第85話: 薫さま(環さん付き)とお上品ランチの後はいつもの大騒ぎ!プラエクスの夜景に誓う、我がスローライフ
今日5月5日は、私の14歳の誕生日だ。
5月7日にこのデレクトアティオに来たから、この世界に来てからあとちょっとで1年になる。
そしてなぜか私は今、薫さまにエスコートされ、環さんに付き添われながら帝国ホテルのレストランでランチをしている。
誕生日を以前聞かれたとき、うっかり「5月5日」と言ってしまったからだ。
「ドレスコードが厳しいから、このスチパンロリのままで大丈夫かな……」と心配し呟いたたけれど、環さんが耳元で教えてくれた。
「そのアーティファクトのワンピースは、どの正装よりも格が上なのよ。天上人の晩餐会だってどんな行事だってそのワンピース1着で大丈夫だからね。もしこれからそんなことがあれば自信を持って、そのワンピース1着でオーケーよ」
(そんな機会は巡ってこないけどな!)
うなれ! 元日本の家庭科の授業で勉強した洋食のマナーよ! 試験に合格するために頑張った成果を今こそ出すのだ!
「暁ちゃんは洋食を食べる所作も綺麗だね」と薫さまにお褒めにあずかり、思わずフォークとナイフを落としそうになった。
危ない危ない……。
少し慌てた私の姿を見て、環さんがまたまた必死に笑いを堪えているのを、私は見逃さないぞ(乙女心をわかってちょうだいな!)。
そして、環さんが優しく説明してくれた。
「本当はいつものメンバーを帝国ホテルにご招待しようと思ったけれど、皆さんにちょっと話したら遠慮されちゃったのよね。だからこの後に、百貨店の屋上にある特別室で、暁ちゃんの誕生日パーティーを開くことにしたのよ」
百貨店の屋上の特別室からは、屋上庭園へ直接行ける最上階の特別食堂の個室がある。そこで盛大な立食パーティーを催してくれるそうだ。
(私なんぞのために、帝国ホテルに続き、百貨店…ゴージャスのオンパレード…本当に申し訳ないですなぁ……!薫さま♡と同じ空間で同じ空気を吸えるなんて!デヘッ!ウシシシシ!!)
豪華な料理やケーキを心ゆくまで楽しんだら、そのまま続きになっている屋上庭園へ移動してみんな一緒に散策したり、写真撮影を楽しむとのこと。カメラは超高級品だから、お洒落をして屋上の噴水や花壇の前で記念写真を撮るのを、みんなすごく楽しみにしているらしい。
(……って、私の誕生日のお祝いのはずが、みんなの口実になってないか?噴水と花壇と薫さま♡グハッ!タギルぜ!映え〜♡)
まぁ、いつでもどこでもみんなで楽しく騒げるなら、きっかけなんて何でもいいんだろうね。理由が欲しいだけだよね、まったく。
――なんて冷めた物言いを心の中でしつつ、暁、14歳になりました!
でもその冷めてる後ろめたさも、今まさに目の前にいらっしゃる薫さまのご尊顔を拝見しながら、美味しいフルコースのディナー(お昼だけど!雰囲気!雰囲気さ!脳内妄想だよ!カーッ〜〜〜幸せってか♡)を味わっているうちに綺麗に吹っ飛んでいく。
だいぶ緊張しなくなったとはいえ、やっぱりまだまだ慣れない。薫さまの横に座っている見慣れた環さんの顔と交互に見ながら、一生懸命心を落ち着かせているところだ。
(麗し慣れ顔(環さん)→萌えご尊顔(神♡薫さま♡)→麗し美慣れ顔(環さん)→尊いご尊顔(グハッ♡の細マッチョ♡薫さま♡)………
あぁ〜エンドレス栄養補給‼️)
それにしても、このスチパンロリのワンピースはそんなに便利なものだったとは……チートすぎる。ありがとう、ゴスロリちゃん。
元日本では、家族はみんな残業だ、休日出勤だって忙しくて、半分の元日本に残った私は今年も1人で誕生日を迎えたのかな? お父さんもお母さんはいつものごとく、どうせ仕事だろうしね。
まさか彼氏なんかできているわけがないよね? だって私だよ? 半分になったって中身は私だからね!(いないよね?いないと言って〜な!)
まぁ、考えてもわからないことは『ま、いっか!』だね。
私は今、目の前に推しの最高のお方がいらっしゃるのだから、同じ空気を吸って同じ空間にいられるだけで大勝利なのだ。だから、元の世界の私にこう言ってやりたい。
『どうだ!こっちは最高だぞ!!』ってね。
生演奏のクラシック音楽を聴きながらお上品で楽しいランチを終えたあとは、いつもの通り、どんちゃん騒ぎの私の誕生日パーティーへと突入した。
(薫さま♡ 環さん!1人の誕生日でなく、お二人と過ごせるなんて、本当にありがとうございます!好き♡ラブ♡天元突破♡あぁ〜尊い♡)
今日も今日とて、大騒ぎの屋上で、私はプラエクスの夜景を見ながら心に誓う。
『天下を取るより、やっぱりスローライフと推し活ね♡♡♡』
――なんてね。




