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あの日、スタバで消えた君を、俺は今もベンティサイズの孤独の中で待っている  作者: ルツ


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12/50

制服の探偵と、ふにゃふにゃのストロー(結)

深夜一時。

作戦を数時間後に控えた名駅近くの古い雑居ビル。

左神の個人事務所には、重苦しい沈黙が流れていた。 机の上には、藤が丘の高級マンションの図面、そして「逃し屋」として手配した偽造パスポートが並んでいる。「おじさん、これ見て」 私がカバンを放り出し、スマホの画面を突き出すと、おじさんはトレンチコートを羽織る手を止めて眉をひそめた。

「凛、早く家に帰れと言ったはずだ。ここから先は――」

「大人の時間、でしょ? いつまでも子供扱いしないで。

……これ、昼間にぶつかったあの『レナ』って女の子のスタバのアカウント。モバイルオーダーの履歴を見て」 画面に映し出されたのは、彼女が昨日注文したシールの写真だった。

『バニラビーンズ追加×5』

「これがどうした」

「昨日の夜、高架下で死んでた配達員の口に詰め込まれてたものと同じ。その前の星ヶ丘の事件のときだって、彼女のオーダーには『キャラメルソース追加×9』って履歴があったの。おじさん、これがただの偶然だと思う?」 

おじさんの身体が、微かに硬直した。 

死体の傍らに残されていた、スタバのカップ。警察はおじさんをシリアルキラーとして疑っているが、その「殺人のレシピ」を事前に指定していたのは、他ならぬ守るべき対象であるはずの「娘」だった。

「彼女はおじさんを呼んでるんじゃない。おじさんを『犯人』に仕立て上げるために、スタバのシステムを使って死体を並べてるんだよ!」 

私の叫びが、狭い事務所に虚しく響く。

 おじさんは静かにスマホから目を離し、煙草に火をつけた。

紫煙の向こう側で、その目は酷く冷めていた。「……凛、お前の言う通りかもしれないな」

「じゃあ、作戦は中止だよね?」

「いや、行くさ」 

おじさんは灰皿に煙草を押し付け、図面を鞄に仕舞い込んだ。

「あの子が怪物だろうが、何だろうが関係ない。

俺が約束したのは、玲那を――そして玲那が遺したものを、この街から安全に逃がすことだ。

たとえその果てに、俺の首に縄がかかるとしてもな」

「おじさん……!」

「ワンモアのコーヒーは、もうお終いだ。凛、お前はもう首を突っ込むな」 

おじさんは私の肩を軽く叩くと、重いコートを翻して夜の闇へと消えていった。 

机の上に残されたのは、冷めきったスタバの紙コップと、ふにゃふにゃに折れた私の紙ストローだけだった。

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