第11話 斑目のポケット ヒント編
パンッ
狭い部屋に、乾いた音が響いた。
窓の外は黒い。
目が見開かれた。胸を押さえてゆっくりと崩れ落ちる。
見届けた男は構えていた銃を下ろした。
這いつくばる、すがるような眼が閉じられたのを見届けて、踵を返し、部屋を後にする。
静寂が戻った扉の向こうで、胸ポケットからドッグタグを取り出し、安堵の笑みを浮かべる者がいたことを男は知らない。
◇
全寮制の中高一貫男子校。
島根琥太郎ことオレは、同室の斑目冬馬と一緒にタブレットで映画を見ていた。
夕食後の風呂の待ち時間。オレは制服のままだった。冬はワイシャツの上にセーターを着ることが許可されている。
手元の開いたノートには歪な点が何個も打たれていた。
「これ見ながらは、勉強は無理じゃない?」
画面に森の風景が流れ始めたところで斑目はオレに目をやった。
「だな」
オレが肘を張って頭に手をやると、斑目は背もたれに体を預けた。
視線が画面に戻っている。
画面にはさっき撃たれた男が映し出されていた。
撃った男が彼の近くにいることを、オレたちは知っていた。
◇
そろそろ二月が終わる。
学年末テストの最終日、オレの詰将棋の盤上から玉将が消えた。
斑目の仕業だ。
「玉将どこ?」
放課後なのに珍しく制服の斑目に、オレは聞いた。
「俺のポケット。 どこのポケットか一発で当てて」
斑目は両手を広げながら言った。
「ヒント」
左手を腰に当てて、右手を突き出し人差し指を立てる。
「島根から隠れて」
中指が足される。
「命を」
そして薬指。
「守っている」
斑目の口角が上がった。
「以上」




