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剣を奪われた「剣聖」、「農夫魔導士」になる~農夫の知恵で国を救う~  作者: 赤木典子


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番外編5 ウルスラの魔法の授業

王立魔導士養成学校の先生ウルスラの授業です

「今日から授業をすることになったけども。別にやりたくないやつは一生懸命やらなくていいからね。そういう奴は帰ってくれて構わないから」


 いきなり、ウルスラはそう言った。人間、やりたくない人が上手にできるわけないし無理やり教え込もうとしたって無駄だというのがウルスラの考えだった。とはいえ、いきなり帰るものはいなかった。


「なんだ、誰も帰らないのかい?なら私の言うとおりにしてもらうからね。まずは外に出てもらおう」



 ウルスラは生徒たちを引き連れて第三演習場に向かう。

「まずはここで畑をやってもらう」

「は? 何で俺たちが畑?」

「俺たちは魔法を学びに来てるんですけど」


「さっきも言ったけどいやなら帰ってくれて構わないんだよ」

「そんな」

「一本ずつ移植ゴテを配るから、それでこの土地を各自耕してもらう」

「はぁ」


「で、耕し終わった人からほうれん草の種を渡すからこれを育ててみなさい。どうやったら甘く育つのか、各自調べて」


 ウルスラはついでのように言う。

「あ、それから魔法禁止で」


「そんな」

「魔法を学びに来たんですよ」


「帰るか畑を耕すか、自分で考えな」

 いい置くとウルスラは校舎の方に戻っていってしまった。


 若い魔導士の卵たちはそこに残されてしまい、戸惑いを隠せない。


「なんで畑なんだ?」

「どうする? 続けるか?」

「こんな話聞いてないよなあ」


 若い魔導士たちは集まって話し合った。



「でもさ。これが終わればきっと魔法の授業をやってくれるんじゃないかな」

「俺はもう少しウルスラ先生について行ってみる」


 そう言い出す生徒が増えてくると、離脱する勇気もなく全員が渋々土を弄りだす。


 演習場の土は相当堅かった。今まで何年も踏み固められてきたのだ。そこを小さな移植ゴテ一つで自分の割り当てられた区画を柔らかくしなければならない。一日で終わるものでもなく、来る日も来る日もウルスラの授業の時間は畑仕事を繰り返す。




 かと思えば、

「各自、木を切って薪を五本ずつ持ってこい」

 という指令が出た。

 切ったばかりで乾かしてない薪が欲しいというのだ。



 


「乾燥させてないんだから薪としては使えないな」

「なんにするんだろう?」


 翌日登校した彼らに下されたウルスラの指示は、

「この薪を、火魔法を使って乾かしなさい。ただし焦げ目をつけてはいけない」だった。


 乾燥させていない薪を自分の火魔法で乾かすのは焦がしてもいけないので結構時間もかかるし、魔力の微調整が必要だった。





 また別の時間には、

「これから落ち葉拾いをするよ。一番数が多いやつの勝ちだ。三位以内に入った奴はご褒美があるぞ」


 生徒たちは懸命に拾ったので、落ち葉はすぐになくなった。すると

「ここからが本番だよ。集めた葉っぱはこの中に入れておいて。よし、この木にしよう。葉っぱが落ちてくるのをここでじっと待つ。で、その葉っぱを取るように」


「え?葉っぱが落ちるのを待っているんですか?」


「そうだよ。はい、競争開始」


 彼らはじっと葉が落ちるのを待って精神を研ぎ澄ます。




 ウルスラの授業を受けていないクラスでは、着々と魔法の授業が行われている。このクラスの魔導士たちは、明らかに他の魔導士たちに後れを取っていた。


「いつか魔法を使えるようになるのかな」

「俺たち落ちこぼれちゃったのかな」


 心配になる生徒たちだったが、それを聞いてもウルスラは笑っているだけだった。



 三カ月ほどそれを続けたある日だった。

 その日は別の先生の授業で、魔法玉を作ることになっていた。魔法玉は、魔導士の入り口で、最初に当たる関門だった。早い人で三週間、全員が作れるまでには時には半年ほどかかることも珍しくなかった。


「いよいよ、魔法玉を作りますよ。一年生の集大成になりますから、気長にやってみてくださいね。早い人なら年明けにできるようになりますよ」

 担当の先生が言う。


「こんな風に、魔力の出力を一定に保つことが大切です」


 生徒たちはやってみた。


「そうそう、魔力の出力を一定に保つのは皆さん上手ですね。普通なら一定に保つのが難しくて最初は魔法玉が割れちゃって長続きしないんですよ」

 先生がびっくりしている。


 生徒たちもこんな風に魔力を出力できることに驚いた。

「なんでだ?」


「この分なら年明けには皆さん作れそうですね」

 先生が驚きながらも嬉しそうに言う。





「ウルスラ先生、あの子たちとても優秀ですよ!一定の出力を保てるんです」


 先生たちの間でも、彼らの魔力について評判になっていた。

 年明けを待たず、魔法玉も作れるようになった。

 最初は魔法の授業がなかったので遅れているように見えた進度もいざ魔法の授業が始まると、進みが早い。



 先生方の間ではやはりそれは「ウルスラの授業」の効果であろうということになり、上級生も含め全員がそれを取り入れるようになった。


「そりゃね、畑を耕すことで魔力が安定するのはレイが実証済みだし、濡れた薪をかわかすのは一定の出力を長時間続けるっていう魔法の訓練だし、葉っぱが落ちてくるのをひたすら待つのは集中力の訓練だし、どんどんうまくなるに決まってるさ」


「何が奴らに必要か、考えただけさ」


 王立魔導士養成学校もウルスラのおかげで改革されそうだ。


ウルスラ先生の授業は、かつてレイを教えていた時に試した訓練の中から選んでいます。魔導士の世界も少しずつ変わり始めています。

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