第9話 指揮者の集合 発見編
隠されたオレの玉将に繋がる、斑目からのヒントは二つ。
『指揮者の集合』
『動く頂点CP』
「二つ?」
「そう」
いつもヒントは三つ出る。
「もう一個ないの?」
「ない」
斑目はなぜか自信満々の様子だ。
オレは考えを巡らせた。
二つめのヒントが動く点Pを文字ったものであるから、『指揮者の集合』の『集合』は数学的な意味合いだろう。
指揮者の集団?
指揮者がいるのは吹奏楽部や合唱部だけれど、どちらも、言うなればプレイヤーの集まりだ。
「ぜんぜん分からん」
「沼津君に会えば分かるかもよ」
なんで沼津?
ていうか、この遊びを人に言っていいのか?
◇
次の日オレは朝から沼津を探した。HR前には会えなかった。
沼津は登校が遅かった。
一限後の休み時間、席を立つと斑目に話しかけられた。
「島根、さっきの授業のことなんだけどさ」
「何?」
オレは話を聞いた。
チャイムが鳴った。
行間休み。
「島根、購買行かない?」
三限後。
「島根、移動教室一緒に行こう」
昼休み。
「島根、一緒に学食でたべようよ」
五限後。
「島根、今日は部活でさ…」
結局沼津とは帰りのHRになっても会えなかった。
斑目は明らかにオレが沼津に会いにいくのを邪魔していた。
どういうことだ?
「オレ、部活行くけど」
「俺も部活」
放課後は邪魔されなかった。
さすがに、そうか。
斑目は部活が忙しい。
◇
将棋部部室の扉を開けると、沼津と真嶋先輩が対局をしていた。
真嶋先輩の指し手はどの駒もよく動く。
オレは二人の対局を観戦した。
結果は真嶋先輩の勝利だった。
感想戦まで終えたところで、真嶋先輩がオレの方を向いた。
「たぶん、斑目君から、預かってるものがある」
「斑目からですか?」
「今出す」
箱を渡された。
箱の中には玉将が入っていた。
オレはあっとなった。
ヒントが繋がった。
『指揮者』とは、駒を動かす棋士のことだ。その集合だから将棋部。
そして『動く頂点CP』はその頂点にいる部長のことというわけだ。
「なんか、クラブプレジデントって呼ばれたんだけど」
真嶋先輩が笑っている。
「部長の英訳ですね。斑目くん、そういうこと言うんだ。
ていうか、なんで玉将入ってるの?」
やりとりを見守っていた沼津も笑う。
オレは深いため息が出た。
◇
夕方、部活から寮の自室に戻ってきた斑目に玉将を見せた。
「場所じゃないとか、本気で分からなかった」
斑目はニヤッとした。
「あと、お土産があるんだ」
渡されたのは、お守りだった。
「芸事のお守り」
「へえ、ありがとう。なんかもらってばっかりだな」
「もっと頑張れ」
斑目が目を細めた。
「はあ?」
若干イラつく。
斑目が笑い出した。




