79 竣工式という名の食事会
「これより、竣工式を行います」
俺の宣言を聞いて、職人さんたちの歓喜の舞が止まった。
期待のこもった瞳が、こっちを見ている。
任せなさい。
応えてみせようじゃないか。
「パルマ、例のモノを頼む」
「はい」
掘っ立て小屋の裏から、パルマが大きな箱を積んだ台車を押してきた。
「わんわん」
鼻が利くライナたちは、箱の中身がわかったようだ。
「早速ですが、バーベキューを開始します」
『イヤッフ~!』
職人さんたちの歓喜の舞が再開された。
それを横目に、俺とパルマは用意した串肉を火にかける。
最初のほうは軽く火を通してあるので、温め直す程度で充分だ。
「親方。ごくろうさまでした」
「いやいや、オレよりササナ様に渡してくだせえ」
「ダメです。今日の主役は、親方と職人さんたちです」
「ですが……」
「施主の好意を遠慮しないほうがいいわよ」
……
「わかりやした。いただきます。うん。うめぇ」
「それはよかった、んじゃ、職人さんもどうぞ」
『イヤッフ~!』
舞いながら一列に並ぶ職人たちに、焼きあがった串肉を次々に渡していく。
『イ~ヤッフ~ッ!!』
歓喜の舞が勢いを増している。
お口に合ったようだ。
焼いては渡す、焼いては渡すを繰り返す。
ただ、これで満足してもらっては困る。
まだまだ用意しているモノがあるのだ。
「ライナ、一っ走り頼む」
「わん」
シュタタタタ、と軽やかな足取りだが、反対だ。
けど、すぐに本人も気づいたようだ。
「わん!」
後方回転二回ひねりをダイナミックに決め、なにごともなかったかのように走り去った。
『おおおお』
拍手と歓声がスゴイ。
意図した演出ではないが、結果オーライだ。
「わんわん!」
あきらかに早い戻りだが、後ろにムシアラたちがいるので問題ない。
「アンナ、頼まれてたモノは用意できたぞ」
パルマのとき同様に、台車には木箱が積まれていた。
「ありがとう。では皆さん。もう一度こちらにお越しください」
『イヤッフ~』
「棟梁。何をお飲みになりますか? ビール、清酒、果汁炭酸水など、各種用意してます」
「じゃあ、ビールでお願いしやす」
「どうぞ」
「ありがとうございやす……って、なんてこったい!? キンキンじゃねえでやすか」
ざわつくのは当然だ。
氷の入っていない木箱から取り出した飲料はぬるいはずなのに、実際はその真逆なのだから。
「ふっふっふ。マジックバックを、改良した成果だ」
「保冷機能が備わってるってこと!? 信じられない」
ササナが両目を見開いている。
パルマやムシアラたちも同じリアクションだったので、俺的には新鮮味はなかった。
けど、度肝を抜けたなら満足だ。
「デザートもありますよ」
『イッヤッフッ~ッ』
こちらも好評だ。
ただ、これらはすべてムシアラたちがイスペンの職人さんたちに作ってもらったモノであり、彼らの尽力なくして成功しなかった。
ありがたい。
感謝しつつ、俺も一つ手に取った。
「なんだこれ!?」
「アンニンドウフというらしいですよ」
レアハムが言うには、あんずの種の中の核を使ったデザートらしいが、企業秘密のため詳しく教えてはくれなかったそうだ。
一口目こそおっかなびっくりだったが、甘さと芳醇な香りがすばらしく、すぐに完食してしまった。
(もう一個……)
と思ったが、数に限りがあるのでやめておいた。
今日の主役は棟梁と職人さんたちだから、彼らが満足するのが優先だ。
ポイント評価、ありがとうございます。




