第8話: 準備も後片付けもラクチンですか?今日からできるズボラ絶品カレー(めんどくさいので丸投げします)
またもや鐘の音で起こされた。夕方の6時を告げたようだ。
お昼を食べ損ねたので、お腹が空きすぎた。考えてみたら、この世界に来てから元日本のものしか食べていない。宿のものさえ食べていない。スローライフどこいった?
身支度をして下に降りると、夜の時間は宿泊客も落ち着き、通常通りのメニューに戻っていた。
それにしても、理さんと瞳さん、元気すぎる。あのカレーのせいかな……。宿泊客ももしかして? いや、気にしない気にしない、気にしたら負けさ。
ひとみさんに声をかけると、バタバタした様子で謝られた。
「そういえば何もご飯を出してなかったわね。ごめんなさいね。私たち混乱しちゃってたから」
「いえいえ、手持ちのものを食べてたので大丈夫ですよ。他の皆さんはもう帰られたのですか?」
「みんなくたくたになって3時過ぎには帰ったわよ。ほんとに手伝ってもらってよかった。一時はどうなることかと思ったわ」
「無事に終わってよかったです」
(無事に飯テロ終わってよかったです)
「暁ちゃんもそこに座って。今からお昼の残りの唐揚げで夕飯作るから、先食べちゃってね」
「花ちゃんは?」
「今、厨房の方を手伝ってる。あの子、今日の大盛況な食堂の雰囲気を見られなかったからってすねちゃってるのよね」
と言って、瞳さんはキッチンに料理を取りに行ってくれた。
そして出されたのは、唐揚げと野菜の盛り合わせ、ご飯とお味噌汁、それに緑茶だった。
「いただきます」と言って食べ始める。
唐揚げはやっぱり正義ですね。味噌汁もおいしい。ゴスロリちゃんが言っていたよりおいしいかも? まだこれしか食べてないからわからないけど……。
そして夕食を完食し、食堂のほうも落ち着いた頃。理さんと瞳さんと花ちゃんと私の4人で、「それでは、第一回文明開花戦略会議を行います」と宣言した。
花ちゃんが「戦略会議?」と首をかしげるので、私は説明する。
「私の家に伝わっている、あのルーに似た味の秘伝のレシピをお教えします。ですので、材料を集めて理さん、試行錯誤して調理してください」
そう言うと、親子3人はびっくりした。
「レシピは秘伝のもので、外には普通出さないのにいいのかい?」
「大丈夫です。そんなに難しいものじゃないんで。ただ、私も作ったことはないので、ご自分でいろいろと調合して作ってもらうことになりますけど、それで構わないなら!」
(飯テロきましたよー、あるある。レシピは秘伝、門外不出……)
レシピはさっき、部屋を出る前に懐中時計で検索したのだ。
あの「りんごと蜂蜜がとろり溶けちゃってるカレールー」と同じような味にするにはどうしたらいいか。優秀な懐中時計ちゃんがちゃんと教えてくれた。
10皿分のスパイスの黄金比(目安:大さじ2強=約20g前後)
ターメリック(ウコン):大さじ1/2(約3g〜4g)
役割:カレーの黄色い色づけと、少し土っぽい風味、苦味・コクを出す。入れすぎると苦味が強くなるので、全体の2割〜3割程度に控えるのがコツ。
パクチー(乾燥シード、またはパウダーのコリアンダー):大さじ1〜1.5(約6g〜9g)
役割:カレーの香りのベース(爽やかさと甘い香り)を作ります。甘い家庭のカレー風の親しみやすい香りは、このコリアンダーが中心。たっぷり入れても苦味が出にくいので、スパイスの主役(全体の5割以上)として多めに使う。
美味しく作るためのポイント
スパイスのバランス
基本のベースとして、「ターメリック 1 に対して、コリアンダー(パクチー)を 2〜3 の割合」にすると、苦くなりすぎず、市販のルーに近い香り高いバランスになる。ここに好みでクミンやクローブ、レッドペッパー(辛味)を少量足すとさらに本格的。
甘味と酸味の調整
はちみつがベストだが手に入りにくいので、代わりに「完熟した桃やりんご」をすりおろしてたっぷり入れると、加熱によって自然なトロミとフルーティーな甘さが加わり、あの優しい味わいに仕上がる。
ここまで一気に説明した。
「ターメリックやコリアンダー、クミン、クローブ、レッドペッパーは、薬師のところで手に入るって聞いたんですけど、何かご存知ですか?」
と聞くと、薬師組合に入ってないと買えないと言う。でも、市場だったら質が悪いものなら手に入ると教えてもらった。これは多分魔法のイメージってやつでちょちょいってやればきっと大丈夫……だと信じたい。
それから、桃やりんごは手に入るか聞いたら、「りんごの木は裏庭にあるけど、桃の木はない。ただ、年中市場で買える」と聞いた。
(季節感がないなぁ……。ゴスロリちゃん、いい加減だなぁ。めんどくさかったんだろうなぁ……)
さらに基本の作り方も伝授する。
クミンシード(粒)などの「ホールスパイス」やニンニク・生姜・玉ねぎを油と一緒に炒めて香りを油に移す。その後でお肉や野菜などの具材を加えて炒め合わせ、水やすりおろしたリンゴ・桃などを加えて煮込む。最後にターメリックやコリアンダーなどのパウダースパイスや塩で味を調える。本格的にお店みたいにしたいなら、最初にホールスパイスを炒め、後からパウダースパイスを入れる手順にするといいらしい。
ここまで説明すると、さすがプロ。だいたいの要領は理解してくれたようだ。あとは自分で試行錯誤して調整してもらうしかない。
「それから、裏庭ってスパイス畑にしてもいいですかね? やっぱりこれから本格的に作るとしたらスパイスは高いと思うので、自分たちで裏庭で作ったほうがいいと思うんですけど……」
「お姉ちゃん、私もやる! 私がスパイス担当になる!」
花ちゃんが張り切って言い出した。理さんと瞳さんも快くOKしてくれて、裏庭の3分の1ほど使って良いそうだ。ただ栽培が難しいらしい。だから、薬師組合でも高いのだろう。
私はとりあえず挑戦してみるので、「明日市場に行って買ってきます」と宣言した。
さぁ、明日は市場へ行ってどんなイベントが起こるか楽しみだなぁ〜。
それにしても、スローライフって……一体なんだっけ?




