74 掘っ立て小屋を作ろう
テントに戻った俺は、あらためて強化塗料を作り始めた。
……
完成だ。
けど、量が少ない。
圧倒的に足りないのは一目瞭然で、これでは外壁すら塗れない。
「どうしたもんかな?」
「ご主人様。何を悩まれておいでですか? もしかして、炉に不具合でもありましたか?」
「いや、炉に問題はない。問題なのは、作業効率だ。こんなチマチマ作っていたんじゃ、家の完成に間に合わない」
「では、風呂敷に納めた錬金釜を使用すればよろしいのではありませんか?」
「それも一つの手ではあるんだけど、ここに据えると動かすのが大変だろ」
一種族しか入れないのだから、どうしたって魔族に頼るしかない。
けど、素材の入った錬金釜は扱いに注意が必要だ。
下手をすれば、爆発することもありうる。
「なるほど。では、職人さんの一部を借り受け、急造の作業場を作っていただくのはどうでしょう?」
テント外なら種族に左右されることはないし、俺も手伝える。
まさに天啓だ。
「よし。早速頼んでみるか」
「お供します」
「棟梁、少しだけお時間いただけますか」
「なんでやす?」
「実は、簡易的な作業場を作ってもらいたいんです」
「作業場……どの程度のもんでやすか?」
「今作っている家が完成するまでの繋ぎなので、掘っ立て小屋で充分です」
「なら、すぐ出来やすぜ」
「マジですか!?」
「ええ。基礎が充分固まるまで、大半のやつらが手持ちぶさたでやすからね」
図面を引いたり、材料や道具の確認をしている者もいるが、多くの職人は木陰で休んでいる。
「んじゃ、お願いします」
「了解でやす。お~い、手の空いてるヤツは手伝ってくれ」
「うい~っす」
ありがたいことに、多くの職人が腰を上げてくれた。
「サイズはこんなもんでいかがでやすか?」
棟梁が示した区画は、一〇坪程度。
作業場としては、充分すぎる。
「大丈夫です。それと、中央に錬金釜を据える炉をお願いします」
「サイズは?」
どう答えたものか。
マジック風呂敷に収納している錬金釜を据えたいが、アレは動かすのが大変だ。
サイズ的にはご先祖さんの家にある中くらいのが妥当だが、持ってくるにはササナの協力が不可欠だろう。
……
ダメだ。
ササナの姿がどこにもない。
要職に就いているようだから、帰ったのだろう。
しかたがない。
あきらめよう。
「あら、こっちにも何か建てるの?」
計ったかのように、ササナがライナと一緒に森から出てきた。
まさにグッドタイミングだ。
「仮の錬金小屋をお願いしたんだ」
「ああ。あの小さいのじゃ、間に合わないのね」
話が早くて助かる。
「で、相談なんだけど、中くらいの錬金釜って取ってこれるかな?」
「パルマが協力してくれるなら、大丈夫よ」
「パルマはどうだ?」
「わたしでよければ、喜んで協力させていただきます」
「ありがとう」
「礼なんていらないわ。それじゃ、パルマは連れていくわね」
両手でパルマを抱え、ササナが飛んでいった。
……
「おまたせ」
あっという間に戻ってきたパルマの腕の中には、寸胴のような錬金釜が抱かれている。
「棟梁。アレを据えられるサイズでお願いします」
「了解しやした。おい、やるぞ!」
「ういっす!」
凄まじい勢いで小屋が組み立てられていく。
数時間で完成したそれは、職人技としか表現することはできなかった。




