表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大正浪漫なスチームパンクの蒸気都市で、ドラッグストア機能とポイントを駆使してスローライフを送ります  作者: Fos B


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/7

第4話:文明開花の鐘が鳴る〜

昼食を食べた後は、まだこちらをチラチラ見ている人がいるので、煩わしいから私は噴水の場所からすぐに走り去った。ついてこられるのも面倒だしね。それで、興味があった食材の屋台をプラプラと冷やかしながら見ていた。あんまり食材自体は元の日本と変わらないみたいだ。ただ数は少ないし、1つの屋台ではそんなに多く売っていない。やっぱり日持ちしなかったりするからかな、流通の問題かな。まぁ私には詳しいことは分からないけど……。

そして歩いていると、前の方で女の人がしゃがみ込んでいるのが目に入った。その子供らしい7歳くらいの女の子が「お母さん、大丈夫?」と心配そうに寄り添っている。周りにも人が集まり始めた。

私も野次馬と一緒になってその親子を見ると、女の人が大量の汗をかいていて、顔が真っ赤だ。私は「あっ」と思った。私は体温調整機能が自動でついた服を着ているから感じないけれど、周りの人はみんな結構汗をかいている。もしかして熱中症かもしれない。

私はそのお母さんと子供のそばにしゃがんで話を聞いた。具合の悪いお母さんに向かって「頭痛はしませんか? 吐き気はありますか?」と聞くと、力なくうなずく。そうすると横にいた女の子が「お母さん、急にしゃがみ込んじゃって、気持ち悪いって歩けなくなっちゃったの」とすごく心配そうにしている。

私は小学生の時の安全対策の授業で、熱中症について散々教えられた。それに、毎日初夏から熱中症警戒アラートがニュースや特集でバンバンやっているのを見ていた。その症状にぴったり当てはまるので、私は「多分熱中症だと思うから、とりあえず日陰に行きましょう」と言って、周りの野次馬たちに手伝ってもらって、日陰のベンチにその親子を連れて行った。

そして、「何かタオルやハンカチはありませんか?」と聞くと、女の子が籠の中から何枚か手ぬぐいを出してくれた。それなので、私は水筒から氷を取り出して手ぬぐいで包み、お母さんの首筋や、服を緩めて脇の下に挟むように言って渡した。

私が「お水、飲めそうですか?」と聞くと飲めそうだと言うので、水筒の水を少しずつ飲んでもらった。女の子も危ないと思ったので、ちゃんと女の子にも少し飲ませた。一度に大量に飲ませてはいけないって聞いていたからね。それに、塩飴もなめてもらった。

しばらく休んでいると、お母さんの顔色が戻ってきて、話ができるようになった。その頃には野次馬もいなくなっていたので、日陰のベンチに座って3人で話をした。

「本当にありがとうございました。花を連れているのに具合が悪くなってどうしようかと思って……。でも気持ち悪くてしょうがなくて、何も考えられなくなっていたから、ほんとにありがとう」とお母さんはお礼を言ってくれた。娘の花ちゃんも「お姉ちゃん、ほんとにありがとうね」と笑顔で言ってくれた。

そして、

「この飴、しょっぱくて甘くてすごいおいしい」

「ほんとに、こんな飴なめたことないわ」

と言うので、私は「あぁ、その塩飴は、こういう暑い日にあんまり水分を取らなくて汗が出なくなって、体に熱がこもったときに失われた塩分を補うものだから、体にいいんですよ。よかった、ほんとに」と説明した。

お母さんは、

「私はひとみっていうの。この先のところで『文明開花』っていう宿をやってるのよ。今日は買い出しの途中で、忙しかったからあんまり水分を取っていなかったのよね。それで熱中症……? そんな言葉、初めて聞いたけど、それになったみたいね……」

と教えてくれた。

「宿屋をやってるんですか? 私、田舎から出てきて(そういう設定に急遽した)全然この都市のことが分からないんです。1泊だいたい普通いくらなんですか?」

「うちは1泊素泊まりで5000円、食事を2食つけると7000円よ。だいたいこの下町だとそんな相場ね。もし他の宿が決まってなかったら、お礼もしたいからぜひ家に来て泊まっていかないかしら?」

「わー、それはすごくありがたいです。でも私、田舎から出てきちゃってお金が尽きちゃって、あと3日分しかないんです。その間に仕事も探さなきゃいけないし……」

「仕事が見つかるまで宿の仕事を少し手伝ってくれればいいわ。今日のお礼をしたいもの。だって私の命の恩人だもの。主人だっていいって言ってくれるわよ」

「それは私にとってもすごくありがたいことなんですけど、本当にいいんですか? ありがとうございます!」

「わーい、お姉ちゃんと一緒だ! わーい!」

と花ちゃんもとても喜んでくれて、私もなんだか嬉しくなった。

買い出しも手伝って、私が荷物を持つことになった(瞳さんに話を聞いたら、この世界にはとても高価だけれども『収納カバン』と言うものがあるらしい。ただ、時間は経過するし、だいたい畳一間分ぐらいしか入らないそうだ。それなので、私はその収納カバンをおじいちゃんの形見として持っているという設定にして、私のカバンの中に持ってきた荷物を全部入れたことになっている。宿の買い出しの荷物もそこの中に入れた)。3人でゆっくり、宿の『文明開花』へ向かって歩いていった。

歩いてしばらくすると、宿屋『文明開花』に着いた。

宿屋の外観は、木造で小学校の校舎をすごくこじんまりさせたような3階建てだ。正面にある木造の扉は、レトロすぎてかえっておしゃれに感じる。花ちゃんが駆け込んでその扉を開けると、「コロリン〜ン、コロリン〜ン」と楽しげな音が鳴った。

さあ、ここからが私が当分お世話になる宿屋『文明開花』での初めの一歩だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ