2話 美青年を看病することになりました
「おや、いらっしゃい。今日もエールかい?」
女将はいつもの口調で聞く。
だが常連客の男は、青ざめた顔で何やら慌てた様子だった。
「た、大変だ。女将さん!」
急いで宿の外へ向かうと、壁にもたれかかるように若い青年が倒れていた。二十代そこそこといったところだろうか。全体的に黄金比のバランスがよく整った顔立ち。おまけに姿形も美しく、透明感ある灰色の髪が目を惹く。青年は右肩に怪我をしており、顔色も悪くぐったりしている。
直ちに青年はベッドに運ばれた。幸い、命に別状はなく脈も安定している。いったいどこで、こんな傷を負ったのだろうとステラは不安げな顔で青年の腕に包帯を巻き、少しでも良くなるようにと彼の手をそっと手を握った。
それから、しばらくして青年は話ができるまで回復する。彼の話によれば、道中で魔物に襲われたのことらしい。見たところこの辺りの人ではないことは分かる。華やかな衣服と、深紅のマント、紋章が刻まれた剣が何よりの証拠だ。
「具合は、いかがですか?」
「ああ、問題ない」
耳触りがいい優しい声。
透明感ある灰色の髪が日差しで輝き、明るくて鮮やかな翡翠色の瞳がこちらをむく。
「君が、懸命に看病してくれたおかげだ。ありがとう」
「い、いえ。そんな‥‥」
「‥‥手を、握ってくれただろ?」
微かに手の温もりを感じた、と青年は言う。
どうやら、手を握ってたのが分かってたようだ。
「もし良ければ、名前を教えてもらってもいいだろうか?」
「ス、ステラです」
「ステラか‥‥いい名前だ」
案外、名前を褒められたのはこれが初めてかもしれない。
そんなことを考えながらステラは返事をし、同時に少しだけ胸が熱くなった。




