第5話 豊受大御神のおわす家 発見編
寮で同室の斑目に隠された、オレの玉将へのヒントは三つ。
『豊受大御神のおわす家』
『誘いの下に隠されて』
『木立を眺めている』
斑目の言うように、ヒントは詩のようだった。
オレは考えを巡らせた。
豊受大御神は伊勢神宮の外宮に祀られている、天照大御神の食事を作る神様だ。
歴史総合の授業で習った。
神様が神様の食事を作るのが面白くて覚えていた。
「分かったぞ。食堂だな」
斑目は、肯定するように笑った。
「さすが勉強してるな」
斑目はオレより勉強ができる。
余計なことを言うな。
◇
次の日の昼休み、オレは食堂に来ていた。
食堂は校舎や他の施設から独立した建物になっている。
食堂は入り口を入って右手一面が窓になっており、とても明るい。
窓の外には校舎が見える。
窓には何枚か、部活の勧誘ポスターが貼られていた。
オレはすぐにピンときた。
『誘いの下に隠されて』の誘いは部活の勧誘ポスターだろう。
『木立を眺めている』だから、木の前に貼られているポスターを探せばいいはずだ。
オレは窓を眺めながら食堂の中を歩いた。
おかしい、ないぞ?
太い柱を過ぎた。
すると目の前に二枚窓が現れた。
窓の向こうは雑木林になっていた。
木立だ。
窓の右側の真ん中に斑目が所属する陸上部の勧誘ポスターが貼ってあった。
何やら耳のとんがった動物っぽい絵が描いてある。
うさぎ、にしては顔が凶悪。
このポスターだけ、スポンジで足が作られ窓から浮くように工夫して貼られていた。
オレはポスターをそっと剥がす。
オレの玉将が、窓に外向きにテープで留められていた。
「見つかった?」
「ぎゃっ」
急に背後から話しかけられてオレは思わず変な声が出た。
斑目だった。
「びっくりさせるな」
斑目は軽く笑って、オレが剥がしたポスターを貼り直した。
「これ、オレが作ったんだ」
「へえ」
相変わらず怪しい画力だ。
雑用を押し付けられているのだろうか。
夏休み前に会った、意地の悪い陸上部の先輩を思い出した。
「三年のマネージャーが引退しちゃって」
ポスターには変な生き物の下に「マネージャーも募集中」と小さく書かれていた。
「へえ」
「島根は興味ない?」
オレは苦笑いした。
「勉強ができなくなりそうだから」
断ると、斑目は分かりやすくガッカリした。
「昼メシ食べた?」
斑目と出口に向かいながらオレは言った。
「まだ」
と斑目。
「一緒に食べていこうぜ」
「いいな」
オレたちは券売機に方向を変えた。




