8 「座して微笑む」
スモー王国”先代国王”アマネキサス
彼は売国の手引きをしていた。国を売り渡す、その功績をもとに他多国連盟「ネメシス」での重鎮の座を得ようとしていたのだ。
しかし・・・そうはならなかった。ある若者がその策謀を阻止したのだ。それこそがスモー王国”現国王”シャドウ・ライジングその人である。
アマネキサスの血族を王座から追い払い、虐げられていた国民の意思、声をまとめ上げ、現在の”スモー王国”を建国するに至る。
人々が拝謁するタイミングのほとんどは玉座に座している時だったが、その微笑みは余すことなく国民へと届けられていった。
実績、人望、才覚、美貌。自身の持ちうる武器全てを用いて、この数年で改革を成し遂げた男。
それこそが眼上に座す国王ーーーシャドウなのである
○・・「スモー王国 王の間」・・○
「大義である。我が最強よ」
広々とした間にて、少人数での謁見・・・にもかかわらず、空の空間に空気が張り詰めていく。その一声に孕まれる重みが、ビリビリと周囲の内壁まで伝染してゆく。
芳しくない。・・・簡単に言ってしまえば「空気が悪い」・・だ。
その要因である”最強騎士”は言葉を紡ぐ
「力の一部が失われました」
複数の力があることにも驚いたが、それは些細なことだ。問題なのは揺らぐ最強の座にこそあった。
国の象徴、力の証明でもある騎士長は、今や国王にも並ぶほどの人気である。その一角が崩れるとなればそれは国そのものが傾きかねない事態にも繋がってしまうだろう。
若輩でありながら王直属の騎士隊にて席を務めるカレイドは、騎士長ミディの発言に対して憂いていた。自身にはどうすることもできない事案ではあるのだが、出来うる限りのことはしたいし、何かせずにはいられない性分であることは自覚していた。彼は真面目なのである。
「それは其方の身にのみ起こっていることではなかろう?」
耳と頭を連携させて話を聞いてはいるのだが、先程のもやを拭い去ることができず失敗に終わった。・・・・訂正。失敗に終わった原因は隣で殺気を放っている副騎士長のせいだった。騎士長が発言したあたりからずっとガルガルしている。怖い。
「・・・あの魔姫も同様である。・・・違うか?」
「おっしゃる通り・・・かの姫も同様に力を失いつつあるようです」
「ふっ・・・。化けの皮を地道に剥いでいく・・・か」
王は陽をこぼす。真を映さずに。
「改めて言い渡そう。大義である。騎士長ミディよ」
「はっ!」
忠誠心をその手に込めて、心の臓を主人へと捧げる。その行為こそが、同等の支持を持つ二人を主従たらしめるのだ。
「勤めを果たせ、我が最強。その時こそ・・・最上の褒美をくれてやる」
「仰せのままに、我が王。あなたの王道に失敗などあり得ない」
それは確認ではない・・・確信だった。
「他の騎士も同様である。スモー王国繁栄のために・・・征け」
「「「「「はっ!!」」」」」
王の言葉を最後に今宵の謁見は幕を閉じた。そうだ・・・我々は王の剣。討ち倒すも・・・朽ち果てることすらも、スモー王国のために。だが、あの二人がいれば、この国は未来永劫の栄華を得ることができるだろう。
カレイドは確信を胸に、他の騎士たちと共に王の間を後にした。頑強な両門が空間を隔絶する間際・・・その隙間から王の素顔が垣間見えた。国民が見惚れるのも納得できるようなーーー色気漂う魔性の微笑みだった。
ガチャン
○ ● ○ ● ○ ● ○
静寂が王の間を包み込む。ここに座すのは王か、それとも只人一人か。
「ふっ・・・・・くくっ」
王という皮を脱ぎ捨てた時・・・自分は何者になるのだろうか。
「・・・・・・・決まっている」
シャドウ・ライジングは知っている。自分は何者であるのかを。
歩む王道・・・その果てを。
「必ず、迎えにいくよ・・・・・我が君」
誰も知らない真の顔。それはただの人、一人の人間。一人のーーー
ーーー男の顔をしていた。




