7 「瓦解の赤」
”最強騎士”ミディは思い返していた。
ライオリティー。ラー王国北部のミラー民族が好んでいる飲み物だ。主張の強いライオスの葉を
煎じ、甘みの深いチューレコの蜜を数的垂らすことで、甘辛い味わいに仕上げている。
先ほどの茶会にて振舞われたものはまさにそれだ。古い本で読んだものと味覚から得た情報とが一致していた。現在では配分が7:3。 甘み強めなものとして王国内にも親しみ飲まれている。
(思えば・・・菓子の味わいにも複雑さが伺えた)
香草、薬草・・・様々な素材を取り柄入れ、実験的な調理をしていたという記述・・・14代前のアウグスト旅調記で見たものを食していたのだろう。まるで過去を追体験しているようなお茶会だった。そして、馳せているのは食のみにあらずーーーー
あの笑顔が頭から離れない
屈託のない笑顔で笑う・・・あの眠り姫の顔を・・・
「「「「「うぉあぁぁぁぁ!!」」」」」
斬撃12、25、38、57、108ーーー尚も猛撃は止まらない
四方八方塞がり。目の前に広がる敵の群れはミディを取り囲み、退路を阻む。
「・・・・・・・」
降りかかる刃の雨を、ミディはさらさら交わしてゆく。かわし様に敵の意識を断ちながら。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドっ
これだけ敵意の密度が濃いにもかかわらず、ミディはどこか・・・上の空だった。
「・・・・・・・」
この森ーーー”眠り姫の孤城”から少し離れたこの場にて目を覚まし、数分後に接敵したわけだが・・・これはミディにとってはいつもと変わらぬ日常である。つまり現状・・・ミディの心をさすらっているのは、自身の命を奪いにくるものたちの存在ではない。その者の名前はーーー
「・・・アム・・・」
最強に生じた綻び。偶然開いた光明か、はたまた・・・神の悪戯か。
放たれた弓矢は、最強騎士の頬をかすめた。
「・・やっ、やった!やったぞ!!」
一人の兵士は達成感と共に声を張り上げる。
「毒矢が掠った!これで俺たちの勝利だ!!」
「すまない、毒は効果がないらしいんだ。自分自身で確かめようはないんだけどね」
弓兵を倒し、ミディは辺りを見回す。ーーーーよし、終わったな。
暗殺に毒を盛られた事は幾度もあるらしいのだが・・・毒味というものに鈍感で気付けないのだ。見極めの訓練も兼ねて舌を拵えていても、違いはわからない。まぁ・・・そこまで気にしてはいない。
ポタッ
唐突にーーーそれは伝落ちた。・・・雨水ではない。・・・では返り血か?・・・・否。 仕事(戦争)以外での殺しは禁じている。しかして、遠からず。
「・・・・・・・」
頬の肉間から溢れる出る赤い液体。人体に等しく通っているそれは、最強にも例外なく通っているものだ。以上なのはそこではないーーー。
「・・・・戻らない?」
”自己修復”とでもいうのだろうか。最強の肉体は、傷口を補うことはなかった。
血が溢れようともたちまちに己の体へと帰っていき、肉が蓋をして閉じてしまうのだ。
およそ、人と呼べるような人体ではない。が、それも今となっては過去の話ーーー。
バゴォォォン!!!
瞬間、ミディは飛び爆ゼる。
危機感からではない。自身の非を白日の元に晒すため。
急ぎーーー我が王へと伝えるために、騎士は空を駆ける。
「・・・・あの試練は・・」
成功していた。 達成されていた。果たされていた。
騎士は・・・・高揚していた。
思わず飛び上がってしまうほどに
・・・ともかく、最強騎士は自国”スモー”へと向かいーーーー
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「遅くなってすまない。急ぎ、王へ面会の取り次ぎを」
ーーーー高揚の1跳躍にて到達を終えていた。




