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大正浪漫なスチームパンクの蒸気都市で、ドラッグストア機能とポイントを駆使してスローライフを送ります  作者: Fos B


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第2話:大正ロマンと歯車と私。……いや、どこここ!?プラエスクって洋風ですか?

私は蒸気が薄れていくのと同時に、周りをキョロキョロと見回した。

わー、ほんとに大正浪漫だけど、スチームパンクなんだ。周りの人の服装は、男の人はスチームパンク風やシャーロック・ホームズみたいな服装、ちょっといきな和装だったり。女の人はやっぱりスチームパンクっぽい人や鹿鳴館ぽい豪華なドレス、はいからさんみたいな人もいる。もちろん和風の人もいるし、昔何かで見たモガ(モダンガール)みたいなぱっつんおかっぱの人もいるなぁ。みんなおしゃれだ。

蒸気機関車も時計塔も、プシュプシュと勢いよく蒸気を出している。そして、いつか社会科見学で見た電車の車両整備工場や、自動車整備工場の油の匂いがかすかに鼻を刺激した。……うーん、あんまり好きじゃない匂いだな。まぁ、そのうち慣れるのかな。

はっとして、自分の服装を見回した。周りの人と比べて違和感がないか、すごく心配になったからだ。自分の見える範囲では大丈夫そうだけど、やっぱり気になって歩道のショーウインドウのガラスに映る自分を確認してみると……。

――なんですと? これはスチパンロリではないですか! ゴスロリの女神様の趣味そのままじゃないですか〜!

まぁ、街の雰囲気に馴染んでるからいいんだけどさ。日本じゃ絶対着ない服だよ! スチパンロリ(スチームパンク風ロリータ)の甘甘ワンピース。私のスチパンロリのワンピは濃い紺色? 深い藍色? で、エンボス加工のような凸凹の歯車模様がスカートと帽子に描かれていて、革風の肩掛けカバンもまたこの世界らしく、表面に懐中時計模様のロゴが真ん中に大きくバーンとあって、上の方にはネジの装飾が埋め込まれているんだよね。腰にはこの世界らしく太い金属のチェーンが巻かれて、それにスパナだの歯車だの釘だのいろいろなものがぶら下がっているんだよね。元の日本だったら違和感しかないよね。どこの危ない人だって話だよ。絶対私だったら近づきたくないよね。

でも、ごつくないんだよね。うまい具合に甘甘スチパンロリのワンピースと革風の帽子にゴーグル、革風の編み上げブーツも両方とも濃茶でかっこいいんだよね。うまい具合に融合していて良い味出してるんだよ。それに、私ってばとっても似合ってるしね。ウヒヒひひ?

そして、この髪型はなんだろう。卑弥呼の時代の男性のような、ちょっと変わったお団子ヘア? かわいいのか? ほんとにこれかわいいのか? ……まぁ、似合ってて可愛いからいっか!

そんなことを考えていると、急に右手に持っていた大きな懐中時計が、よく聞き慣れた着信音を響かせた。私は慌てて周りを見たけれど、他の人には聞こえていないみたいだ。とりあえず落ち着いて調べなきゃと思って、近くのベンチに腰掛けた。

そういえば、これって前にテレビで見た昭和のアニメの「変身コンパクト」に似てるなぁ。絶対懐中時計の大きさじゃないよね……と思いながら、パカッとフタを開く。

すると、もやもやとした霧の中から、A4サイズの画面が浮かび上がってメッセージが流れ出した。

『はいはい暁ちゃん、無事にそっちに着いた? 服かわいいでしょ? 絶対かわいいでしょ? いい感じでしょ?』

(ウザ!)

『そんなあなたに朗報です。そのスチパンロリの服は体温自動調整、修復機能付き、汚れ防止もついてるし、なんと成長しても身長に合わせて伸縮してくれるんですよ! さらに、私特製の防御機能もついてるから物理も魔法も一切効かないの! なんて優しい私なんでしょう、ねぇ、いいでしょう、いいでしょう!』

(一生この1着の服を着ろってことですか!? 私もおしゃれしたいんですが、一応私も女の子なんですけど!)

『あのね、さっき暁ちゃんが私に抱きつくから時間がなくて、大切なことを言えなかったの。何かっていうとね、まずそこの星の名前も言ってなかったよね。「デレクトアティオ(delectatio)」よ! 意味は気晴らし、喜び、楽しみ。星のイメージは、日々の生活の中で心から楽しむ時間や趣味を連想させる、優雅で美しい響きにしてみたの。ねっ、いいでしょ?』

(はいはい)

『それで、私はゴスロリ女神じゃなくて「ヴォルプタス(voluptas)」ね。意味は喜び、楽しみ、歓楽。楽しいことや好きな趣味に没頭しているときのワクワクした楽しさを表してるのよ。この世界は、私の趣味で作ってるからね!』

(なんですと!? ゴスロリの趣味のために、私はこの世界に飛ばされたんかい!)

『ちなみに、ゴスロリじゃなくてヴォルプタスね』

(ゴスロリって言った? 私の心の声が聞こえてるの? もしかしてプライバシーの侵害だわ)

『あっ、ちなみにこのメッセージに返信はできないからね。もっと暁ちゃんが色々とレベル上げれば、もしかしたら返信して私が答えられるかもしれないけど、それはわからないけどね……』

(レベルがあるんかい!)

『レベルってあるかどうか、私ちょっとあやふやなのよね。その辺はちょっと疲れすぎちゃって、居眠りしながら設定しちゃったからハハハ……。まぁ、いろいろ試してみて!』

(適当すぎない!?)

『それでね、まぁあなたが知っているチートの知識は一緒だから、省いても平気よね』

(いろんなパターンがあるんだから、ちゃんと言ってくれないと困るんですけど!)

『まぁ、無限収納庫は頭の中に思い浮かべれば中に入ってるものはわかるし、大体目視できるところの物だったらどんな大きさでも収納できるし、またその場所にもカバンの中から出せるしね。時間の経過もないからね。ただし、生きたものは入れられないわよ。植物は大丈夫だけどね!』

『それから、そうそう1番肝心なこと、また言うの忘れてた。あなたはこっちに連れてきたときに、半分になったの』

(どういう意味ですか!? 怖い怖い!)

『簡単に言うと、こちらに来た魂と、日本に残った魂が半分ずつになったのよ』

(私、生きてるの!?)

『大丈夫大丈夫、ちゃんと生きてるから』

(やっぱり心の中…読んでんじゃねーよ!)

『それで地球に残った子は、そのまま何事もなかったようにお家に帰ったのね。で、魂の半分は地球側の私のお友達に頼んで妖術で補ってるから、これから天寿を全うするまで健康そのものよ! せめてものお礼ね』

(勝手に半分にしておいて、それがお礼ってどういうこと!)

『残ったあなたは何も知らないけど、半分にしちゃったからさ〜』

(またまた後出しだよ! てか、向こうの私、何も知らないんだよね……)

『それでこっちに来た暁ちゃんも、こっちの魔力で補ってるから魔力量は結構あるのよ。いろんなことができるからね。あと、向こうの子と一緒で健康優良児ね。困らないわね! こっちの人は魔力が多い人もいるけど、大体が今少ない人ばっかりなんだよね。まぁあなた位の人も多いかも? 目立たないから大丈夫大丈夫!』

(疑問系なんだけど……! 不安しかないんだけど!)

『それと、治安はバッチリ安心だし、あなたには私の加護がついてるから滅多な事は起きないわよ』

(1番安心できないんですが!!)

『あと半分になるときに、あなたが両腕に持っていた荷物も半分に分かれちゃったからさ。持ってたリュックはその「無限収納庫のカバン」になってるし、スマホはその懐中時計になってるし。ちなみにこっちだと「羅針盤」っていうふうに見えるからね。マップの代わりにお店で羅針盤が売られてるから、人前で使っても大丈夫よ』

(はいはい。そうですか)

『リュックの中に入ってた水筒は、やっぱり半分になって「無限水筒」になっちゃった! いくら飲んでも減らないし、冷たくて日本のおいしい天然水が出てくるわよ。氷もちょっと入ってたからそのまま、いくら使っても常に入ってるの。暖かいのが欲しかったら魔力を込めれば切り替わるから、まぁ試してみて!』

『あと中に入ってた熱中症対策の飴もそのまま入っていて、それもいくら食べても減らない「塩飴」になっちゃったけど、まぁいくらでも好きなものが懐中時計ショッピング(ドラッグストア機能)で買えるから!』

『マッ、とにかく色々そのまんま無限収納庫の中に入ってあるからね。あ、半分になっちゃった買い物したものは、異界を通ってきても普通の力しかないけど、あなたが懐中時計ショッピング(ドラッグストア機能)をしたものは異界を通るからちょっと力が強くなるかもしれないから、そこは気をつけてね』

(その調整はセルフサービスですか……?)

『まぁ、今のところはそんなものかしら。あと、さっきちょっと言ったけど、もうちょっとまた慣れてあなたの力がつけば、私の像がある所に来れば話せるようになるかも? 結構あちこち広場とかにあるのよ。美しい真っ白い大理石でできてるからすぐわかると思うわ。私ったら人気者で困っちゃう。でも当分無理だからね、話せないと思うよ。あとはそうそう、言語はね、日本語だから大丈夫。読み書きも日本語そのまんまだから。あと、国の名前も「日本」のままなんだから!』

(それなのに、都市名は洋風なんですね……)

『「プラエスク」が1番栄えている都市だからね。日本の中で中心地だから、あなたがいた世界の日本とも変わらない生活ができるわよ。でもちょっと地方に行けば大正時代の生活そのものだから、ちょっと不便かもね。だから、あなたはしばらくはそこのプラエスクの中にいたほうが生活が楽よ。でも、そういう地方を活性化させたいのよね。あんまりにも大都市と地方で違いすぎるからさ!』(もう、お腹いっぱいですよ)

『あと、お金は日本と同じ! もうめんどくさいからそういう設定にしたのよ。機械産業とかは進んでないわけじゃないけど……ただね。あんまりあなたがいた日本のように食文化は進んでないのよね。砂糖が貴重だから、甘味とか調味料とかはあんまり文化が進んでないのよね』

(飯テロですか!? 私は味噌や醤油の作り方はわかりませんよ!)

『そういうのも進めて欲しいのよね。塩は普通に流通して、醤油や味噌もあるけどね。お米もちゃんとあるのよ、日本と同じ設定だから出汁の文化もあるし! ただ大正時代位の食生活と思ってくれればいいかな。地方に行けば下手をすると江戸時代位かもしれないけど、飯まずではないから安心して! ハハハ、それはわからないけど! まぁ頑張ってね』

(適当すぎる!)

『あと基本は日本に住んでるのは日本人だけど、外国人の人も結構いるからね。元の世界と一緒で大陸は大体一緒よ。住んでる人たちも一緒。ただ大正と同じ位の設定だと思って。自由に船とか飛行船で国も行き来できるけど、それなりにお金がかかるからね。お金を稼げるようになってから外国に行ってみて』

(エルフとかドワーフとかはいないのかい?)

『もうややこしいから、私、人間だけにしてるからね! あと動物とか前の世界と一緒ね。とにかく趣味で楽しむ範囲でやってるからさぁ、あと、争い事とか面倒くさい面倒くさい! そんなめんどっちいシステムは全カットしたから安心してね!平和だからね。基本あんまり難しい事はしないからね』

(はあ〜)

『魔法は簡単で、とにかくイメージするだけ! 詠唱とか何にもいらないから、自分がイメージして、イメージ通りにすればいいからね。ただ、魔力を枯渇させないようにね。使いすぎると動けなくなるから気をつけて! まぁそのうちいい感じで覚えるんじゃないかしら、まぁ頑張って!』

『オット! もう一つ忘れてた。なんでこんな世界になっちゃったかって言うと、あなたの前に転移した子がスチームパンク好きだったのよ。私は大正浪漫が好きだからさ、そういう路線で行こうと思ったの。なんでスチームパンク好きを間違って転移させちゃったかなって、ちょびっと後悔したわ。こんなわけわかんない世界になっちゃってさ!』

(間違ってって……)

『それでデレクトアティオの人間はいきなり蒸気機関関係で発展しちゃったもんだから、もう満足しちゃったことだし、これ以上あんまり必要ないと思っちゃったみたいでさぁ。それで困っちゃったの。適当にドラッグストアによく来る前任者を選んじゃったんだけど……。よく見たらその子、ドラッグストアが好きなわけじゃなくて、毎日飲み物買いに来ただけだったみたいね。ちゃんと見てなかった私もいけないんだけどさ! ハハハ……』

(なんていい加減な女神様だ……!)

『じゃあね、適当に楽しんで、バイバイ!』

言いたいことだけ文字が流れていき、質問も何もできなかった。

絶対私の心の声を聞いていたに違いないけれど……。

そういえば、とりあえず喉が渇いた。

私は頭の中で無限収納庫を呼び出し、水筒を取り出して冷たい水を飲んでホッと一息つく。

情報が盛りだくさんすぎて、次何をすればいいかわからなくなってしまった暁だった。

――って、ツッコミ疲れもあるかもしれない!

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