第8話 渦巻く機械 ヒント編
全寮制の中高一貫男子校。
島根琥太郎ことオレは、中間考査の結果に頭を抱えていた。
怒涛のイベントラッシュで全体的に結果が悪かったと、どの教科の先生も言っていたが、オレは全ての教科で少しずつ点数を下げていた。
「斑目、中間どうだった?」
斑目冬馬は同室のクラスメイトである。
陸上部で頭がいい。
「前と同じくらいかな」
「点数?」
「うん。順位も変わらない」
斑目はぼやいた。
頭いいやつってそうだよね。
◇
洗濯室で同じ将棋部で同級生の沼津と鉢合わせた。
「沼津も今、洗濯?」
声をかけて、沼津の使う隣の洗濯機の前に立つ。
「お疲れサマンサ」
沼津のギャグをスルーして洗濯物を洗濯機に入れる。
「島根、洗濯物少なくない?」
「え?まあ毎日してるから」
「マメだな。オレのも入れて」
「は?」
見れば沼津のランドリーバッグには入りきらなかったであろう洗濯物が残っていた。
勝手に入れてくる。
「洗剤オレの使っていいよ」
オレがあっけに取られているうちに、沼津は洗剤も入れ、洗濯機を動かした。
「良かった。怒られなくて済むわ」
オレは壁に貼られたポスターを見やる。
『一人一台』
このポスターは沼津のためか。
「乾燥機も使う?」
「使わない」
「なんだ、残念。乾燥機も十台ほしいよな」
洗濯機は入り口の反対の壁に六台あって、その上に乾燥機が乗っている。
反対側には洗濯機のみ、四台があった。
ちなみ乾燥機は今、四台が稼働している。洗濯機は全て動いていた。
「十分でしょ」
オレは言った。
「オレいつも三台使うから。気を使うんだよ」
「何日溜めてんの」
「そんなに溜めてないよ。今回は長かっただけ」
「よく着替えがあるな」
「オカンが用意してくれた」
オカンは偉大だ。
ふと、背後に人の気配がした。
「斑目くんじゃん」
沼津が言った。
「うん」
振り向くと斑目がいた。
「今、全部使ってるよ」
沼津が洗濯機を指差す。
「そうみたいだね。また来る」
斑目は帰って行った。
「斑目くん、先輩に結構当たられてるって知ってる?」
出し抜けに、沼津が言った。
オレは夏休み前に、陸上部の部室に行った時のことを思い出した。
「深刻なの?」
「わかんない。でも当たってるのは一人みたい」
「なんで知ってんの?」
「相手の先輩がサラブレッドだから」
「どう言うこと?」
「陸上一家なんだって」
「はあ」
斑目は競走馬とイジられていた。
「斑目くん、一年なのにインターハイ行ったっしょ。
……キッツいよな」
オレは目を見張った。
斑目は有名だったのか。
沼津は言うとランドリーバッグを肩にかけた。
「終わる頃来るわ」
「おう」
◇
十一月が終わろうとしている。
オレが机の上に広げている詰将棋の盤面から玉将が消えた。
斑目の仕業だ。
部活帰りの斑目に声をかける。
「斑目、玉将は?」
斑目はまじめくさった顔をした。
「ヒント」
斑目は人差し指を立てた。
「渦巻く機械」
続いて中指。
「バディの右から四番目」
そして薬指。
「背中」
斑目は口角を上げた。
「以上」




