69 テント内の部屋作り
「んじゃ、当面はテントで暮らすにしても、家は必要だな」
「そうですね。いつまでも、ササナ様に甘えているわけにはいきません」
「それなんだけど、建築士の当てはあるの?」
「ない」
「じゃあ、紹介してあげるわ」
「ありがたいけど、そこまでしてもらっていいのか?」
「魔檻の森での作業は魔族たちのほうが慣れてる、っていうのが建前で、本音は大勢の人間が入ってくるのを避けたいのよ」
納得だ。
変な軋轢を生まないためにも、ここは提案に乗ろう。
けど、確認はするべきだ。
「いくらかかる?」
現金がないわけではないが、有り余るほどはない。
これからの生活を考えると、節約は必須だ。
「タダ……とは言ってあげられないけど、現金での支払いはなしでいいわ。その代わり、アンナから買い取る錬金物を値引きしてちょうだい」
「ありがたい。ぜひそれで頼む」
「じゃあ、すぐに手配するわね。ああ、それと言い忘れたけど、テントの中で壁を立てるようなイメージで魔力を展開すれば、部屋ができるわよ。ありえないとは思うけど、寝ている間に遠くに行ったら、戻ってこれない可能性もあるから気をつけてね」
ササナが消えた。
さて、どうしたものか。
本来なら錬金一択だが、炉がないところに据えることはできないし、作業にも適さない。
雨や葉っぱが混ざることで、失敗する可能性が高まってしまうからだ。
「魔法の練習でもするか」
「でしたらご主人様。ササナ様が仰っていたテント内に部屋を作ってみませんか?」
「それはいいな」
「わんわん」
子ナイトウルフは反対のようだ。
これもわかる。
俺たちが中に入ってしまえば、ひとりぼっちになってしまう。
遊んでやりたい気持ちはあるが、スキルアップも必要だ。
(う~ん)
悩んでいると、森から数匹のナイトウルフが現れた。
「バウ」
「わんわん」
「バウバウ」
「わん」
数言のやり取りだったが、話はまとまったらしい。
ボス的なオスがテントに入ることを奨めている。
子ナイトウルフもあきらめたのか、ふて寝しだした。
「すまない」
「バウ」
ボスに見送られ、俺たちはテントに入った。
「まずはわたしがやってみます」
パルマが床に手をかざすと、縦、横、高さが五センチぐらいのブロックが生み出された。
「うん。硬いな」
軽く叩いた感触は、レンガと同じくらい。
強度も問題なさそうだ。
問題があるとすれば、これを作るのにパルマがどれほどの魔力を消費したか、である。
「微々たるモノですね。この程度なら、城を建設することも可能だと思います」
「じゃあ、撤去はどうなんだ?」
「やってみます」
簡単に消えた。
「どうだった?」
「作ったときと同様に、なんの問題もありません。ただ、消えた魔力は回収できるわけではないようなので、調整は必要かと」
「なるほど。なら城を作ってもいいわけだ。けど、持続性の問題があるよな」
「そうですね。作ったモノが半永久的に残り続けるのなら、今の状態にはなっていないでしょう」
城を作って二階に住んだ結果、床が消失して死亡、では笑い話にもならない。
「ここはひとます、簡単な壁を作って部屋みたいにすればいいな」
「わかりました。えい」
壁の完成だ。
けど、問題もある。
三方を囲んだだけで、一辺がガラ空きだ。
パルマがジッと俺を見ているので、忘れたわけではない。
仕上げを任されたのだ。
「どれ」
魔術の訓練を思い出し、集中した。
手のひらから床に魔力が流れていき、三〇センチぐらいの壁が完成した。
初めてにしては上出来だ。
けど、これが精一杯でもあった。




