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71 小さな錬金釜

 朝食後。

 パルマは日用品を買いに、イスペンに出かけた。


(俺はどうするかな?)


 魔術の練習か、ライナを撫でるか、の二択しかない。

 いや、先生であるパルマがいないのだから、実質一択だ、


「遊ぶか」

「わん」


 わしゃわしゃ撫でているだけだが、ライナは喜んでいる。


「ここか。ここか。ここがいいのか」

「わふふふふ」

「朝からにぎやかね」


 ササナが現れた。


「おはよう。今日はどうしたんだ?」

「大工を連れてきたのよ」

「おはようございます。施主様」

『おはようございます!』


 ササナの後ろには、棟梁と十数人の職人さんがキレイに整列していた。

 全員が鍛えられた肉体をしており、迫力がスゴイ。


「早速ですが、どこにどれだけの豪邸(モノ)を造りますか?」


 鼻息荒く肩をぶん回している棟梁に答える前に、確認しなければならないことがある。


「ササナ。ご先祖さんの家は、壊しても大丈夫か?」

「ええ。大丈夫よ」

「んじゃ、あそこに同じぐらいの一軒家をお願いします」

「いやいや、土地も木材もふんだんにあるんですから、もっとドカンといきやしょう」


 その気持ちはわかる。

 ある意味これは公共事業のようなモノであり、潤沢な予算と培った経験と技術をフル活用できる現場なのだ。

 しかし、実際は俺が後払いするわけだから……そんなことは許容できない。

 というより、俺とパルマとライナが住むだけの家を、豪邸にする必要がない。

 維持管理を適切に行うためにも、今の広さは最適だ。


「わ……っかりやした」


 それらを説明し了承は得たが、棟梁のテンションは爆下がりだ。


「アレと同じもんか……はあ、一応訊きやすけど、中の物はどうします?」

「使える物は新居でも使いたいな」

「わかりやした。ならあの家は壊さないで、隣りに同じような家を作るのはどうでやすか? そうすれば、家具の保管場所もいりやせんし」

「ナイスアイデアだ、棟梁。それでいきましょう」

「へい。んじゃ、作業に入らせてもらいます」


 棟梁のテンションはガタ落ちだが、職人さんたちの動きは機敏だった。

 すでに採寸と整地に取り掛かっている。


「アンナはこれからどうするの?」

「本当は錬金をしたいけど、作業場がないんだよ」

「テントの中は?」

「錬金釜を据えるのは簡単だけど、動かすのが大変だろ」


 家が完成するタイミングで釜を空っぽにしなけれダメだし、動かすのも重労働だ。

 正直、何度もやりたい作業ではない。


「小型の錬金釜はないの?」

「世の中にはあるだろうけど、俺は持ってない」

「ご先祖様は?」

「……あるかもな」

「探してきてあげましょうか?」

「頼む!」

「オッケー。少し待っててちょうだい」


 ササナが飛んでいった。

 あれなら床を踏み抜く心配はないし、安心して任せられる。


 ……


「ただいま」


 再度ライナを撫でている間に、ササナが戻ってきた。

 その手には、小さな錬金釜が乗せられていた。


「マジであったんだな」

「これが一番小さなモノで、もう少し大きなモノもあったわよ。けど、見た目以上に重くて、これしか運び出せなかったわ」

「充分だ。ありがとう」

「で? なにを作るの?」

「まずは強化塗料だな」


 襲われることはないだろうが、錬金を失敗して爆発することはある。

 そうなったときに倒壊を免れるためにも、最優先で作りたい。


「いいわね。魔族(あたし)たちの分もお願いできるかしら? もし材料が足りないなら、持ってくるわよ」

「手持ちの分で十分な量ができると思うけど……ダメだったら頼む。それと、テント内で火を使っても大丈夫か?」

「問題ないわ」

「よし。んじゃ、さっそく作業に入るか」

「オッケー。頑張ってね」

「わぉん」


 寂しそうになくライナに後ろ髪をひかれながら、おれはテントに戻った。


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