80 ビンゴ大会
竣工式という名の食事会が始まってから、三時間以上が経過した。
肉も飲料も残り少なく、デザートにいたってはすでに品切れだ。
満腹になった者とイイ感じに酔いが回った者が大半で、宴もたけなわといった空気が広がっている。
なので、締めよう。
「皆さん、本日は誠にありがとうございました。皆さんのおかげでこんな立派な家が完成し、この地に住めることを心より感謝します」
俺が頭を下げると、大きな拍手が鳴り響いた。
「最後になりますが、皆さんにおみやげを用意させていただきました」
『イヤッフ~』
静かだった職人たちが、恒例の歓喜の舞を踊り出した。
けど、腹が重たい者と眠い者が混じっていて、盆踊りくらいの勢いしかない。
「パルマ、例のモノを配ってくれ」
「かしこまりました」
縦五マス横五マスある枠の中に、ランダムに数字が書かれた紙を手渡していく。
「全員に行き届きましたね? では、ルールを説明します。今から一枚ずつこの箱から紙を取り出し、そこに書いてある数字を読み上げます。その数字がお手元の紙にあればマークをし、縦横斜めで五マス一列揃った方は、手を上げてください。先着一〇名様に、豪華景品を差し上げます。それ以外の方にも参加賞を差し上げますので、ケンカはダメです。ということで、さっそく始めましょう!」
『イ~ッヤッフッ~ッ!』
箱の中から、一枚引いた。
そこに記されていた数字は……
「一九番!」
「フ~ッ」
「アアアッ」
喜びと悲しみが沸き上がる。
それを横目に、もう一枚。
「三七番!」
「ヒャッフ~」
「ハアアアッ」
まだ二回なのに、もう揃った気でいる者もいれば、この世の終わりのような顔をしている者もいる。
リアクション過多な気もしないではないが、盛り上がってくれるなら問題ない。
「二番!」
「ヒヤッハ~ッ!」
「ハアアアン」
「二七番!」
「ゲェヤッハ~ッ!」
「オロロ~ン」
「二二番!」
……
最短当選者は現れなかった。
と同時に、グッと緊張感が増した気がする。
ガサガサガサ
箱の中をかき混ぜ、まだまだあるぞ、とアピールする。
ごくっ
だれかのツバを呑み込む音が響くくらい、会場は静寂に包まれていた。
「一〇番!」
「わん!」
ライナが俺のもとに駆け寄ってきた。
その口には、配った紙がくわえられている。
「失礼します……当選です!」
番号を確認したパルマが、カランカランとハンドベルを鳴らした。
喜ばしいことだが、複雑でもある。
一等の景品は、俺が錬金した大工道具一式なのだ。
「ライナ。これいるか?」
静かにかぶりを振られた。
「だよな。んじゃ、欲しいモノ選んでいいぞ」
「わん」
迷いなく塊肉が選ばれた。
「それでいいんだな?」
「わん!」
「よしわかった。んじゃ、これが欲しいときは俺かパルマにアピールしてくれ。それとも、いますぐ食べるか?」
「わん」
保管していいようだ。
「では、冷蔵庫に入れておきますね」
「ありがとう」
「わん」
「お気になさらず、続けてください」
お言葉に甘えよう。
「七二番!」
「イヤッフ~ッ!」
大工さんに当たりが出た。
「おめでとうございます!」
確認も済み、一等の景品を手渡した。
職人さんはのこぎりを持った右手を突き上げ、涙を流すほど喜んでくれた。
中には服の裾を噛んで悔しがる同僚もいたが、大半は同じように涙しながら拍手している。
ここまで喜んでくれるなら、作った甲斐もあるというものだ。




