1話 とある少女の日常
「おはようございます、女将さん!」
チリン、チリンと宿屋のベルが鳴り、奥の厨房からエプロンをつけた女将が顔を覗かせる。
「おはよう、ステラ。今日も頼んだよ」
ここは、小さな街の一角にある宿屋。1階が酒場と食堂、2階が客室で食事やエール酒を楽しみながら疲れた体を癒す憩い場だ。ステラは宿屋に着くなり、真っ白な長袖のワンピースの上に女将とお揃いのエプロンをつけ厨房へむかう。まずは大きな籠に入った野菜を取り出し、慣れた手つきで一つずつ丁寧に皮を剥いていく。
一通りできたら今度は2階の客室掃除にとりかかる。こちらも速やかにシーツを外し、ホウキで軽くホコリを取りつつ綺麗にしていく。そして、汚れたシーツを洗濯場へ運びしっかり洗う。最後にシワを伸ばし天日干しをする。
──とまあ、ここまでが午前中の仕事なわけで。
ステラは働き者だ。
休む間もなく、次は女将の手伝い。
「女将さん、エール追加です!」
厨房から「あいよ!」と返事がきたので再び、注文聞きへ。
「クリームシチュー1つとクロワッサン1つですね。少々、お待ちください」
癖のないオレンジ髪がふわりと揺れ今日もまた、少女の忙しい一日が始まるのだった。
時間はあっという間に時間は過ぎ気づけば昼時、客足も落ち着きやっと束の間休息。女将が紅茶と焼き菓子をトレイに乗せて運んでくる。ステラは、カップを持ち息を吹きかけ紅茶をゆっくり飲んだ。ハーブのいい香りが口いっぱいに広がってとても美味しい。
「ステラ、良かったらこの焼き菓子もお食べ」
そう言って、女将はテーブルの上に焼きたてのクッキーを置く。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて──」
手を伸ばし、クッキーを手に取ろうとしたその時。
──バンッ!!
突然、宿屋のドアが激しく開きそこには常連客の男の姿があった。




