第12話:チートですか? はいそうです。不労収入です。
私はとぼとぼと「文明開花」に帰ってきた。
「ただいま帰りましたー。お昼、届けてきましたけど……なんか皆さん忙しそうというか、私が話しかけたら急に3人でどっか行っちゃったんで、お弁当はそのまま置いてきました」
「あの人たちはいつもあんな感じだから、お腹が空けば食べるわよ。ほかほか箱(保温器)もあるから温められるしね」
「いつもあんななんですかなんか。集中すると周りがまったく見えなくなっちゃうみたいで、私なんか存在ごと忘れられちゃいましたよ。ハハハ……」
「そういえば、夫から何か聞いたかしら?」
「え? 何ですか?」
「あら、またあの人ったら……まだ話してないのね。ちょっと待ってて、今呼んでくるから。客席には誰もいないし、そこに座ってて!」
と、瞳さんはキッチンへ理さんを呼びに行ってしまった。
私は言われた通りテーブルに座って待っていると、すぐに理さんがやってきた。瞳さんも温かいお茶を3人分持って戻ってきた。
そして、理さんが改まって頭を下げた。
「暁ちゃん、改めてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう! カレーと唐揚げのおかげで、この『文明開花』がこのプラエクスでも有名になって、ついには街の新聞にも載っちゃったんだ。本当にありがとうな!」
「暁ちゃん、ほんとにありがとうねぇ」
「いえいえ、そんな……」
「それでね、カレーと唐揚げのレシピなんだけれども……俺が所属している『料理組合』に登録してきたんだ。秘伝のレシピはちゃんと特許申請しておかないといけないからね。だから、俺と暁ちゃんの共同名義で申請しておいたから!」
(始まったよ、始まったよー! これぞ異世界定番のイベント発生……いや、もう手続き終わってるのかよ!)
「えっ、でも私はざっとしか材料と作り方を教えてないですし、特許なんてそんな……」
「いやいや、暁ちゃんのあのレシピがないと、とてもあんな美味いものは作れなかったよ! それに、ちゃんと暁ちゃんの名前を入れておかないと、女神ヴォルプタス様から天罰が下るからね」
「天罰ですか!?」
「そうだよ。女神ヴォルプタス様は『誠心誠意・誠実』がモットーだからね」
(へー、ゴスロリちゃん(女神ヴォルプタス)たら、意外と『デレクトアティオ』で神聖でちゃんとした教えっぽく、みんなにまともな女神様として敬われてるじゃん。それにしても、日本なのに、漢字と洋風が混じった混沌とした世界で面白いね。やるじゃん、ゴスロリ!!)
「わかりました……。で、私は一体どうすればいいんですか?」
「ああ、今度時間のあるときに、街の料理組合に行って口座を開設してもらえるかな? そこに毎月、特許料がチャリンチャリンと入るからね!」
(はいはいはいはい、キターーーッ!! これぞ待ちに待ったスローライフの最強収入源、不労所得! これで毎日働かずにウハウハ生活だぞ……!
しかし、それにしてもいつになったら、スチパンに欠かせない『釘』とか『歯車』とかが手に入るんだろう? 今ポイントが結構あるけど、やっぱりできるだけ懐中時計ショップのために貯めとかなきゃ。ご利用は計画的にだからね。今度、お隣の時代屋の源さんにでも聞いてみようっと)
「じゃあ、今度理さんが時間のあるときに、組合まで一緒に行ってもらえますか?」
「わかった! 俺が行ってもいいし、瞳が付き添うのでも大丈夫だよ。もう料理組合の方には話を通してあるからさ」
「了解です!!」
こうして、暁の夢の不労収入スローライフ生活が、いよいよ始まるのであった――。
……なんちって!




