101 国境警備隊に協力した
「我々は国境警備団だ。足を停めさせて申し訳ないが、少しだけ捜査に協力していただきたい」
「協力するのはやぶさかでないが、国境警備団がなぜこんな場所にいるのか、説明していただこう」
「詳しいことは申せないが、とある事件の被疑者を追っている」
「では、あなた方の身分を示すモノを提示していただきたい」
周囲がザワッとした。
雰囲気からして、相手は大人数なのだろう。
大丈夫だろうか?
大事にならなければいいのだが……
などと心配したが、問題なさそうだ。
「私はドワルムント国境警備騎士団副団長、ナス・コル。これが身分証だ」
トップが応じたことで、部下も落ち着いた気がする。
「感謝する。では、そちらの方は?」
「僕はイッタリーネ国境警備隊で隊長を務める、ピチ・コムです。あいにく身分証は持ち合わせておりませんが、この鎧と階級を示すバッチがそれの代わりになるでしょう」
…………
「なるほど。確かにその鎧と階級バッチには、見覚えがあります」
「信じていただけましたか?」
「もちろんです。疑うようなマネをして申し訳ありません。ですが、護衛を引き受けている身としては、石橋を叩いて渡る必要があることも、ご容赦ください」
「ということは、あなたは冒険者なのですか?」
「ドワルムント王国領イスペン村にて、ギルドマスターを務めているムシアラ・バイルと申します」
「失礼ですが、ギルドマスター自らが護衛任務にあたられているのですか?」
「お恥ずかしい話ですが、辺境の村で人手不足なのです」
……
「間違いない」
見えないから断言はできないが、ピチ・コムの確認を、ナス・コルが肯定したのだろう。
「では、お互いに身元の確認も済んだことですし、本題に戻らせていただいてもよろしいですか?」
「もちろんです。こちらが応じられることであるなら、惜しみなく協力させていただきます。で、我々はなにをすればよいのでしょう?」
きちんと線引きしたうえで、ムシアラは応じるようだ。
この辺はさすがとしか言いようがない。
(やっぱ経験と実績は違うな)
世間知らずな俺だったら言質を取られ、こき使われていた可能性もある。
「キャビンの中を見せていただきたい」
「それならお安い御用です」
俺でも大丈夫な頼みであり、ムシアラも快く応じた。
出入り口が開放される。
「おっ!?」
「驚かせて申し訳ございません」
「いえいえ、お気になさらずに」
俺が驚いたのは、ナス・コルとピチ・コムが引き連れている部下が多かったからだ。
三〇人以上は確実だ。
この規模で追う被疑者がいると思うと、背筋が寒くなる。
「少し中を見せていただきますが、すぐに終わりますので、ご安心ください」
角刈りで筋肉ムキムキの長身男性と、サラサラの髪と細身で小柄な男性が中をつぶさに観察している。
俺の勝手な想像だが、前者がナス・コルで、後者がピチ・コムだと思う。
「男女と犬が一匹……箱が数個あるが、成人男性が隠れるのは無理だな」
「床下もないようですし、問題ないですね」
一分もしないで終わった。
『捜査協力、誠に感謝します』
最後に深く頭を下げ、騎士団は去っていった。




