第34話:暁は、とうとう念願の大正浪漫なマイホームをゲットした!
『文明開花』で緊急戦略会議を開催してからの日々は丸投げできるところは丸投げしているので、実にスローライフな日々を送っている。
蒸気機関組合に登録に行った時に、地熱エネルギーについてつい口が滑って特許の話になった件は、さすがに謎技術のあるこの世界でもまだやっぱり研究中みたいで、すぐにはなかなか進まないらしい。まぁそりゃそうだよね。この謎エネルギー・謎技術のある世界でだって時間はかかるわなぁ……。そんなわけで穏やかな日々を送ってる。
最近は特許料も入ったから、きちんと『文明開花』には1日7000円の宿泊料を払っている。(ホントは基本2食で7000円だけど、ほぼほぼ毎日3食きちんと『文明開花』で食べているが、まぁそこはゆるゆる……。週に1度、私の生活魔法もどきでキッチンをピッカピカにしているので、win-winな関係でよしとなっている。)
そのため暇で暇でしょうがないので、ぶらぶら町歩きをしている。『文明開花』の前の道路も結構大きい道路で、ここを起点にして市場に行ったり中心地に行ったりはしている。考えてみたら裏庭には裏の家との間に高い壁があり、あちら側の上の方にラピスラズリ色の屋根だけは見えているが、そちら側に行ったことがない。
今日はふと思いついて、そちら側に行ってみようと思った。裏庭の壁を境に、あちら側は高級住宅地、こちらは下町情緒あふれる地区に分かれているらしい。(花ちゃん情報)
この高い白い壁が近くて遠い境界線になっているようだ。壁の向こう側に行くには、区画の関係でぐるっと周らなければいけないらしく、15分以上かかるようだ。
散歩にはちょうどいい距離だと思うので、てくてくと気持ちの良い風に吹かれながら、心の中で――いや口に出してるかも。元日本の歌を歌いながら歩いていた。
ぐるっと回って、こちらはほんとに高級住宅地で、道も広く歩道も綺麗なレンガ色になっていて、歩道は家側の3分の一は緑の綺麗な芝生が敷かれている。一つ一つの庭も広く、家も大きい。『文明開花』の裏庭の壁側とこちら側では全然別世界だ。
キョロキョロしながらゆっくりと歩いていると、ちょうど『文明開花』と『時代屋』の真裏の所に、大正浪漫にちょびっとだけスチームパンクが微妙に混ざった素敵な家が立っていた。
まず家を囲むものはラピスラズリの色をした鉄の門。塀の壁は白いレンガ造りの壁が囲んでいる。庭には芝生が敷かれていて、門から家の玄関までは白いレンガの道が続いている。玄関までの道の脇には、道沿いに等間隔で外用の背の低い照明が並んでいる。
家は白いレンガ造りの家で、玄関もラピスラズリの重厚な木造でスチームパンク風のステンドグラスがはまっている。向かって右側に大きな窓の掃き出し窓があり、サンルームのようになっている。サンルームの前はラピスラズリ色に塗ったウッドデッキがついている。2階にも大きなバルコニーがある。屋根には煙突もあり、屋根の色はラピスラズリの瓦屋根になっている。新品のピカピカではなくいい感じに所々色があせている。それがなんとも趣があり、なんて素敵な家なんだろう。私が憧れている大正浪漫の家だ。それにスチームパンクがほどよく加わって、とてもおしゃれになっている。なぜか門が大きく開いていたので、私はその前に仁王立ちになって家をまじまじと見ることができた。
ちょうど見ていると、中からいかにもサラリーマン風のスーツを着た人と年配の老夫婦が喋りながら出てきた。私はあんまりジロジロ見てちゃいけないかと思って、亜空間収納から無限水筒を出して水を一口飲んでから歩き出そうと、水を飲んでいたらちょうど門のところでスーツを着た男性と年配のご夫婦が話し出した。
どうやらスーツの男性は不動産屋のようだ。
「地方に住んでいる私の息子がどうしても急にお金がいるって言ってね。早急に売りたいんだよ。少しぐらい値段を安くしてもいいから、至急現金で即決で決めてくれる人を見つけてくれないか」
と年配の男性が言うと、
「これだけの立派な建物と土地ですからね。それにここは高級住宅街ですから、なかなかすぐにというわけには……」
「本当は手放したくないのよ。でもね、もうどうしようもなくて、早く息子にお金を届けなくてはいけないの。私たちも息子のところに一緒に住むから、家にある家具なども全部備え付けで売りたいのよね」
と奥様が悲しそうに言っている。
(うん? なんか良い話が聞こえてるぞ。「どなたか至急こちらを買っていただけないかしらね」)
「そうですね。何人かにこれからあたってみます」
と不動産屋らしき人が言った。
それなので私は手を挙げて、
「私はここを買います」
と駆け寄っていくと、不動産屋の男が、
「子供が何を言ってるんだ? 仕事の邪魔をするんじゃない。ふざけてる場合じゃないんだぞ。あっちへ行け」
と失礼なことを言い出した。
私は満面の笑顔で老夫婦に向かい、
「いくらで売却予定なんでしょうか? ご希望額を教えていただけますか?」
と丁寧に私が言うと、老夫人が「最低でも1億希望なのよ」と正直に教えてくれた。子供だからといって馬鹿にせず誠実に答えてくれたのだ。
「奥様、子供に何を正直に答えてるんですか!」
と不動産屋が怒るので、私はちょっとプチッと来て、亜空間収納のバックからゲンナマを取り出せるだけ取り出して、ご夫婦にお見せした。
「直接やり取りするので、手数料もかからないで得だと思いますよ」
と言うと、不動産屋が慌てて「いろいろな手続きがあるから不動産屋を通さないと」と言い出した。
私は、
「あれ? 子供には売らないってさっき言ってませんでしたか?」
とちょっと冷たく言ったら、
「申し訳ございません」
と素直に言ったので、許すことにした。
それから一旦ご夫婦が「屋敷に入ってくれ」と言うので、みんなで屋敷に入っていった。ほんとにとても素敵な家だった。内装も家具も大正浪漫とスチームパンクと和洋折衷の私好みの素敵な作りだった。一通り見学させてもらい、今度は不動産屋のお店に行った。そしてその場で手続きをして即決で購入した。
なんて実りのある散歩だったんだろう。予は満足じゃ、満足じゃ。ほほほほほ。
(手続きの間は懐中時計の検索で調べながらもちろんやったよ。だって私、たった13歳だもん。騙されたら大変大変、エヘッ)
密かにイメージして騙されないようにしようかと思ってたけど、ここでもゴスロリちゃんの誠心誠意・誠実が働いて、私が不動産屋に「私が13歳だからって騙そうとしないですよね」と言ったら、すごく焦って「そんなことをしたらヴォルプタス様の天罰が下ってしまう。冗談でも言わないでくれ」と慌てていた。そして家を売ってくれたお二人もうんうんとうなずいていた。
ほんとにゴスロリちゃんたらいい仕事してるなぁ。
お二人は1週間以内に身の回りと大事な品などを持って地方に引っ越すそうだ。他は全部そのまんま置いていってくださるそうだ。きれいに使っていたので全然それでオッケーだ。生活魔法でちょちょちょいちょいとクリーンにすれば新品同様になるしね。魔法はイメージ、イメージ。ネット小説読んでてよかったよ。アニメもいっぱい見ててよかったよ。元日本の私、すごいすごい。
そして全部手続きが終わって『文明開花』に帰っていった。
夜、食堂から宿泊客の姿もなくなったので、私は「緊急招集、緊急招集! 『文明開花』戦略会議を行います」と言って、理さん、瞳さん、花ちゃんと食堂の席を囲んだ。
そして私は、
「このたびは皆様にご報告があります。本日私、裏庭の白い壁の向こうの家を買いました。あのラピスラズリの色をした屋根の家です。キッチンの改装などちょっとしたことをしたらそちらに引っ越しますので、よろしくお願いいたします」
と爆弾発言をしたのであった。
ほほほほほほほほ。




