第12話 それは木の葉 ヒント編
全寮制の中高一貫男子校。
将棋部所属の島根琥太郎ことオレは、将棋部部室でミステリー小説を読んでいた。
「木の葉を隠すなら森ってこれか」
オレは思わず唸った。
「犯人は本当に悪いやつだな……」
オレが一人ごちていると、部室の引き戸がガラリと開いた。
「島根、早いね」
「真嶋先輩は遅かったですね」
真嶋先輩はメガネを人差し指で上げた。
「斑目くんと話してたんだ。将棋部に入部届け出したって」
「斑目が? あいつ忙しいはずですよ」
「知ってる。陸上部でしょう?」
幽霊部員になるつもりだろうか。
「なんか、文化祭で将棋やって楽しかったとか言ってた。まあ、部員も足りないし、ありがたいよ」
「五人必要ですもんね」
「同好会に格下げは避けたいからね」
オレはまた、小説に目を落とした。
「対局しようよ」
「沼津がもうすぐ来るんじゃないですか?」
「……本当に君は詰将棋だけなんだね」
「だって真嶋先輩には勝てないですし」
「実戦してこそ強くなるんだよ」
オレはため息をついて、真嶋先輩が用意した将棋盤の前に座った。
「よろしくお願いします」
互いに頭を下げる。
ぱちり。
オレは歩を進めた。
陣形を固めたころ、再び将棋部の引き戸が開いた。
「お疲れサマリーって、島根、真嶋先輩と打ってるの? 珍しい」
オレは入ってきた沼津に目をやる。
「島根強いよ」
真嶋先輩は盤上から視線を動かさない。
「休憩しましょう」
オレは頭がクタクタだった。
「また明日しよっか」
「じゃあ先輩、オレと一局しましょう」
沼津、すごいな。
◇
高校一年生が終わろうとしている。
風呂から帰ってくると、オレの詰将棋の盤上から玉将が消えていた。
斑目の仕業だ。
斑目と同室なのも後少し。この遊びも終わりだろうか。
斑目も風呂から帰ってきた。
「ヒントは?」
斑目は微笑んだ。
人差し指を立てる。
「それは木の葉」
続いて中指。
「そこは森」
そして薬指。
「不自然の中にある」
斑目は笑みを深くした。
「以上」
◇
オレは考えを巡らせた。
森、木の葉、不自然……
「……ちょっと詩的すぎない?」
「……まじ? 分かんない?」
「うん……」
斑目の眉根に皺が寄った。
腕組みもする。
「じゃあ、もう三つ」
斑目は腕組みしたまま続けた。
「そこは将を討ち取る戦場」
あごを撫でる。
「二人の将は」
首を傾げる。
「後手が本物」
破顔した。
「どう?」




