4 「試練だキャッ!」
キャキャッ!
新たな出会いは、夜更けとともに。
「初めまして、可愛らしい方!私の名前はアムよ!」
未知の生物に、”眠り姫”アムは名乗りをプレゼントする。最強騎士”ミディに対してもそうしたように、臆することなく存在を証明する。
「キャハハッ!。アム・・・覚えたっキャ!。」
愛くるしい高音を弾ませて、目の前の生物は両翼をばたつかせる。そう・・・”両の翼”をだ。
「・・・お前は何者だ?」
宙に浮かぶーーー子どもの容姿をしたその生物への疑問を、ミディはアムに変わって投げかける。そしてその言葉の示すところはーーー
「危害を及ぼす気ならば・・・滅ぼさないといけない」
敵であるか、否かーーー
「こらっ」
てしっ
「こんな可愛らしい子が、そんな物騒なことするわけないじゃないっ!」
むぎゅーっと。 アムは人形を愛玩するように、その小さな生物を抱きしめる。
額を小突かれたミディは、その光景を素直に受け入れる。そして同時に、アムに対して驚きを抱いていた。自分の時もそうであったが・・・未知のものに対する接し方も例外はなくーーー善じているのだ。
「二人の”力”を回収しに来たキャっ」
キャキャッーーと。小さな者は、本題を切り出した。
「”眠る力”と”力の力”。いらないなら、二つとも貰うキャ!」
理解のままならぬままに
「そのための試練も”7つ”用意してきたっキャよ!」
世界の段階は進んでいく
「やりましょう!すぐにでも!」
全力疾走の状況にも、アムは難なく並走していた。その語気からは、機会を絶対に掴んで離さないという気迫が感じられる。
「私は・・・夢から醒めたい!」
その真意は・・・揺らぐことなく。眼差しはミディに向けられていた。
「あなたはどうするの?ミディ」
そう問われた時ーーー心の内側から去来するものが何であるのかを、ミディはわかっていた。
「俺も・・・解放されたい」
奥底に沈んでいた思いを胸に、鎖を断ち切る決意を固める。
「ミディ!お前も覚えたキャ!」
何もわからないが・・・乗り越えて見せよう。俺はーーー最強だ。
「”赤の試練”ーーー始まりっきゃ!」
幕がーーー上がる
○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「おーーわーーりーーーっキャ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・終わり?
「1つ目の試練は成されたったキャ!。ばんざーーい!・・・キャキャッ!」
幕下りを告げる甲高い子声が・・・どうにも鼓膜へと響いてこない。
あまりにもあっけない。ーーー強大な力を手放すのに釣り合った代償なり、試練なりを用意されるものかと思っていたのだが・・・。
ミディは (期待していたわけではないのだが) 、自身の予想を大きく外れた試練の内容に対して疑念を抱く。
「見事な来舞だったっキャ!」
・・・王国の”舞踏会”に、吟遊詩人の”楽唱”を組み合わせたようなものだった。と・・・説明はさておくとしようーーー。
「きゃははははははははっ」
笑がない声が、現在進行形でミディを打ちつけていたからだ。
試練を終えたことよりも、何よりも・・・アムの笑い声が、ミディの心境を全て塗りつぶしていく。
「最高の歌唱だったわ!。ーーー音程が迷子だったけどねっ!」
きゃはははははっ キャッキャッキャッ
称賛か。はたまた笑賛なのかーーー。最強騎士に対しての冷賛ではないことは断言してもいい。
しかし・・・正直に ”言って良いこと” と ”悪いこと” が・・・世界には存在するのも事実だ
「・・・・・・・・ふっ」
それはせめてもの抵抗・・・と呼ぶには、あまりにも苦し紛れな選択。
乾いた笑いは、その場の空気を潤すこともなく・・・取り繕えないプライドと共に消えてゆく。
”第一の試練”が幕を引いたと同時に突きつけられた真実・・・。
ーーーー最強騎士は歌が下手だった




