第60話:元の日本とこの世界の微妙な違い…首里城の姿に暁ちゃんは今更戸惑う
翌日は、朝6時の鐘とともに起きた。
(ここでも時計塔があるんかい!)
身支度をして、キャンピングカーに生活魔法もどきのクリーンをかけて、一旦ガレージボックスにしまった。そして事務所に行くと、知念さんがもう来ていた。
昨日の今日では、親戚の方に『もずくや海ぶどう』の話はまだ通っていないので、今日はとりあえず市場に行ってから首里城を見に行くことにした。
「首里城の中は、女学校や役場などがありますが、中には入れませんよ……。どうしてもという場合には事前に根回しが必要なので、お時間をいただきますが……」
と知念さんが言うので、
「いえいえ、外から雰囲気を見るだけで大丈夫です。首里の街の雰囲気を見たいだけなので」
と私は答えた。
それからまず市場に出かけて、昨日の大量買いを再現した。買えるだけ買いたいからね! 黒砂糖も塊で売っていたので、金槌で叩いて割って使うんだって。もちろん大量買いだ!
なんだか、昔読んだ『長靴下のピッピ』の物語を思い出した。主人公の女の子が大量の金貨を持って街に出て、お菓子屋さんでお菓子を大人買いするあのシーン――。いつかそんなことをしてみたいと思っていたけれど、可愛いお菓子屋さんではなく、沖縄の市場でそれをやってのけるとは……私らしいじゃあないか! ワハハはは!
市場の近くには、簡易的な屋台で獲れたての魚をその場で焼いたり、簡単な汁物(かちゅー湯っぽいもの)を出してくれる場所があったので、そこで簡単な朝食をとってから首里へと向かった。
ここからは、私のキャンピングカーで向かう。なぜかと言うと、何よりも大切な『トイレ問題』があるからだ! 事務所や昨日の料亭はプラエクスと変わらず水洗トイレがあったけれど、街中で綺麗な水洗トイレを見つけるのは大変なのだ。だから、今日は自分のキャンピングカーで観光することにした。
旅で一番重要な必須条件である『トイレ問題』も、時代屋さんのおかげで完璧に解決だ。知念さんもとても感動していた。そうだろ、そうだろ! ウォシュレット付きの、元の日本が誇る最高の文明の利器なのだからな、はははは!
それから首里城見学のために市場を出発した。
首里に近づくにつれ、那覇との違いに驚いた。那覇は活気があり、「琉洋折衷」の街並みにスチームパンクっぽい時計塔や建物が混じった独特な雰囲気だけど、首里は全然違った。
王朝時代は静寂と緑、そして赤い瓦屋根と白い石垣がどこまでも続く非常に美しい景観だったらしい。首里の武家屋敷街は、時代とともに家が売られたり木々が伐採されたりして、所々に変化が見られた。それに加え、道路に敷き詰められていた大通りの石畳も、馬車や人力車が通るために土に変わり、所々に石畳が残されるだけになっていた。
そして、首里城の前の大通りにある守礼門の前にキャンピングカーを乗りつけた。
私の住んでいた元日本のニュースや旅番組などで見た首里城とは、全然違っていた。老朽化が進んでいて、あの元いた世界で見ていた華やかな感じではなかったのだ。
私があまりにもびっくりしていたので、知念さんがこう教えてくれた。
「王朝がなくなってから政府に一度徴収されたんだけど、その後維持を家賃収入で補うために、首里城の中は役場に貸したり、今は女学校と――それから将来スチームパンク工房の職人になるための蒸気機関学校が入っているのよ」
そして、
「修理する予算がどこからも出なくて、もうすぐ解体されることが決定されたの」
とも言われた。
確かに元の日本でも、そういう話が大正時代にあったのはドキュメンタリーで観ていた。そのあとに建築家や知識人たちが多く立ち上がり、政府に働きかけて首里城を残し、色鮮やかで華やかな元日本の首里城ができていったという歴史は知っていた。だけど、あまりにも目の前の首里城との違いに愕然としてしまった。元日本の首里城は近年火事で消失してしまったけれども、すぐに外国や日本国内から寄付が集まって修復作業が始まり、もうすぐ観光地として復活できるということも知っていたからだ。
ゴスロリちゃんのいる世界は、元の日本と同じような歴史をたどっているようで、やっぱり少しずつ違うんだなぁと思った。
色々と考えさせられてしまった暁であった。




