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78 家が完成した

 何事も一朝一夕には進まない。

 それは錬金術や魔法だって例外じゃなかった。

 けど、コツコツ積み上げれば、必ず形になる。

 それを、棟梁たちが教えてくれた。


「よぉし。完成だ! おめえたち、よくやった!」

『イヤッフ~!!』


 親方のねぎらいに、職人たちが歓喜の舞を踊り始めた。

 喜びすぎな気がしないでもないが、それぐらい達成感に溢れているのだろう。


「うんうん。わかるぞぉ~」

「ご主人様、何に共感されているのですか?」

「素晴らしい家が完成したことを喜ぶ職人さんたち、にだな」

「なるほど。それなら同感です」

「わん」

「当初の予定を知っていると、余計に感慨深いわね」


 ササナの言う通りだ。

 錬金工房を兼ねた小さな一軒家が建つはずだったのに、俺たちの前には貴族の豪邸を思わせる立派な家がそびえ立っている。

 なぜこうなったのか。

 理由はいくつかあるのだが、一番大きいのはムシアラとレアハムの存在だ。

 諸々の手続きを終えイスペン村に移住してきた二人は、俺に挨拶をしようと魔檻の森に足を踏み入れた。

 けど、それがダメだった。

 見知らぬ人間の侵入に、ナイトウルフたちが暴れ出したのだ。

 突然の襲撃に焦ったムシアラたちが、反射的に抵抗したのもよろしくなかった。

 いや、ケガをされても困るから、それ自体はナイス判断なのだが……


(ダメだったのは、ライナだな)


 異変に気づいた俺たちはすぐに森に向かったが、興奮したライナが仲裁に入ったことをきっかけに、混乱に拍車がかかってしまった。

 俺を守ろうとパルマが魔法を使ったことも、被害を大きくした。

 混乱のるつぼは森の中だけで収まるわけもなく、建設現場にも飛び火した。

 結果、建設中の家は倒壊し、職人さんにもケガ人が出た。


「いい加減にしなさい!」


 全員が動きを止める一喝を放てるササナが現れなければ、死者も出ていただろう。

 魔族のササナをこう評すのはアレだが、天使だと思った。


「で? 何が原因でこんな大事になったの?」

「不用意に侵入したおれたちが悪かった」


 ムシアラたちは頭を下げたが、その必要はない。

 今回の騒動の原因は、不幸な偶然が重なったからだ。

 というのも、実はこの数日前に森に侵入した族がいて、一頭のナイトウルフがケガをさせられていた。

 その犯人が戻ってきたと思い、ナイトウルフたちは暴れたのだ。

 俺たちが住んでいるからと油断したムシアラたちに非がないとは言えないが、こんな事態が引きおこると予想するのもむずかしい。

 それを解決する方法として、ムシアラたちも魔檻の森に住むことになった。

 そうすれば、魔物に襲われることはないそうだ。

 ただ、そうなると家をどうするか、という話にもなる。

 ムシアラたちは「一室貸してもらえれば充分」と言うが、新婚さんにそんな肩身の狭い想いはしてほしくない。

 だからご先祖さんの家があった場所に二人の家を建てればいいと提案したのだが、全員に反対された。


「この場のトップはご主人様です。それは譲れません」


 パルマの意見はもっともだし、俺もそのつもりだ。

 だからこそ、家の大きさが重要らしい。


「大きい家に住んでいることが大事なんじゃなくて、外から見た者たちにナメられないことが大事なのよ。一目でわかる差があれば、相手もわかりやすいでしょ」


 なるほど。

 そうであるなら、異論はない。

 ということで、俺の家を大きくし、隣りに普通の一軒家を建てることになった。

 スペース的にも森を開拓しなければならず、さらに時間を要することになってしまったが、大丈夫だ。

 思い描いていたスペシャルな家を建てられることに、棟梁と職人さんたちは大いに喜び、むせび泣く者もいた。

 まさに、テンション爆上がりである。

 そこからは大きな問題もなく、今日という日を迎えられた。


「いやぁ~、本当によかった」


 支払いは怖いが、今は職人さんに感謝しよう。

 そしてそれを、形にしよう。


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