第3話 鍵の掛かった暗い部屋 ヒント編
全寮制、中高一貫の男子校。
暑い空気が湿り気を帯びる頃、オレたちは夏服に着替えていた。
クーラーが解禁された将棋部部室で島根琥太郎ことオレは、歴史のノートをまとめていた。
大きな机の対角では、高校二年の真嶋先輩とその一つ下、同級生の上池が対戦している。
それを観戦していた同級生の沼津がやってきた。
「勉強いいな」
沼津もノートを開いた。
◇
時計を見ると、そろそろ図書館が閉まる時間になっていた。
オレは伸びをした。
「オレはこの辺で帰ります」
いつの間にか勉強会になっていた部室を抜けた。
図書館に寄る。
壁と窓の境目にある学習机の天板の裏を探る。
すぐにぶら下がった紙に触れた。
手に取る。
オレの書いた数式の下に、整った文字で丁寧な解説のついた解法が書かれていた。
マジでわかりやすいな。
同室の斑目冬馬が教えてくれたこの伝統に、オレは助けられていた。
◇
六月の終わり、自室のオレの机の上に広げてある詰将棋の盤上から玉将が消えた。
斑目の仕業だ。
「玉将どこ?」
部活帰りの斑目にオレは聞いた。
斑目はにっと笑った。
その笑顔は、すっと消えた。
「ヒント」
斑目は人差し指を立てた。
「鍵の掛かった暗い部屋」
続いて中指を立てる。
「合言葉は皆殺し」
薬指も立てる。
「映し出す目玉の足元」
斑目は口角を上げた。
「以上」




