第5話 豊受大御神のおわす家 ヒント編
全寮制、中高一貫の男子校。
夏休みが終わり静かだった寮に人が戻ってきた。
高校一年生、島根琥太郎(しまねこ太郎)ことオレが、およそ一か月ぶりに寮の自室に入ると、同室のクラスメイト、斑目冬馬は机に向かっていた。白いカーテンが西陽で淡く輝いている。
「おかえり」
斑目は言った。
「ただいま」
オレは荷物を下ろした。
片付けながら、斑目に話しかける。
「大会どうだったの?」
斑目は陸上部だ。
夏休みの前に大会に向けて猛特訓していた。
「予選敗退」
斑目はこちらに体を向き直していた。
「可愛げあるじゃん」
「かろうじてね」
オレが荷物を片付け終わると、斑目が立ち上がった。
「お土産買ってきた」
「マジで?オレも」
斑目の地元のキャラクターが描かれたクッキーをもらった。
オレも包装こそ違うが、似たようなクッキーを渡した。
製造工場は同じだった。
◇
八月の終わりはすぐにきた。
オレが趣味でやっている詰将棋の盤上から玉将が消えた。
斑目が隠したのだ。
「隠したな」
ベッドで本を読む斑目に、オレは言った。
斑目は体を起こし、あぐらをかいた。
「詩みたいなんだけど、ヒント」
斑目は照れくさそうに言った。
今までも詩みたいだったじゃん。
斑目が、人差し指を立てる。
「豊受大御神のおわす家」
続いて中指を立てる。
「誘いの下に隠されて」
そして薬指。
「木立を眺めている」
斑目はまだ照れたような顔をしていた。
「以上」




