表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/30

第23話 白薔薇、来襲


 白薔薇(しろばら)は、夜明け前のいちばん暗い刻に来た。


 最初に動いたのは、領境の警鐘だった。続いて砦の東で、仕掛けておいた罠の一つが作動した音。消された数字――感情を殺した刺客たちが、闇の中を滑るように忍び寄ってくるのが、感覚でわかる。

 その数、十二。

 一人ひとりが黒鴉(くろがらす)と同等の精鋭だ。まともにやれば、領兵五十でも足りない。

 だが、こちらはまともにはやらない。


「来たぞ。配置につけ」

 俺の合図で、領兵が動いた。

 白薔薇は予想どおり、二手に分かれた。本命と、陽動。シャルロッテの読みは正確だった。

 俺は、本命の一団がこちらの「用意した道」へ誘い込まれていくのを見ていた。彼らが「ここから入れる」と判断した、たった一つの隘路。その両側に、領兵を伏せてある。

 刺客たちが隘路に踏み込んだ、その瞬間。

「今だ」

 仕掛けが発動した。

 頭上から、丸太と土嚢が落ち、隘路を塞いだ。土煙が上がる。退路を断たれた刺客の肩が動くたび、俺は先に声を飛ばした。消された数字でも、体の予兆までは消せない。


 「弐ノ型――先見の太刀(せんけんのたち)


 それを一人で振るう代わりに、読んだ予兆をそのまま号令に変えて、五十の槍に振らせる。

「右の壁。二人、上へ逃げる」

 領兵の槍が、そこへ突き出される。

 暗殺者は、闇と不意打ちでこそ真価を発揮する。その二つを奪えば、ただの手練れの剣士に過ぎない。


 戦況は互角――いや、こちらが押していた。

 シャルロッテも戦っていた。後方に回り込もうとする刺客の前に立ちはだかり、彼女自身の暗殺術でそれを迎え撃つ。


散り百合(ちりゆり)


 かつての同胞を相手にしても、短剣の軌道は鈍らない。


 いける。このまま押し切れる。

 そう思った矢先だった。


 砦の中央。混戦を抜けて、一人の男が姿を現した。

 白薔薇の首領。

 他の刺客とは格が違った。頭上の数字は消されている。だが、その立ち姿から滲む圧は、黒鴉の比ではない。

 首領は戦場をゆっくりと見渡し――そして、まっすぐにシャルロッテを見た。


白百合(しろゆり)

 低い声だった。

「随分と辺境の水が合ったようだな。だが、忘れたか。お前を『道具』に仕立て上げたのは、公爵だ」

 首領は、自分の手のひらを開いて見せた。

 そこには、白百合の紋様が彫られていた。シャルロッテのうなじと、同じ。

「その首の刻印(こくいん)が」

 首領の指が、その紋様をなぞった。

「お前に、それを思い出させる」

 刹那。

 シャルロッテが苦悶の声を上げて、膝をついた。

 彼女のうなじの刻印が、灼けるように青く輝き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ