第32話:サイドカー付きスクーター納車!私はライダー……じゃなくてアトラクションですか?
なんだかんだでスローライフな日々を送っているうちに、とうとうウハウハの特許料が入る日がやってきた!
料理組合と蒸気機関組合に行って残高を確認したら……もうびっくり。13歳の私がこんなに大金を持っていて良いのだろうか? ほほほほほ!!
服飾組合の分はまだ入ってこないけれど、この蒸気機関組合の特許料だけでも一生食べていけるかもしれない。それに加えて、ドラッグストア機能のショッピングを使えば、もう私は一生引きこもりでも大丈夫だと思う。
……それに加えて今日は、特別に発注していたサイドカー付きスクーター(『スタイリッシュスクーター』のスタスクちゃんと呼び名をつけてみた。)の納車日だ!
私は組合からの帰り道、ウキウキ気分で『時代屋』へと向かった。
お店の前に着いて、超大音量のベルを鳴らすと、まず風ちゃんが出てきてくれた。
中に入ろうとすると「ちょっとそこで待ってて!」と入り口のところで止められた。言われた通り待っていると、中から源さん、元さん、風ちゃんの3人が出てきた。
そして、私が「?」と首を傾げると、源さんが手のひらに乗るくらいの、10センチ位の6面があるパズルのようなサイズの小さな箱を差し出した。
それをパカッと開けると――《なんということでしょう!》
キラキラと輝く深いローズピンクのサイドカー付きスタスクちゃんが現れて実体化した。
(……スタスクちゃん界の宝石箱や〜!)
あまりのハイテクっぷりに、私が珍しくポカンと固まっていると、風ちゃんが呆れたように言った。
「あれ、暁ちゃんって『駐車場箱』って知らないの?」
「なにぶん、田舎から出てきたから……」
(なにぶん、異世界から転移してきたもんで、知りません!)
「そっかぁ……。これはね、狭いところでも貴重な車をしまっておけるし、常に持ち歩けるように開発された『駐車場箱』っていうんだよ。かなりのお値段だけど、今の暁ちゃんだったら余裕で買えちゃうよね」
それを聞いて、源さんが補足してくれた。
「今回は時代屋だけじゃない。蒸気機関に関わる連中みんなが助かったんだ。だからこれは、組合を代表してのお礼だよ」
「えー、こんな貴重なものをいただいちゃっていいんですか?」
「暁ちゃんは、もっと自分の成果に貪欲にならなきゃ! それだけのすごい発明をしてくれたんだからさぁ」
「では、ありがたくいただきます!」(無料!タダ!最高!)
それから、乗り方や安全装置の使い方についていろいろと説明してもらった。
このスタスクちゃんはめちゃくちゃ安全装置がいっぱいついていて、すごく安心安全な乗り物になっている。本当に、この世界には謎の技術がいっぱい詰まっている。めったなことでは事故が起こらない仕組みになっているから、13歳の私でも安心して乗れるというわけだ。
登録もすでに私の名前で済ませてくれているとのことで、「じゃあ、今からひとっ走り行ってきます!」と意気込んだら、
「おい、誰かを乗せて行ったほうがいいぞ。途中で何かあったときのために」と源さんに止められた。
「えー、じゃあ風ちゃん、一緒に乗る?」と聞くと、ちょうど向こうから花ちゃんが学校帰りなのか、パタパタとかけてきた。
「お姉ちゃん、私乗りたい! 私が一番に絶対乗る!」
「じゃあ、瞳さんと理さんの許可を取ってきてくれる? 私も初めて乗るから、最初は時代屋の誰かと乗るし、その間に聞いてきて」
花ちゃんは不満そうな顔をしながらも、「わかった!」と『文明開花』のドアを乱暴に開けて駆け込んでいった。
花ちゃんを待つ間、私は風ちゃんと一緒に近くをひと走りすることにした。
アクセルを回すと、本当に爽快だ! この世界に来て、いや、生まれて初めてのこの爽快さ。楽しすぎる……!
街の中央のほうの繁華街を通りかかったときだ。
道の向こうから、大きく手を振っている派手な人が目に入った。なんと、あの服飾組合の組合長・環さんだ。
私は慌ててスタスクちゃんを道の端に止めた。
「あらまあ、暁ちゃん! なにこれ、すごい乗り物に乗ってるじゃない。どうしたの、これ?」
「いや、特注で発注したんですよ。すごく可愛くないですか? この深みのあるローズピンクの色合いにキラキララメがお気に入りなんです」
「私、こう見えて運動神経が良いのよ!」
(こう見えて、じゃなくて……戦闘民族に見えますけどね……)
「私も前からバイクが欲しかったのよねぇ。でも、今までのバイクだとスカートが引っかかって優雅じゃないじゃない? だからどうしても買えなくて。でも、これなら足を揃えてスカートのままでも乗れるし、小回りも効きそうじゃない! ちょっと、それどこで買ったの? どこで注文すればいいのよ?」
私は思わず、横にいる風ちゃんに助けを求める視線を送った。
風ちゃんは冷や汗をかきながら、「あ、私、時代屋の風といいます。詳しいことは師匠の源さんに聞いていただきたいんですけど……」と答える。
すると環さんは、すごい眼力で「じゃあ、今日の夕方さっそく行くから! 絶対に行くから、都合いいわよね?」と言い放ったので、風ちゃんは「お、お待ちしております……師匠には伝えておきます……」と青くなりながら答えていた。
私は圧倒されつつも、「あの環さん! よかったら今日の夕飯、うちのお店(文明開花)で食べていきませんか? 本当は宿泊客しか夕飯を出していないんですけど、こないだ美味しいコーヒーをご馳走になったお礼に、瞳さんには伝えておきますから!」と言った。
「まあ、うれしい! なかなかランチにも行けなかったから、ありがとうねぇ。暁ちゃんってば、もう、本当にかわゆいんだから……」
(……なぜか、また背中がゾクッとプルっとしたぞ……?)
「じゃあ、また後でね!」
私は颯爽にスタスクちゃんを走らせ、お店へと戻った。
文明開花の前に着くと、花ちゃんだけでなく、瞳さんも理さんもみんな勢揃いしていた。
結局、「交代でみんなを順繰りに乗せることになった」のだが――。
(私は1人で颯爽と乗り回したいんだけどなぁ……。分かったよ、はいはい!)
風ちゃんには「今日の夜商談に環さんが来る」と源さんに伝えてもらい、私も理さんと瞳さんに「環さんが夕飯に参加すること」を報告した。2人とも快く承諾してくれたけれどね。(いつも後出しジャンケンの事後報告ですみません……それにしても、全員がスタスクちゃんに乗るのかい!)
結局、瞳さんの幼馴染みの皆様や花ちゃんを乗せたりしているうちに、夕方まであっという間に時間が過ぎていた。
私の初めてのバイクの練習は、いつの間にか「動く遊園地のアトラクション」のようになり、街中の視線を集める「動くショールーム(またはパレード状態)」と化していた。
カッコかわゆいライダーなのか、アトラクションなのか、よく分からないまま走り続けた一日だった。
――なんちゃってね。




