65 はしゃぎすぎ注意
ササナの懸念はそれだけじゃない、とはどういうことだろう。
「なんか思い当たることがあるのか? パルマ」
「いえ、特に深い意味とか確証があるわけではありませんが、このテントから感じられる魔法が不安定……というか、儚い感じがするんです」
「凄いじゃない。パルマ。正解よ。どこでわかったの?」
「あの……その……なんというか」
普段冷静なササナにグイグイこられると怖いのか、パルマは及び腰だ。
「何? あたしには教えられないの?」
「そんなことはありませんが、なんというか、言語化するのが難しくて」
「じゃあ、感覚的でいいから教えてちょうだい」
「わかりました。このテントを全体的に見ると、とてもしっかりしている印象を受けるのですが、スポット的に見ると穴があるような気がするんです」
「どの辺、とかはわかる?」
「どこ、と言い切れないから、難しいのかもしれません。ありえないと思いますが、まばたきをするたびに、場所が移っているような気すらします」
「本当に素晴らしいわね。初見でそこまで看破できるのね」
目を丸くする様子から、ササナが本当に感心しているのがわかる。
「ということは、合っているのですか?」
「そうね。ほぼ正解、と言っていいんじゃないかしら」
「本当ですか!?」
「ええ、本当よ」
「やった!」
難題を解いた子供のように、パルマが跳びはねている。
全身から魔法好きが溢れ出ていて、楽しそうだ。
「けど、看破はしてないわよ」
「わかっています」
ササナに釘を刺され落ち着いたようにも思えるが、パルマの笑みは深いままだ。
気持ちはわかる。
自分のレベルを上げるチャンスに遭遇したら、俺もそうなるだろう。
だからこそ、ここはそっとしておこう。
……
理解できず逃げるわけじゃない……ただ、俺にはまだ早いのを自覚しているだけだ。
「わんわん」
「よし。ちょっとあっちにいくか」
「わん」
子ナイトウルフを連れ、二人から離れた。
「んん!?」
家の壁に開いた穴から、見覚えのあるモノが視界に映る。
間違いない。
錬金釜だ。
「使えるかな?」
穴から覗いた感じは大丈夫そうだが、きちんと確認する必要がある。
「よし。いくか」
「わん」
ギィ……ミシミシ
嫌な音だ。
「お前はここに残ってくれ。もし俺になにかあったときは、救助を頼む!」
「わん!」
荷重を軽くすべく、一人で家に入る。
バキッ
数歩目で、床板が破損した。
穴が開かなかったのは、不幸中の幸いである。
ここからは、さらに慎重に進もう。
ミシミシ……バキッ……ミシ……ギィギィ
不安を掻き立てる音を奏でながら、俺は目的のモノがある部屋にたどり着いた。
「おお!」
立派な錬金釜だ。
多少汚れているがどこも破損していない。
まだまだ現役でイケるだろう。
(ぐふふ。なに作ろうかな?)
あれもこれもやってみたい。
高鳴る胸に呼応し、はしゃいでしまった。
バキバキバキ
床板が割れ、俺と錬金釜は落下した。




