第27話:もうお腹いっぱいですか? はい、そうです。ぽっちゃりになりますか? いいえ、なりません!
部屋に戻り、みんなでソファに腰掛けるやいなや、一斉に私の顔が覗き込まれた。
「また思いつきで喋っただけなので、私は詳しいことは一切わかりません! それでもいいんですか?」
「ああ、構わないから早く説明してくれ」
(人にものを頼むときは、もっと丁寧にするものだって教わらなかったのかな? お母さんに?)
「では、本当にただの思いつきですよ……」
私は先ほどの下での話を、もう一度ゆっくりと説明した。
そうすると今度は、源さんと組合長、そして副組合長の三者間で熱い討論が始まってしまった。
私はすっかり放置され、部屋にやってきてすぐに秘書的な女性が淹れてくれたお茶をすすっていたが、どうにもお腹の空き具合が収まらない。
そこで私はひらめいた。
(こっちの世界に来る前に買っておいた、食パンとマーガリンとジャムがあったはず。あれを食べよう。お皿は、木目調のちょっといいお盆をこの間ドラッグストア機能で買ってあったからそれでいいし、スプーンもフォークと一緒に何本かある。もう待てない、食べちゃえ!)
私は亜空間収納から、この世界仕様に馴染んだ包装の食パン、マーガリン、ジャムを取り出した。スプーンを使って2枚のパンに手際よくマーガリンとジャムを塗り、いざ「大口を開けてかぶりつこう」とした、その時――。
凄まじい視線を感じた。
顔を上げると、むさいおじさまたちが全員、ものすごいよだれを垂らしながらこちらを凝視している。ただし、風ちゃんはかわいいお顔よ。
(はいはい、わかりましたよ。この貴重な8枚切りのふんわり食パンを食べたいんですね。仕方ないですねぇ)
「あの、皆さんも食べますか?」
私がそう聞くと、全員が凄い勢いで、首が取れるんじゃないかというほど縦にブンブンと振った。
仕方がないので、おじさま方には1枚ずつ、風ちゃんには可愛いから2枚、そして私はもちろん2枚を死守して、さっそく食べ始めた。
みんなものすごい勢いで、かつ味わうようにモグモグと食べている。そして、私の残りのパンを物欲しそうな目でチラチラと見てくるが、絶対に渡さないぞ。
私だってお腹が空いているのだ。そもそも、あなたたちの付き合いをしてあげているんだからね、ハハハ!
あまりの美味しさに、組合長が「またすごいものを持ってきやがったな……こんな極上の甘味、食べたことがないぞ」と感動している。(あなた口調が…紳士じゃなかったんですか?)
私はパンを飲み込みながら、「近日中に、多分きっと『文明開花』の定番メニューになるんじゃないですかね? わからないけど……」と適当に返しておいた。
(まあ、砂糖が作れるようになったし、ジャムのレシピもそのうち教えとこうか。柔らかいパンの作り方も教えなきゃいけないし……って、私、うっかり飯テロの布教活動までしなきゃいけないの? 酵母の作り方もだ……。懐中時計ちゃん、私の検索機能ちゃん、頑張って働いておくれよ!)
やがて、みんなが再び仕事の会議モードに入り始めた。
(もう飽きた。退屈だ……。早く帰って、文明開花のまかないが食べたい)
私のパンをみんなで分かち合ったんだから、これでもう大義名分はある。
私は源さんにタイミングを見計らって声をかけた。
「あの、そろそろ瞳さんの……」
源さんたちははっとしたように我に返り、「そうだな! 一旦、暁ちゃんを送っていかないと瞳さんが……」「暁ちゃん、後のことは俺たちに任せてくれるってことでいいかな?」と慌てて言った。
「はい、もちろん面倒なことは……すべてお任せします!」
私はとびきり元気よく返事をし、源さんの車で送ってもらって、無事に文明開花へと帰還することができた。
まだ午前中だというのに、胃袋は空いてるのにお腹いっぱいな半日だった。
……次は、早く本当のスローライフを送りたい。1人でゆっくりできる、自分だけのマイホームが心底ほしいなぁ。




