかな?ちょっと遅かったですね」
(なるほど なるほど そんで来たんか
春休みにコンドルで稼ご思たんやな)
それを聞いたミヤマサが
財布からある物を取り出しアタルに見せる
「……お前…そんな事まで……あっ!ほんならひょっとしてこれもやってんのか!?」
「…ちょっと…静かにして下さいって…」
(ちょっとマサやん…頼むわ…)
するとまた申し訳なさそうな顔になりながら
それを渡すミヤマサ
「あっ…スマン…これやこれ…」
渡されたのは
2つの数字が横並びに羅列する一枚の紙
5ゲームで6枚 10ゲームで12枚等と書かれ
その後もつらつらと数字が並んでいる
所謂[設定判別シート]と言われるものだ
それを見て懐かしさを感じながらも平然と答えるアタル
「何ですの?……あぁ…はいはい、やってますよ やり方はちょっと違いますけどね」
(うわ懐かし!こんなんあったなぁー…)
アタルの答えを聞き、また声が大きくなる
「ちゃうやり方?…それって…ひょっとしてあの何枚持って手入れが何ちゃらとか言うやつか!?」
呆れた顔でミヤマサに告げた
「…わかりました…ちょっと外出ましょう
付いて来て下さい…」
(アカン…なんぼマサやんでも…限界や…)
三度謝るミヤマサ
「あっ!…す、スマン…」
店の駐輪場脇にある植え込みの縁石に座り
アタルが話し出す
「あのねぇミヤマサさん…エエ加減にして下さいよ…バイト中や言うてるでしょ?
あの人に怒られんのは自分なんですから
勘弁して下さいよ」
するとそれを聞いたミヤマサが頭を下げ
アタルに謝り出した
「スマン!……これまで誰に聞いてもわからんかったもんやから…アツなってデカい声出してもうた…」
「そうですか…
まぁそら気持ちはわかりますけど…
店の中でそういう攻略の事言わん方がいいですよ?
他の人に聞かれたら余計なトラブルの元ですから…もし店の人間でも聞かれたら間違いなく揉めますよ」
それを聞き驚くミヤマサ
「何やコレやったらアカンのか!?」
「いや別に違法とかちゃいますよ…
でも設定が見抜けるんですよ?
店からしたらエエ訳無いですやん
だからその紙使うんやったらタバコに挟んで
隠しながら使って下さい
ほんでスンマセンけど店員に見つかっても
自分からは何も出来ひんのでそれは覚悟して使って下さいね」
「そうか…やっぱりそんな上手い話は無いっちゅう事か……あーあ折角単車買お思てたのに…やっぱりバイト続けるか…」
そう話すミヤマサにアタルは疑問をぶつけた
「何でそのシート式で判別しよ思たんですか?手入れの奴も知ってるんでしょ?さっき言うてたし…
紙持たんでエエから覚えたらそっちの方が楽ですよ」
(俺に教えてくれた時は[これ覚えろ!]言うて
手入れ式の判別書いた小ちゃい紙くれたから
そっち派や思てたのに)
理由を話すミヤマサ
「あぁ…それは他の店で試した事あるんやけど……何ちゅうか…どうもやり方がわからんかったんや…ほんで1回も成功せぇへんし…
ほんでちょっとやり方変えてみよか思てな」
それを聞き納得したアタル
(ははぁ…なるほどな…
せやけど昔会った時には俺に教えるぐらい出来てたから…
きっとこっから自分なりに色々試したんやろな……
昔から好きな事だけはムキになってやるんやから…マサやんは変わらんな……
よっしゃほんならちょっとだけ手解きしよか
かつての弟子から師匠に教えますわ)
そんな想いからミヤマサに話し出す
「ふーん…まぁ大体わかりましたわ
多分3つぐらい原因がありますね
それがわからん限りシート式やっても一緒やと思いますよ」
アタルの言葉を聞き
何とかしようとするミヤマサ
アタルの肩を掴み揺さぶりながら頼む
「な、何や!?教えてくれや頼むわ!」
かつての恩人に頼まれそれに応えるアタル
「わ、わかりましたから!離して下さい!
こ、こっちからの条件何個か飲んでくれるんやったら教えますわそんでもいいですか?」
(ホンマに…アンタは力強いんやから…何も変わらんな……でもこう言うとかんと逆に怪しいからな)
パッと手を離し
訝しんだ目で此方を伺うミヤマサ
「おっスマン!……ほんで条件て何や?
よっぽど無茶や無い限り聞くけど……
…ハッパとか…Dビン売りとかは無理やで?」
それを聞き思わず声が大きくなるアタル
敬語も忘れ否定する
「あ、アホか!!?そんな事頼むかい!!
そんなヤバい人間ちゃうわ!!」
(何で人を売人みたいに言うねん!!アホちゃうか!?)
先程まで冷静だったアタルの急変に驚き
条件を聞くミヤマサ
「そ、そうかスマン…悪かったな…
ほんなら条件て何や?」
まだ言い足りない…
そんな気持ちをグッと堪え
条件を提示する
「ホンマにビックリするわ…
そんな無茶言いませんよ本にも載ってるし
条件は3つです
1つは今日教えた事は簡単に他の人には教えへん事
理由はこの辺でライバル増えたら困るんで
なるべく出来る人を増やしたく無いんです」
頷くミヤマサ、しかし疑問が残る
「なるほど…ほんなら何で俺はエエねん?」
「まぁ最後まで聞いて下さいよ
2つ目は今日はエエけどこのN店では基本的にやらんとって下さい
悪いけど人増えて設定入らんようなったら困るんでこっちも生活掛かってますから」
(既に2人…いや俺は中途半端やから1.5人かな
入ってる店にこれ以上増えたらU店の二の舞
やからなスマンけど)
それを聞いて落ち込むミヤマサ
「えぇ!?……まぁそうか…わかった…
ほんなら別の店探すわ……ハァ…上手い話は無いな…」
それを見て続きを聞くように言うアタル
「だから…最後まで聞いて下さいって…
3つ目最後でこれが一番肝心です
これはミヤマサさんにもエ」
と…話の途中でミヤマサが待ったを掛けた
「ちょっと待ってくれや…悪いねんけど」
残念ながら流石に無理だったか
そう思いながら聞く
「はい?やめときますか?」
しかし
「ちゃうわ!そんなんやのうて……
その[ミヤマサさん]言うのやめてくれ
ミヤマサ言うのは大体は他所から来た奴か
喧嘩してる奴だけやねん
お前は俺と一緒の中学で地元の後輩やんけ
マサとかマサヨシとかそういうので頼むわ
あとそんな敬語で喋らんでエエから」
予想とは違う答え
しかし以前と同じ答えだと思い出した
「あー…ほんなら自分もお前言うのやめて
アタルて呼んで下さいよ
それやったらマサやんて呼びますわ」
(ハッハッハそう言うたら昔もそんなん言うとったな忘れとったわ)
笑いながらそれを了承するミヤマサ
「ハッハッハそうかわかったアタルやな
マサやんか!寿司屋の大将みたいでエエな!
よっしゃわかったホナ頼むわなアタル!」
全く同じ答え
二十数年前と全く同じ答えに
懐かしさが溢れ何故だか涙が出て来てしまう
それを誤魔化すアタル
「わかったわマサやん…ハッハッハ
アカンおもろいわ涙出てきた」
(一緒や…初めて言われた時と全く一緒やわ
何か知らんけど涙出てきた……クソッ…)
不思議そうな顔をして先を促すミヤマサ
「そうか?そんなオモロかったかな…
まぁエエわ…続けてくれやアタル」
「あ、あぁ…えーと、そや最後の条件やった
最後はマサやんにもエエ話やねんで
マサやんはナンコーやろ?南高」
(まぁ知ってんねんけど)
「おぅよぉ知っとるな
言うてもこの辺やったらナンコーぐらいしか
俺らみたいなんが行けるとこ無いしわかるか今年は定員割れやったら誰でも受かった思うでハッハッハ」
(あっ…定員割れやったんか…そら知らんかった…)
「そ、そうなんや…
ほんでなナンコー言うたら5つ先の駅やろ?
だからな…
その駅周辺のパチンコ屋の情報を定期的に
交換して欲しいんや
どない?」




