第65話:海ぶどうは美容にいいんです!……って自分の利益のためかよ!大満足でプラエクスへ帰還する!締め括りはもちろん暁ちゃんのドヤ顔だ!!
大宴会の翌日。
「ここまで時計塔の鐘の音は聞こえないだろう」と思ったが、残念なことに朝6時前に目が覚めてしまった。毎朝の習慣が身についているせいというか、せっかくなので朝日が見たかったので、布団から出てじっと昇ってくる太陽を眺めていた。
建物も何もない、リゾートホテルなんて影も形もない海沿いの景色。美しく昇る朝日を浴びながら、私は思わず、
「これぞ青春だーー!!」
と大声で叫んでしまった。すると、近くで準備をしていた海人たちの朝は早いらしく、「なんだなんだ?」とみんなに見られてしまい、とっても恥ずかしい思いをした。
私はその瞬間、咄嗟に『ごまかし』の術を発動し、
「お、おはようございます! 皆様、朝食はいかがですかー!?」
と大声で誘ってしまい、結果として大宴会の朝食版第二弾が始まってしまった。
私はドラッグストア機能のポイントを駆使して、朝から大量の牛乳、食パン、クロワッサン、ウィンナー、ハム、卵、そしてパック入りのサラダを買ってみんなに大盤振る舞いした。もちろんウィンナーと卵はお姉様方が大量に調理してくれて、塩コショウも振ってくれマヨネーズもついた特製だ。
私、大盤振る舞いしすぎだな? まぁ、いっか!
そして、那覇の事務所へとキャンピングカーで知念さんと一緒に帰っていった。
まるで要人のVIPでも乗っているのかと思うくらい、村のみんなに温かく手を振られて見送られ、私も上品に顔の前で手をひらひらと振って車に乗り込んだ。帰りは知念さんが「運転してみたい!」と言うので、私は後ろの後部座席に陣取り、優雅に景色を眺めながらすっかり爆睡して事務所まで帰ってきたのだった。
事務所に着くと、知念さんと少しお話をした。せっかくなので、服飾組合の環さんも共鳴歯車で呼び出してみる。本当に日本全国で綺麗に通じるんだから、今更ながらすごい技術だ。(もとは炭酸入浴剤だけどな!)
「あらあら、暁ちゃん、無事に着いてるのね。着いたって連絡ないから少し心配してたのよ」
(ヤベ! 自由を満喫しすぎて、誰にも連絡してねーや……!)
「すみません! カルチャーショックなことが多いし、イベント盛りだくさんでくたくたになっちゃって……本当にごめんなさい!」
「まぁ、元気ならいいけど……ここには今ちょうど薫もいるわよ。来たばっかりなの。さすが暁ちゃんセンサーが何か働くのかしらね」
(薫さまの前でなんてことを言うんだ! 乙女の気持ちをわかってくれ! あなたも乙女だろうがーー!!)
「薫さま、このたびは色々とお気遣いとお手配、本当にありがとうございました! 連絡もせず申し訳ございません。とても充実した毎日を送らせていただいております。感謝感激雨あられです!」
「ちょっと、暁ちゃん、なんか変よ?」
と、ちゃっかり環さんに突っ込まれてしまった。私は何事も聞かなかったかのように、本題へと切り出す。
「お二人にご相談があるんですけど……私、首里城を観てきて、ぜひ首里城を修復させたいんです! このまま解体されるなんて忍びないし。お金は天下の回りものだから、私、ヴォルプタス様に寄付するつもりで首里城の修復に役立てたいんですけど、どうしたらいいですかね?」
と言うと、薫さまが、
「ちょうど今、建築家や知識層から嘆願があって、政府もいろいろと悩んでいるところだったんだよ。暁ちゃんの話をきっかけに、修復が一気に進展するかもしれないなぁ。私もいろいろ協力するよ」
とおっしゃってくれた。
私は、
「いつものことながら目立ちたくないので、お金だけは出しますから、あとは丸投げでお願いします!」
と言うと、共鳴歯車の向こうから二人のお腹を抱える大笑いが聞こえてきた。
「それから、もう一つお願いがあるんです……今回、こちらの知念さんにすごくお世話になって、今も知念さんの実家の海沿いから帰ってきたんですけど。あの海辺の村でもずくの養殖ってできないですかね?」
「養殖?」
「はい! それと、海ぶどうは採取しても日持ちがしないので、その日のうちに良い状態のまま保存して、どうにかプラエクスとかに持ち運びできないですかね?」
「海ぶどうももずくも、今そんなに需要がないからなぁ……一部の酒飲みたちに、おつまみの珍味として喜ばれてるくらいだけど……」
「海ぶどうやもずくは、これからの美容に欠かせないものなんですよ!」
そう力説すると、環さんがすかさず大声を上げて食いついてきた。
「暁ちゃん、そこのところ詳しく!!」
(シメシメ、乗ってきたぞ……!)
「海ぶどうやもずくに含まれる成分が、美肌やアンチエイジング、老化を緩やかにしてくれる機能を持っているんです! 水分を保つからお肌がモチモチになるし、食物繊維がたっぷりだから腸内環境も整って、その相乗効果でもっと肌が綺麗になるんですよ。髪にもすごくいいんです! それに、三杯酢と一緒に食べるとカルシウムの吸収率も上がって骨も丈夫になる。毎日食べると本当に効果が出るんです。でも、一度に大量に食べすぎると逆に体に悪い成分もあるから、1日30グラムから40グラムくらいが良いみたいですね。……これは、私の『秘伝の知識』なので内緒ですよ!」
「それ、本当なの!?」
と、環さんのテンションが完全にマックスになった。
「ヴォルプタス様に誓えます! これはプラエクス中の女性たちが絶対に食いつく案件ですよ!」
もうその一言で、この一大事業が始まることが決定してしまった。
さすがゴスロリちゃん(ヴォルプタス様)の加護だ。元の世界でも海ぶどうやもずく酢は栄養たっぷりだったけれど、亜空間収納の鑑定で調べたら、この世界ではその美容効果がより顕著に出ることが分かっちゃったんだよね。
まぁ、私は純粋に、新鮮でもずく酢と海ぶどうがいつでも食べられれば何でもいいんだけどさ! はははは、チートだなっ!ゴスロリちゃん、ありがとう! (でも、インフルエンザの時の貸しはまだ返してもらってないからな! 楽しみに待ってろよ、ははは!!)
詳しいビジネスの話はプラエクスに帰ってから詰めることになり、今回の窓口担当として、私たちの話をポカンと口を開けて聞いていた知念さんがその責任者に大抜擢されることになった。すごい大出世だ!
そのあと、私が持っている共鳴歯車を、私といつでも連絡が取れるように1組(主に海ぶどうやもずくを発注するため用)、そして薫さまと環さん用にそれぞれ繋がるものを渡し、デキる女・知念さんはすぐに仕事モードに切り替えて事務的な打ち合わせを少し進めた。
でも、あくまで今回の目的は私の「リゾート滞在」だからと、今回はそこをメインに優しく配慮してくれたのはさすが知念さんだ。
そんなこんなで環さんと薫さまとの共鳴歯車での会話を終え、ほかの人たちにも、環さんから「私が無事だ」と伝えてもらうことにした。(めんどくさくて重たい安否確認なんて、のんびりリゾート中の私にはノーセンキューだ!)――その後も気ままに過ごした。
他の地域にも足を延ばして、手作りの木綿の『色絣』をあちこちの海沿いの村や農家でブツブツ交換で手に入れたり、那覇の呉服屋さんで紅型の反物を爆買いしたりと、知念さんにはすっかり呆れられてしまったけれど、私は一切気にせずマイペースに我が道を行き、毎日いろいろな料亭での大食い大会を堪能して、ついにプラエクスに帰る日がやってきた。
飛行船の乗り場には、知念さんが見送りに来てくれていた。丁寧にお礼を言われながら、私はまたフワフワと空を行く飛行船に乗り込んだ。
行きと同じように、イケメンなボーイさんに美味しいコーヒーを淹れてもらい、優雅にピアノの音色に酔いしれ、朝食を心ゆくまでむさぼり食い、外の景色を眺めながら爆睡し、お昼のステーキを何度もおかわりし、また爆睡して――気がつけばプラエクスへと到着していた。
「あーあ、我が街が一番落ち着くなぁ……」
と、一度は言ってみたいセリフを実際に口に出してみる。
発着所に出迎えてくれていたのは、薫さまの会社の職員の方だった。ちょっとテレ臭くなったので、得意の忍法『ごまかし』を咄嗟に発動し、とりあえず生存確認報告のために愛車のスタスクちゃんで文明開花へと爆走していくのであった。
『元の世界の私より、はるかに楽しい旅ができたぞ! あなたと違って、親に気を使うことも、周りの目を気にすることもなく、面倒な人間関係からも解放されて、自由気ままに1人で満喫したんだからね!!』
心のなかで盛大にドヤ顔をしながら語りかけた、デレクトアティオの暁であった。




