100 あげたいのに拒まれる
ササナとレアハムに見送られ、俺たちはイスペン村を旅立った。
馬車は二頭立てで、御者はムシアラ。
護衛の仕事もあるから代わりを用意したほうがいいんじゃないかと訊いたが、視界を広く保てるこのポジションがいいらしい。
ということもあり、キャビンには俺とパルマとライナだけだ。
速度重視ということもあり、水と食料も必要最低限しか積んでいない。
グイグイ進むのはいいが、その分時間は限られてしまう。
「んじゃ、さっそく説明するぞ。まずはコレだ」
言っといてなんだが、取り出した壺に説明は不要だ。
壺自体は流通品だし、中に入っている強化塗料もおなじみのモノである。
「いるよな?」
「……はい」
一瞬のためらいが謎だが、もらってくれた。
「何個いる?」
「一つで充分です」
マジックリュックには一〇以上入っているのだが、固辞された。
しかたがないので、俺はそれを持ち帰り用のマジックバックに詰め込んだ。
「次はコレだ。何個いる?」
ゴーレムを強化する玉。
これも説明は不要だ。
「一つ……いえ、三ついただきます」
「数十個あるんだから、遠慮しなくていいぞ」
「では……五つください」
奥ゆかしい性格だ。
空き瓶におまけの五個追加し、計一〇個渡した。
「ご主人様!?」
「大丈夫だ。なにも言うな」
「わん」
「…………わかりました。ありがとうございます」
呑み込むのにさっきより時間を要したが、パルマは受け取ってくれた。
よかった。
「これは必要ないかもしれないけど、いいモノだぞ」
大工道具一式が入った工具袋は容量の小さいマジックバックになっているので、重さを感じない優れモノだ。
「これはお返しします」
「パルマが大工仕事をすることはないだろうけど、あって邪魔になるモノでもないだろ。性能は魔族の職人さんたちのお墨付きだから、重宝するの間違いなしだぞ」
「駄目です。これは本当に駄目です」
断固とした拒否で、絶対にいらない、という強い意志が感じ取れる。
無理強いはよくないので、ここは俺が引こう。
「んじゃ、次はコレだ。回復ポーション一〇個セット。緑色のこれが体力を回復する一般的なモノで、色が濃くなるほど効果も高い。それぞれ二本ずつあるから、相手を見てどれを使うか判断してくれ。後の二つは、ちょっと変わり種だな。この毒々しい色をしたのが解毒に特化したモノで、黄色が麻痺を消す作用がある」
「アンディとの戦闘中に、ムシアラ様に使用したのはどれですか?」
「一番効果の高いヤツだ」
「では、この毒と麻痺に効果があるモノに、回復効果はあるのでしょうか?」
「あるけど微々たるモノだから、ないも同然だな」
「わかりました。では、これらはお返しします」
パルマが受け取ったのは、一番効果の薄い回復ポーション二本と、解毒と麻痺除去を一本ずつだけ。
この遠慮はよろしくない。
「いやいや、どうせ持っていくなら、一番効果の高いモノにしろ。あんまりおすすめはしないけど、水で薄めれば効果の低いやつとしても使えるぞ」
「どの程度薄めても大丈夫なのですか?」
「なんとも言えない。だから、おすすめできないんだ」
「では、安全に使用する意図も含め、こちらで充分です」
「じゃあ、解毒と麻痺除去は二本持っていけ。さっきも言ったけど、これにも微々たる回復効果があるからな。ちなみに、毒や麻痺にかかってない人に飲ませても問題ないぞ」
「…………ありがとうございます」
渋々ではあるが、もらってくれるようだ。
このまま効果の高い四本も……と思ったが、断固拒否された。
「次は……ととっ」
馬車が急停止した。
なにかあったのだろうか。
閑話を除き、百話到達です。
その記念に書かせてもらいます。
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