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73 強化塗料は職人のテンションも上げる

 粗熱を取った錬金釜を持ち、俺はテントを出た。

 ちなみに、パルマは残って食材の下処理をするそうだ。

 ありがたい。

 と同時に、料理のできるお姫様だった。


「おっ! グッドタイミングだな」


 整地を終えた職人たちがコンクリートを作るために、セメントと砂利などを混ぜている。


「棟梁。これも一緒に使ってください」

「なんでやす? それ」

「俺が作った強化塗料です」


 ……


「大丈夫なんでやすか?」


 棟梁が眉根を寄せるのは当然だ。

 基礎はなにものにも代えがたく、大事にしなければいけないモノである。

 素人に口出しされてはかなわない。

 逆の立場なら、俺もそう思う。

 けど、それを理解したうえで、自信をもってこう告げた。


「絶対に大丈夫です!」

「……わかりやした。入れてください」

「んじゃ、ドバッと入れちゃいますね」

「これですくって、少しずつでお願いしやす。いろいろ様子見たいし、調整もしたいんで」


 相手が施主であろうとも、正直に言ってくれる棟梁は本物だ。

 お互いに懸念を持ったままではいい仕事もできないし、必要以上に我を通す気のない俺も、素直に従える。


「んじゃ、入れますね」


 渡された柄杓を使い、大工たちがかき混ぜている大量のコンクリートに強化塗料を流し入れた。


「大丈夫そうでやすね」


 異臭や変色がなかったことに、棟梁が胸を撫でおろしている。

 気持ちはわかる。

 初めて使う道具や技法を試すのは、どれだけのキャリアを積んでもドキドキするモノだ。

 けど、俺は確信している。

 完成したコンクリートを目の当たりにした棟梁は、腰を抜かすだろう。



「おお! こいつはスゲェでやすな!」


 驚いてくれはしたが、腰を抜かすほどではなかった。

 残念だ。


「いやいや親方! これは革命ですぜ!」


 職人も腰は抜かさなかったが、わなわなと身体を震わせるリアクションは最高だ。


「んなこたぁ百も承知でい。こいつが流通すれば、オレたちの世界は変わるぞ」

「すまない。そんな大量に作るのは無理だ」


 チラチラこっちを見てアピールする棟梁に、俺は胸の前で両腕を交差させた。


「くっ、そうでやすよね。残念でやすが仕方ねえ。お前ら、家の建設に取り掛かるぞ!」

「おおっ!」


 気勢はいいが、あきらかに気落ちしている。

 このままでは、工事に影響が出るかもしれない。


「安心してくれ。大量には無理だが、強化塗料はこれからも作り続けるし、魔族領にも卸す」

「本当でやすか!?」

「本当だ」

『イヤッフゥ~!』


 棟梁を含めた全職人が、小躍りしている。

 ここまでテンションが上がれば、大丈夫だ。

 いや、上がりすぎてミスをしないか心配になる。


「浮かれすぎるなよ! お前ら! 完成して譲渡するまでが、オレらの仕事だぞ!」


 締めるときは締める。

 これぞまさしく、棟梁の鑑だ。


「んじゃ、あとよろしく」

『アイアイサー』


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