第20話:私は押してはいけない3つのボタンを押してしまった……。助けて〜!(あるある、ワクワク、大歓喜!?)
「「「「こんばんはー」」」」
「「「こんばんは」」」
「時代屋さん、お帰りなさい。ずいぶん帰ってくるの遅かったじゃないですか」
「いやいやいや今回は、今までの蒸気機関の常識を覆すような画期的な発見があったんだよ! それに新しいスタイルの蒸気機関車の試作でもう大盛り上がりでさぁ」
(新たな時代の夜明けぜよ〜!)
「それで、とりあえず一区切りついたから帰ってきたんだよ。暁ちゃんにもちょっと話したいこともあるし」
「わたし? ですか?」
私は自分の鼻を人差し指でツンと指し示した。
「そうなんだ、それはね……」
「立ち話もなんですから、他にお客様もいないし、座って喋ったほうがいいですよ」
と、瞳さんは有無を言わさずみんなを客席の方へと促した。当然、時代屋の人たちだけでなく、文明開花の人たちも全員揃いだす。
(文明開花&時代屋の合同戦略会議はじまるよ〜!)
「時代屋さんたちは何か夕飯食べたんですか? お腹空いてませんか?」
「あぁ、大丈夫だよ、ありがとう」
「話が長くなりそうだし、みんなの分のお茶を入れてきますね。私が戻ってくるまでちょっと待っててくださいね、話を先に進めないでくださいね!」
瞳さんはそれはそれは素晴らしい笑顔でキッチンへと引っ込んでいった。その間、みんなきれいに無言である。
すぐに瞳さんが戻ってくると、いよいよ本題が始まった。
まず、源さんが口を開く。
「今回は暁ちゃん、本当すまんな勝手に俺たちだけで話進めて……じゃなくて、ありがとなぁ! がさきだな。暁ちゃんの思いつきのおかげで、蒸気機関車の改善が飛躍的にできたよ」
(はいはいはいはい、お約束のフラグ回収はいはいはい!)
「そうなんですか、それはよかったです! でも私、ただ自分が思いついたことを口走っただけだから、何にもしてないですよ」
そうすると、今度は元さんがうなずく。
「あの思いつきは、誰も考えられなかったことだよ。あんな発想、普通はなかなかできない」
さらに風ちゃんがこう続けた。
「私、周りから『天才、天才』って言われてて少し調子に乗ってたみたい。あんな画期的な発想、私には絶対出てこないもん。すごく勉強になったよ!」
「いやいや、ほんとに思いつきを喋っただけだから! 気まぐれでみんなを混乱させちゃって……」
(ありがとう、元の世界の天才小学生たちよ……! あなたたちの知識は謎の技術となって、この異世界で語り継がれていくだろう……なんちゃって!)
「それで、特許なんだけどさ。時代屋と暁ちゃんの共同開発として申請したからね」
「へっ!? 私、何にもしてないんですよ! それに変に目立ちたくないんです!」
(でも、不労収入カモンカモン!)
「大丈夫だよ。蒸気機関の開発に関して圧力をかけたり、良からぬことをしようものなら、女神ヴォルプタス様の怒りでバチが当たるからな!」
(でたー! ゴスロリちゃん!)
「そうそう、誠心誠意・誠実がもっとうだからね!」
「蒸気機関組合のところに、暁ちゃんもなるべく早く登録に行こう。組合長もぜひ会いたいって言ってたしさぁ」
「えー、それってめんどくさいことじゃないですか。それは勘弁なんですけど……」
「大丈夫だよ。組合長は、今回の少し停滞気味だった業界に風穴を開けた君にお礼をしたいんだってさ」
「ワカリマシタ……。理さん、瞳さん、明日ちょっと抜け出して行ってきていいですか?」
「あー、全然大丈夫だよ」
「師匠、さすがです!」
(そこはお姉ちゃんにしとこうよ! 文明開花の人だけじゃないんだからさ、花ちゃん!)
「というわけで時代屋さん、明日だったら大丈夫です」
「じゃぁ、明日行こう! そう決まれば、今日はそろそろ帰るか」
みんなが一度立ち上がろうとしたその時、私はふと思い付いたことを尋ねた。
「あの、時代屋さん! 私の特許料がいくら入るかはわからないけれど、特許料が入る前から、もし可能なら注文したいものがあるんですけど……大丈夫ですかね?」
「うちの工房は結構人気でね、本来は飛び込みの客の注文は受けないんだけど……暁ちゃんならもちろんいいよ。どんなもんが欲しいんだい?」
「プラエクスの街を歩いてて、よく『オートバイ』っていうんですか? 二輪の乗り物を見かけるんですけど、田舎から出てきたもんだからよくわかんないんですよね」
「あぁ、オートバイだね。その呼び方で合ってるよ」
「あれって、ああいう形のものが普通なんですか?」
「どういう意味だい?」
「だってあれって、私みたいなスカートだとまたぐのに恥ずかしいじゃないですか! だから、足を揃えて乗れる形に改良できないかなって。それと、横にほら、他の人をのせたり、荷物が置けるような補助的な……サイドカー?みたいなやつをつけられないかなぁって思って!」
そう言った途端、時代屋の3人の顔つきがガラリと変わった。
「行くぞーーっ!!」
と、出口に向かって源さんと元さんがいきなり走り出す。風ちゃんは私の手首をしっかりと掴んで引っ張った。
「「「「エッ!?」」」」
(あ〜れ〜、お許しくださいお代官様って、いつの時代じゃい! こりゃまた失礼!)
「風ちゃん、ちょっと引っ張らないで! 痛い痛い、自分で歩くから! それに、こんな夜遅くに……」
(私は……押してはいけないスイッチを3つも押してしまったらしい……!)
そうすると、苦笑いを浮かべながら瞳さんが言った。
「そうなっちゃうと、あの人たちも止まらないからね……気をつけていってらっしゃい! っていうか、今日中に寝させてもらえるかどうかも怪しいわよ……とりあえず、がんばって!」
(そんな無慈悲な〜! まだ話を続けるんか〜い!)
文明開花の3人に、引きつった顔でヒラヒラと手を振られながら、私はそのまま隣の時代屋へと力強く引っ張られていったのだった。
(出ました、出ました、あるあるフラグ回収! でもね、私はまだ13歳、睡眠が大切なんです。背が伸びなくなったら、時代屋さんを恨みますぞい……!ぽっちゃりにはならないけどさ)




