第59話:物欲爆発からのお優雅で上品な姫のようなひと時…ここでもおかわりしたがな…何か⁈
市場と言えば早朝が一番賑わうものと思っていたけれども、沖縄ではまだひえひえ箱が一般家庭にないため、みんなその日に食べる分を夕方に買うのが普通とのこと。アンマー(行商の女性たち)は、午後の一番賑わう時間に向けて新鮮な魚を仕入れるそうだ。沖縄伝統料理のマース煮(塩煮)用のグルクンなどの白身魚や近海魚が、夕方の市場にはたくさん並ぶらしい。貝類も豊富で、沖縄の浅瀬では夜間や早朝の潮干狩りで貝がよく獲れるらしく、ティラジャー(マガキガイ)、夜光貝、大ぶりのサザエなどが市場に並ぶ。
午後でも売られている貝類は魚よりも少し日持ちがするため、午後の遅い時間でも手に入りやすい食材なのだ。沖縄の伝統的な島豆腐っぽいものもあるみたい。
東町市場などは、夕方のおかずを買いに行く場所として午後に活気があるらしい。那覇の市場には、周辺の糸満などの漁村から魚を売るアンマーが来たり、中部の農村から野菜を売るハルサー(農家)が来たりしている。農村や漁村の生活の中では、わざわざお金を使わずに「私のラッキョウと、あなたの魚を換えっこしましょう」という物々交換で、ユイマールという相互扶助に近いものが市場の片隅や道端で日常的に行われているそうだ。
もう私はワクワクが止まらない。物々交換なんて、なんて素敵な響きなんだ。大量に買い占めるぞ!
そして知念さんと一緒に市場に向かった。夕方にはブルジョワな料亭に行くので、今日は先ほどの立派な車に乗せてもらって市場へ行く。市場と立派な車は……まぁいっか!
そして市場に着いたら、私のテンションが一気に爆発した。
もう、これは大量に買って帰って、理さんに料理してもらうしかない! ここで買わないなんて、何のためのチートの亜空間収納なのって話になってしまうからね。ははははははは!
グルクン(タカサゴ)や、高級魚のアカマチ(ハマダイ)、青い色が鮮やかなイラブチャー(ブダイ類)やシチューマチ(アオダイ)、カツオやサメなど、次から次へと買いまくる私を見て、知念さんはすっかりびっくりしていた。
そして、私はキョロキョロしても見つからないので、アンマーのお姉さまに聞いてみた。
「すみませんけど、もずくと海ぶどうが食べたいんだけど、見つからなくって……」
すると、そのアンマーのお姉さまと知念さんにまたまたびっくりされた。もう一度、
「もずくと海ぶどうが見当たらないんだけど……」と言った。
海ぶどうは分かってもらえたけれど、もずくが通じないので説明すると、「スヌイ」と呼ばれて食べられているとのこと。しかも、初春から夏にかけて食べられるもので、今は時期ではないらしい……ガクシ……。
肝心の海ぶどうについても、市場には売っていなかった。沖縄では「ンブトゥ」と呼ばれていて、海辺で子どもがおやつ代わりにプチプチとつまんで食べる程度なんだとか。海ぶどうは傷みやすく常温での長期保存ができないため、ひえひえ箱が一般的ではない那覇の市場に商品として並ぶことはないそうだ。ガクシ……。
それを聞いた知念さんが、
「海ぶどうについては、海沿いに住んでいる親戚に聞いてみてあげる。もずくについても、秋から冬には溶けてなくなってしまうから今は手に入らないけれど、親戚で冷え冷え箱を持っている人や塩漬けにしている人がいないか聞いてあげるね」
と言ってくれた。ありがたや、ありがたや!
その後も色々と見るもの聞く物、大量買いし、ほこほこと温かい気持ちで、私は夜な夜な密談が行われているであろう料亭へと向かった。
建物は、沖縄の厳しい自然に耐える赤瓦と石垣を使った伝統的なもので、内装はプラエクスの流行を取り入れた畳敷きの粋で和風な作りになっていた。
料理のほうは本当に豪華で、とてもおいしかった。最初は緊張すると思っていたけれど、目の前に美味しそうな食べ物が出てきたらそんなものは一気に吹っ飛んでしまった。琉球舞踊や三味線の音色を聞きながらの食事は、本当に優雅でお上品で、私を「自分は姫なのだろうか」と勘違いさせてしまうくらい素晴らしかった。
素晴らしすぎたので食欲がさらに増進されてしまい、好きなものをおかわりさせていただきました。ほほほほほほほほ!
そして、すっかり満足して食べ終わるころには朦朧となりながら事務所へと帰り、裏手にキャンピングカーを出して、その日は生活魔法っぽいクリーンをかけてぐっすりと眠ったのだった。
ウユミ ミソーレー!




