第26話:またまたフラグですか? はい、そうです。懲りないんですか? 懲りてます!(※ただし不労所得が増えるので良しとします)
みんなで地下の倉庫へと向かった。
倉庫は学校の体育館の2倍ほどもありそうな広さだ。
「この区画にあるものは危険なものも含まれているから渡せないが、他のものは全部譲るよ。ただ、さすがにこれだけの量を一度に持ち出すのは無理だろうが……」
組合長さんが心配そうに言うのを聞きながら、私はニヤリと笑った。
「本当に、ここ以外は全部いただいていいんですね?」
そして、両腕を大きく掲げ、わざとらしく「ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ……!」と謎の呪文を唱えた。
(もちろん、実際には亜空間収納スキルを使うだけで、こんな恥ずかしい呪文は一切不要ですが、パフォーマンスですよ。ほほほほほ)
その瞬間、床から天井までギッシリ詰まっていた物が、一瞬にして綺麗さっぱり消え去った。
「「「「「トゥ――ッ!?」」」」」
全員がポカーンと間抜けな顔で口を開けて固まっている。
(……いくらなんでも、やりすぎたかしら? さあ発動せよ、私の究極スキル・全力のごまかし!)
私は彼らの目の前で、パンパンと軽快に手を2回叩いた。
「今の現象は、ここだけの秘密でお願いします! 私の修行に関わることですし、今はまだ身バレしたくないので、詳しいことは一切聞かないでください。もし聞き出そうものなら……わかりますよね?」
ぐっと低く脅すような声を出すと、全員が「「「「ハイっ!」」」」と見事な直立不動で良いお返事をしてくれた。
(私ってば、なんて説得力があるのかしら。ほほほほほ)
「では皆様、私のカードをいただいて帰りましょうか。そろそろお昼で、お腹も空いてきましたし」
私の言葉に、みんなが無言のまま、魂が抜けたような顔で「うん、うん……」とうなずいている。放心状態のまま再び組合長の部屋へ戻ろうと、ぞろぞろと階段を上がり始めた、その時だった。
1人の男性が青い顔をして、慌てて組合長に駆け寄ってきた。
「組合長、大変です! また政府から無茶振りが届きました。地方の蒸気機関のエネルギーがだんだん足りなくなってきて、このままだと大問題になるそうです。どうしましょう!」
「副組合長、それは一体どういうことだ? さっき私の代わりに会議に出席していたろ?……」
「そうなんです、そこでまた無茶を押し付けられて……」
「最近、地方の蒸気機関のエネルギーが目減りしているとは噂で聞いていたが、まさかそこまで深刻とはな……」
すると、源さんが頭を抱えながらぼやいた。
「蒸気機関車の件でバタバタが終わったばかりなのに、次から次へと、全く……」
私が?と首をこてんと傾けると、風ちゃんがこっそり耳打ちしてくれた。
いま地方では、若者たちがどんどんこのプラエクスのような大都市に流れ込んできており、魔石に魔力を溜める人手自体が激減しているらしい。そのせいで、深刻なエネルギー枯渇問題に陥っているのだとか。
私はそこで、この世界に来る前のゴールデンウィークを思い出した。
家でゴロゴロしながらダラダラとテレビを眺めていたときのことだ。日本もエネルギー不足が問題になっていて、「自然エネルギーを見直そう。日本には世界第3位の地熱エネルギーが眠っている」というニュースをやっていた。なんでも、新エネルギー技術である「クローズドループ」を用いた地熱発電で、日本のメーカーが世界一のシェアを誇っているとか何とか。
(さすが私の優秀な脳みそ! うなれ、記憶の力!)
「あの、地方って言ったら温泉もあちこちにあるし、日本中……どこでも地面の下は熱いはずですよね。なんでそれを活用しないんですかね?」
私は無意識にぽそっと呟いた。
「地面の下の熱を利用するなら、地熱のある場所にパイプを差し込んで水を送り込み、発生した蒸気の力でタービンを回せば、いくらでもエネルギーが作れるのに……。」(あ、これ地熱発電のことだから電気じゃなくて蒸気だけで何か魔石の代わりできるのかな?まぁ、いっか)
その瞬間、一斉にみんなの視線が私に突き刺さった。
そして、むさいおじさまっ…いや、男性陣が私の顔に急接近してくる。
(風ちゃんの顔は可愛いから許すけど、おじさまたちはちょっと近い!)
「「「「「今、何て言った!? もう一度、最初から詳しく説明してみろ!(説明してみて!)」」」」」
全員がすごい剣幕で迫ってくる。
(皆さん、いつの間に事前打ち合わせでもしていたんですか?声がきれいに揃ってますよ)
私はそのままドナドナと、再び組合長の部屋へと連行されていったのだった。
(あれ……? 私、また何か盛大にフラグを立てちゃいましたか?)




