99 出発
「連れていく」
「駄目だ」
「じゃあ、パルマにマジックリュックを渡す」
「それも駄目だ」
俺の提案を、ムシアラがことごとく却下する。
むむむ、と思わないでもないが、理由がわかっているだけにしかたがない……とも思う。
現状、ライナを説得して留守番させることだが最適解なのだが、それはしたくない。
パルマと旅をする最後の機会になるのだから、ライナを仲間外れにしてはダメだ。
もう少しだけ、どこかにある妥協点を探ろう。
「イッタリーネの国境まで、どれぐらいかかる?」
「急げば三、四日ですが、普通は一週間程度かかるかと思います」
「なら、その間はドワルムント領だよな?」
「その通りです」
「よし。んじゃ、そこまで俺とライナも行く」
「だから、それは駄目だ、って言ってるだろ」
「いや、ダメなのはイッタリーネへの入国だろ? ドワルムント領内なら言い訳ができる、って言ってたじゃねえか」
「わんわん」
言質は取ったとばかりに、ライナも吠えている。
「どうしても連れて行くんだな?」
「もちろん!」
「わん!」
ムシアラに厳しい視線をむけられようとも、俺たちの決意は変わらない。
…………
「わかった。なら、おれも行く」
「んん!? ムシアラが同行して大丈夫なのか? ギルドの仕事があるだろ」
「それはレアハムに代行してもらう」
「お任せください」
こちらは驚くほどスムーズだ。
うらやましい。
「ついでに馬車もギルド所有のモノにするぞ」
「いや、ギルドマスターが私用でそんなことしていいのか?」
……
口ごもるということは、ダメなのだろう。
「あたしが依頼を出せば問題ないでしょ。アンナ、パルマ、ライナを無事イッタリーネの国境に送り届けること、と、アンナとライナを無事帰宅させること、が依頼内容よ」
ササナの助け舟に、ムシアラが顔を輝かせた。
俺のときと違い、全員が協力的だ。
……
文句はない。
そう、文句はない……けど、少しだけモヤッとする。
「わわん」
ライナも同じ気持ちなのか、まなじりを垂れ下げている。
ただ、これは朗報だ。
結果的に俺たちの要求が通ったのだから、それを喜ぼう。
「よし。んじゃ、時間もないことだし、出発するか」
「はい。ご主人様」
「わん!」
……
返事をしないということは、ササナは不参加なのだろう。
「やっぱり無理なんだな」
「そうね。仕事をほっぽり出して旅には行けないし、立場的にもよくないわ」
魔族というだけで忌み嫌われることもあるし、ありもしない陰謀論を唱えられるのも体裁が悪い。
……
ライナを連れていっていいのだろうか?
散々ゴネはしたが、それが政治的問題になるなら、考え直す必要がある。
「大丈夫よ。ライナは野良の魔獣みたいなものだから、大事にはならないわ」
「心が読めるのか?」
「表情に出てただけよ」
「そんなにわかりやすいか?」
顔をさすってみたが、もちろんわかることはない。
「ふふふ。あたしのことはいいから、旅を楽しんできなさい」
「ありがとう。んじゃ、行ってくる」
「ええ。いってらっしゃい」




